[P-KS-29-4] 対人ライトタッチ効果における姿勢動揺の同調現象は二者間の関係性に影響を受ける
キーワード:ライトタッチ, 同調, 対人関係
【はじめに,目的】
静止立位において,指先を用いた軽い接触(1N未満)を初対面の二者で行うと立位姿勢動揺が減少し,互いの姿勢動揺に同調現象が認められる。これを対人ライトタッチ(Interpersonal light touch;IPLT)効果という(Johannsen L, 2009)。しかし,ヒトを対象とした同調現象では,接触由来の感覚情報のみならず,相手に対する心的価値も影響する可能性がある。そこで本研究では,知人や友人のような既に何らかの人間関係を有している二者を対象に,その対人間の関係性が,IPLT効果により得られる姿勢動揺の同調現象に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
面識のある健常同性成人からなる8ペア:16名(平均年齢21.2±3.7歳;平均関係期間21.3±18.7ヶ月)を対象とした。事前に相手との関係性を改訂版友人関係機能評価尺度(友人関係尺度)(丹野,2008)にて評価し,その後,姿勢動揺の二者同時測定を行った。測定は,二者を10cmの間隔にて側方に位置させた閉眼開脚安静立位を基準とし,接触を伴わない非接触(NT)条件と,示指を介し二者間で接触(1N未満)を行うIPLT条件を設定した。測定時間は30秒間とし,NT条件,IPLT条件の順で測定を行い,計3試行実施した。姿勢動揺は重心動揺計Twin-gravicorder G-6100(ANIMA社製)を用い,足圧中心(CoP)を記録(sampling rate:100Hz)した。解析値は前後(AP)軸・側方(ML)軸別の実効値速度(cm/s)と,CoP速度の時系列データの二者間相互相関係数(CoPv-croxx)を用いた(Johannsen, 2009)。IPLT条件のみ二者間の接触力を,ひずみセンサーELFシステム(NITTA社製)を用いて記録(sampling rate:100Hz)した。統計解析は,各姿勢動揺パラメータの条件間比較を対応のあるt検定を用い,CoPv-croxxと友人関係尺度の得点との相関分析はPearson積率相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
IPLT条件の接触力は1N未満であった。実効値速度は,AP軸,ML軸ともにIPLT条件はNT条件に比べ有意に低い値を示した(AP:p<.05,ML:p<.01)。CoPv-croxxは,AP軸のみでIPLT条件はNT条件に比べ有意に高い値を示し(p<.01),ML軸では有意な差は認めなかった(p>.10)。COPv-croxxと友人関係尺度の相関分析では,AP軸で有意な負の相関(r=-.78,p<.01),ML軸で有意な正の相関(r=.55,p<.05)を認めた。
【結論】
面識のある二者間においても,先行研究(Johannsen L, 2009)と類似する結果得た。また,IPLT効果による姿勢動揺の同調現象は,対人間の関係性に影響を受け,これは動揺方向により異なる作用を示すことが明らかとなった。理学療法場面では,対象者の身体に触れて運動療法を行うことが多く,対象者と協働することが求められる。本研究結果は,コミュニケーション場面だけでなく運動療法においても,対象者との関係性を良好に形成することの重要性を示唆しているものと考えられる。
静止立位において,指先を用いた軽い接触(1N未満)を初対面の二者で行うと立位姿勢動揺が減少し,互いの姿勢動揺に同調現象が認められる。これを対人ライトタッチ(Interpersonal light touch;IPLT)効果という(Johannsen L, 2009)。しかし,ヒトを対象とした同調現象では,接触由来の感覚情報のみならず,相手に対する心的価値も影響する可能性がある。そこで本研究では,知人や友人のような既に何らかの人間関係を有している二者を対象に,その対人間の関係性が,IPLT効果により得られる姿勢動揺の同調現象に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
面識のある健常同性成人からなる8ペア:16名(平均年齢21.2±3.7歳;平均関係期間21.3±18.7ヶ月)を対象とした。事前に相手との関係性を改訂版友人関係機能評価尺度(友人関係尺度)(丹野,2008)にて評価し,その後,姿勢動揺の二者同時測定を行った。測定は,二者を10cmの間隔にて側方に位置させた閉眼開脚安静立位を基準とし,接触を伴わない非接触(NT)条件と,示指を介し二者間で接触(1N未満)を行うIPLT条件を設定した。測定時間は30秒間とし,NT条件,IPLT条件の順で測定を行い,計3試行実施した。姿勢動揺は重心動揺計Twin-gravicorder G-6100(ANIMA社製)を用い,足圧中心(CoP)を記録(sampling rate:100Hz)した。解析値は前後(AP)軸・側方(ML)軸別の実効値速度(cm/s)と,CoP速度の時系列データの二者間相互相関係数(CoPv-croxx)を用いた(Johannsen, 2009)。IPLT条件のみ二者間の接触力を,ひずみセンサーELFシステム(NITTA社製)を用いて記録(sampling rate:100Hz)した。統計解析は,各姿勢動揺パラメータの条件間比較を対応のあるt検定を用い,CoPv-croxxと友人関係尺度の得点との相関分析はPearson積率相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
IPLT条件の接触力は1N未満であった。実効値速度は,AP軸,ML軸ともにIPLT条件はNT条件に比べ有意に低い値を示した(AP:p<.05,ML:p<.01)。CoPv-croxxは,AP軸のみでIPLT条件はNT条件に比べ有意に高い値を示し(p<.01),ML軸では有意な差は認めなかった(p>.10)。COPv-croxxと友人関係尺度の相関分析では,AP軸で有意な負の相関(r=-.78,p<.01),ML軸で有意な正の相関(r=.55,p<.05)を認めた。
【結論】
面識のある二者間においても,先行研究(Johannsen L, 2009)と類似する結果得た。また,IPLT効果による姿勢動揺の同調現象は,対人間の関係性に影響を受け,これは動揺方向により異なる作用を示すことが明らかとなった。理学療法場面では,対象者の身体に触れて運動療法を行うことが多く,対象者と協働することが求められる。本研究結果は,コミュニケーション場面だけでなく運動療法においても,対象者との関係性を良好に形成することの重要性を示唆しているものと考えられる。