[P-KS-29-1] 運動観察時の身体位置が運動学習に与える影響について
キーワード:運動観察, 運動学習, ミラーニューロンシステム
【はじめに,目的】運動学習を促す介入は近年のニューロリハビリテーションにおける重要な視点であり,様々な介入方法が検討されている。その中で,ミラーニューロンシステムの発見以降,運動観察や模倣運動による介入が脳血管障害後片麻痺患者に応用されているが,同時に運動観察の効果をより高めるために観察方法にも配慮する必要があると考えられる。
近年の研究で身体近辺には特異的な注意が向けられていることが報告されており,同じ動画を観察する場合においても,身体近辺での運動観察では注意が向けられ観察後のパフォーマンスを改善されることが考えられる。そこで本研究は,その仮説に対して,タッピング課題を用いて検討を行うことを目的として実施した。
【方法】対象は専門学校に在籍する右利き(エディンバラ利き手検査で75%以上)のもの21名(年齢21.3±5.0才)とし,ランダムに3群(身体近位観察群:NB群・身体遠位観察群:FB群・対照群)に分け,研究を行った。実験課題はQWERTYキー上の“VBNM”を左手でMからV,VからMという流れでタップしていくタッピングシーケンス課題を採用した。対象者に対して「可能な限り早く,且つ間違えないようにボタンを押すように」と教示した。課題の提示及び測定はPsychoPyを用い,測定指標は一施行ごとの反応時間とし,ボタン押しを誤った場合・反応時間が0.05秒以下か1.5秒以上だった場合には測定指標に含めなかった。
実験パラダイムは,被験者に対して左手でランダムにボタン押しを要求される課題(練習相)を24施行,その後介入を行い介入後に実験課題を120施行実施(測定相)するものとした。
全ての群に対してフィクゼーション5秒・動画30秒を5回,合計175秒間視聴させた。動画の内容は,NB群とFB群にはモデルが左手で30秒間,2Hzの速度で課題を実施している動画を,対照群にはモザイク動画とした。また運動観察時の手の位置について,NB群に対しては動画が自身の左手に感じる場所,FB群および対照群に対しては左手を15cm以上動画から離した場所とした。
統計解析は1元配置分散分析を使用し,多重比較検定としてBonferroni法を採用した。有意水準は5%とした。
【結果】練習相においては,有意差は認めらなかった(F(2,18)=0.34,p>0.05)。そのため,課題の難易度は全群同程度であり,測定相の数値が介入による影響を示すと考えた。測定相においては,NB群:0.37±0.13秒,FB群:0.40±0.19秒,対照群0.39±0.11秒で有意差が認められた(F(2,18)=6.62,p<0.05)ため,多重比較検定を行ったところ,NB群はFB群・対照群と比べて有意に反応時間が速かった。
【結論】運動観察時の身体位置が運動学習を促通し,パフォーマンスを高めることが示唆された。そのため運動観察を介入に用いる場合には,可能な限り動画が提示される場所と実際の身体との距離を近くすることで運動学習の効果が高まると考えられる。
近年の研究で身体近辺には特異的な注意が向けられていることが報告されており,同じ動画を観察する場合においても,身体近辺での運動観察では注意が向けられ観察後のパフォーマンスを改善されることが考えられる。そこで本研究は,その仮説に対して,タッピング課題を用いて検討を行うことを目的として実施した。
【方法】対象は専門学校に在籍する右利き(エディンバラ利き手検査で75%以上)のもの21名(年齢21.3±5.0才)とし,ランダムに3群(身体近位観察群:NB群・身体遠位観察群:FB群・対照群)に分け,研究を行った。実験課題はQWERTYキー上の“VBNM”を左手でMからV,VからMという流れでタップしていくタッピングシーケンス課題を採用した。対象者に対して「可能な限り早く,且つ間違えないようにボタンを押すように」と教示した。課題の提示及び測定はPsychoPyを用い,測定指標は一施行ごとの反応時間とし,ボタン押しを誤った場合・反応時間が0.05秒以下か1.5秒以上だった場合には測定指標に含めなかった。
実験パラダイムは,被験者に対して左手でランダムにボタン押しを要求される課題(練習相)を24施行,その後介入を行い介入後に実験課題を120施行実施(測定相)するものとした。
全ての群に対してフィクゼーション5秒・動画30秒を5回,合計175秒間視聴させた。動画の内容は,NB群とFB群にはモデルが左手で30秒間,2Hzの速度で課題を実施している動画を,対照群にはモザイク動画とした。また運動観察時の手の位置について,NB群に対しては動画が自身の左手に感じる場所,FB群および対照群に対しては左手を15cm以上動画から離した場所とした。
統計解析は1元配置分散分析を使用し,多重比較検定としてBonferroni法を採用した。有意水準は5%とした。
【結果】練習相においては,有意差は認めらなかった(F(2,18)=0.34,p>0.05)。そのため,課題の難易度は全群同程度であり,測定相の数値が介入による影響を示すと考えた。測定相においては,NB群:0.37±0.13秒,FB群:0.40±0.19秒,対照群0.39±0.11秒で有意差が認められた(F(2,18)=6.62,p<0.05)ため,多重比較検定を行ったところ,NB群はFB群・対照群と比べて有意に反応時間が速かった。
【結論】運動観察時の身体位置が運動学習を促通し,パフォーマンスを高めることが示唆された。そのため運動観察を介入に用いる場合には,可能な限り動画が提示される場所と実際の身体との距離を近くすることで運動学習の効果が高まると考えられる。