第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P30

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-30-1] 自己決定感の向上が運動学習および保持効果に与える影響

性別による影響の検討

冷水誠1,2, 岡田洋平1,2, 前岡浩1,2 (1.畿央大学健康科学部理学療法学科, 2.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

Keywords:自己決定感, 動機づけ, 運動学習

【はじめに,目的】

効果的な運動学習のための内発的動機づけは,学習段階における有能感および自己決定感の知覚によって高められると考えられている。このうち自己決定感についてはMurayamaら(2013)が,認知課題遂行時に課題提示デザインを選択させることで自己決定感を高め,良好な成績が得られたと報告している。そこで,本研究では運動学習課題において,用いる課題デザインを選択させることによる学習効果とその保持効果を性別の違いをふまえて検証することとした。

【方法】

対象は健常大学生80名とし,40名ずつ無作為に強制選択群(男15名,女25名)と自由選択群(男13名,女27名)に分類した。運動学習課題は非利き手でのボール回転課題とし,非利き手にて2個のボールを反時計回りに可能限り速く10回転させるよう指示された。

全対象者はまず1stテストを実施し,その後1分間の練習をはさみながら2ndテストおよび3rdテストを実施し,24時間後に保持テストを実施した。強制選択群では練習の際に,大きさおよび重さが同一の9種類のデザインボールから実験者が指定したボールにて練習した。自由選択群では9種類のデザインボールから好きなデザインを選択し練習した。

評価項目は課題の所要時間を計測し,3rdテスト終了後にどの程度楽しくできたか(楽しさ),上手くなりたいと感じたか(欲求),積極的に取り組めたか(積極性)をVisual Analogue Scale(VAS)にてアンケート聴取した。統計学的分析は,所要時間について反復測定二元配置分散分析および多重比較としてTukey's testにて検定した。アンケート結果は各群の違いを対応のないt検定にて分析した。次に,男女による学習効果の違いを検討するため,男女別に同様の分析を実施した。なお,有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】

所要時間は学習段階における主効果(p<0.01)を認め,群(p=0.60)および交互作用(p=0.47)は認められなかった。しかしながら,強制選択群では1stテストと比較して2nd,3rdテストおよび保持テストにて有意な短縮が認められたのに対し,自由選択群では2ndテストと比較して3rdテストにも有意な短縮が認められた。アンケート結果では有意差が認められなかったものの,楽しさおよび欲求にて自由選択群が高値を示した。また,女性において自由選択群の所要時間が各テストにて有意な短縮がみられたのに対し,男性では群における違いはみられなかった。また,女性では自由選択群にて楽しさが有意に高かった。

【結論】

本実験の結果から,運動学習における自由選択による自己決定感の向上は,強制的な状況と比較して学習を促進させることが示唆された。しかしながら,課題への楽しさと学習効果が女性において顕著に認められたのに対し,男性では楽しさおよび学習効果の違いが認められなかった。従って,運動学習における自由選択による自己決定感の向上効果は性別によって異なる可能性が考えられる。