[P-KS-29-2] 加齢が下肢の視覚誘導性関節運動調節に及ぼす影響
キーワード:加齢, 視覚誘導性関節運動, 関節位置覚
【はじめに,目的】
加齢により様々な運動・感覚機能が低下する。こうした運動・感覚機能の低下と転倒との関係性については多くの報告がなされている。しかし,転倒は個々の一つの要素だけではなく,視覚情報などの感覚機能と運動との異種感覚統合の不一致による影響も考えられる。しかし,加齢による視覚情報を基に運動を調節する能力についての報告は少ない。そこで,加齢が下肢の視覚誘導性関節運動調節に及ぼす影響を探ることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は,地域在住でADLに支障のない65歳以上の高齢女性28名(73.6±6.3歳)と健常成人女性28名(21.5±0.8歳)を対象とした。
計測課題は,静的な関節位置覚(再現性検査)と動的な視覚誘導性関節運動とした。関節位置覚の測定肢位は,椅坐位にて閉眼で行った。利き足を膝関節90度屈曲位保持から他動的にから45度を2秒間保持し,開始肢位に戻した後自動的にて再現させた。計測は,ケーブルの長さの変化により関節位置を検知する装置であるHUMAC360(CSMi社製)を使用し,他動と自動運動時とのケーブルの長さの誤差(cm)を算出した。2回分の誤差の平均値を代表値とした。
視覚誘導性関節運動は,HUMAC360(サンプリング周波数100Hz)を用いて,リアルタイムにPC画面上に実際の関節位置情報と目標基線を呈示し,その視標を追従させる課題とした。運動範囲は,椅坐位膝関節90度屈曲位から45度を目的伸展角度にし,3秒で屈曲位から伸展を行う求心性収縮相(Concentric contraction:CON)から,2秒保持後,3秒で伸展位から屈曲を行う遠心性収縮相(Eccentric contraction:ECC)を2回繰り返させた。
データ解析は,HUMAC360から抽出された目標基線と実際の関節位置情報の絶対誤差平均を求めた。統計学的解析は,若年者と高齢者の関節位置覚再現性の誤差を対応のないt検定にて検討した。また,視覚誘導性関節運動調節の目標値との誤差は,若年者と高齢者の要因とCONとECCの要因とした二元配置分散分析と多重比較にて検討した。
【結果】
関節位置覚再現性の誤差は,高齢者2.5±2.1cm,若年者2.5±1.8cmであり,有意差を認めなかった。
視覚誘導性関節運動の結果は,高齢者CON3.1±3.3cm,ECC3.6±3.0cm,若年者CON1.4±1.3cm,ECC1.2±1.0cmであり,CONとECC間で有意差は認められないが,高齢者において有意に高値を示した(p<0.001)。
【考察】
同種感覚統合である関節位置覚再現性においては,高齢者も若年者と同程度の誤差であったが,異種感覚統合である視覚誘導性関節運動においては高齢者が有意に絶対誤差平均が大きく,高齢者は視覚情報をもとに関節運動を制御するが困難になることが示唆された。
こうした視覚誘導性関節運動調節の低下は,視覚から得られた環境情報への適応性に影響を及ぼす可能性があり,各種の身体機能だけでなく,異種情報の統合的トレーニングも必要であると思われる。
加齢により様々な運動・感覚機能が低下する。こうした運動・感覚機能の低下と転倒との関係性については多くの報告がなされている。しかし,転倒は個々の一つの要素だけではなく,視覚情報などの感覚機能と運動との異種感覚統合の不一致による影響も考えられる。しかし,加齢による視覚情報を基に運動を調節する能力についての報告は少ない。そこで,加齢が下肢の視覚誘導性関節運動調節に及ぼす影響を探ることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は,地域在住でADLに支障のない65歳以上の高齢女性28名(73.6±6.3歳)と健常成人女性28名(21.5±0.8歳)を対象とした。
計測課題は,静的な関節位置覚(再現性検査)と動的な視覚誘導性関節運動とした。関節位置覚の測定肢位は,椅坐位にて閉眼で行った。利き足を膝関節90度屈曲位保持から他動的にから45度を2秒間保持し,開始肢位に戻した後自動的にて再現させた。計測は,ケーブルの長さの変化により関節位置を検知する装置であるHUMAC360(CSMi社製)を使用し,他動と自動運動時とのケーブルの長さの誤差(cm)を算出した。2回分の誤差の平均値を代表値とした。
視覚誘導性関節運動は,HUMAC360(サンプリング周波数100Hz)を用いて,リアルタイムにPC画面上に実際の関節位置情報と目標基線を呈示し,その視標を追従させる課題とした。運動範囲は,椅坐位膝関節90度屈曲位から45度を目的伸展角度にし,3秒で屈曲位から伸展を行う求心性収縮相(Concentric contraction:CON)から,2秒保持後,3秒で伸展位から屈曲を行う遠心性収縮相(Eccentric contraction:ECC)を2回繰り返させた。
データ解析は,HUMAC360から抽出された目標基線と実際の関節位置情報の絶対誤差平均を求めた。統計学的解析は,若年者と高齢者の関節位置覚再現性の誤差を対応のないt検定にて検討した。また,視覚誘導性関節運動調節の目標値との誤差は,若年者と高齢者の要因とCONとECCの要因とした二元配置分散分析と多重比較にて検討した。
【結果】
関節位置覚再現性の誤差は,高齢者2.5±2.1cm,若年者2.5±1.8cmであり,有意差を認めなかった。
視覚誘導性関節運動の結果は,高齢者CON3.1±3.3cm,ECC3.6±3.0cm,若年者CON1.4±1.3cm,ECC1.2±1.0cmであり,CONとECC間で有意差は認められないが,高齢者において有意に高値を示した(p<0.001)。
【考察】
同種感覚統合である関節位置覚再現性においては,高齢者も若年者と同程度の誤差であったが,異種感覚統合である視覚誘導性関節運動においては高齢者が有意に絶対誤差平均が大きく,高齢者は視覚情報をもとに関節運動を制御するが困難になることが示唆された。
こうした視覚誘導性関節運動調節の低下は,視覚から得られた環境情報への適応性に影響を及ぼす可能性があり,各種の身体機能だけでなく,異種情報の統合的トレーニングも必要であると思われる。