[P-KS-31-4] リサージュ波形を用いた歩行評価のフィードバック手段としての可能性
キーワード:リサージュ波形, 片麻痺, 加速度計
【はじめに・目的】
3軸加速度計を用いた歩行評価は,床反力や立位での重心動揺などとの相関が報告されており,臨床場面での評価ツールとして有用性が示されている。XY平面上にプロットして得られるリサージュ波形は,歩行中の加速度の偏倚量を視覚的に捉えることができ,患者へのフィードバック手段として,臨床応用が期待できる。しかし,リサージュ波形を用いた先行研究は少なく,歩行の特徴を定量化できるかは明らかになっていない。そこで,本研究は,健常高齢者と片麻痺者における,歩行中の加速度指標を比較し,Lissajous Index(LI)の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常高齢者21名(男性8名,女性13名,平均年齢63±4歳),片麻痺者30名(Br. Stage IV15名,V15名,右片麻痺11名,左片麻痺19名,男性23名,女性7名,平均年齢64±14歳)であった。3軸加速度センサの感度方向は,立位姿勢においてそれぞれ後方向,右方向,上方向を正とした。対象者の腰椎L3レベルに3軸加速度センサを装着し,室内16mの直進路を快適速度で歩行した。中央10m解析区間から定常状態である中央の5歩行周期を抽出し,加速度のRoot Mean Square(RMS),Root Mean Square ratio(RMSR),Autocorrelation(AC)の定常性および対称性を算出した。LIは,5歩行周期を加算平均し,前額面におけるLI(第1,第2象限)の左右偏倚量と,矢状面におけるLI(第2,第3象限)の上下偏倚量を算出した。健常高齢者と片麻痺者の各指標を,対応のないt検定を用い比較した。すべての統計解析は,統計ソフトR-2.8.1を用い,統計学的な有意水準は5%とした。
【結果】
健常高齢者と片麻痺者の比較では,前後・上下・左右のRMSとAC(定常性,対称性),上下RMSR,矢状面LIにおいて,健常高齢者で有意に高値を示した(P<0.01)。前額面LI,前後・左右RMSRにおいては,片麻痺者で有意に高値を示した(P<0.01)。
【結論】
今回の結果から,前額面LIと矢状面LIを用いて歩行の特徴を定量化することができ,歩容のフィードバック手段として有用であることが示唆された。前額面LIでは,片麻痺者で左右偏倚量が大きくなり,左右のAC対称性や定常性,RMSRにも有意差を認めることから,左右の対称性を反映したと考えられる。矢状面LIにおいては,片麻痺者で有意に低値を示し,第2象限の比率が小さく,上下RMSRも小さいことから,歩行中の上方運動を反映する可能性が高いと思われる。今後は,臨床における歩行フィードバック手段の一つとして,有用性が期待できる。
3軸加速度計を用いた歩行評価は,床反力や立位での重心動揺などとの相関が報告されており,臨床場面での評価ツールとして有用性が示されている。XY平面上にプロットして得られるリサージュ波形は,歩行中の加速度の偏倚量を視覚的に捉えることができ,患者へのフィードバック手段として,臨床応用が期待できる。しかし,リサージュ波形を用いた先行研究は少なく,歩行の特徴を定量化できるかは明らかになっていない。そこで,本研究は,健常高齢者と片麻痺者における,歩行中の加速度指標を比較し,Lissajous Index(LI)の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常高齢者21名(男性8名,女性13名,平均年齢63±4歳),片麻痺者30名(Br. Stage IV15名,V15名,右片麻痺11名,左片麻痺19名,男性23名,女性7名,平均年齢64±14歳)であった。3軸加速度センサの感度方向は,立位姿勢においてそれぞれ後方向,右方向,上方向を正とした。対象者の腰椎L3レベルに3軸加速度センサを装着し,室内16mの直進路を快適速度で歩行した。中央10m解析区間から定常状態である中央の5歩行周期を抽出し,加速度のRoot Mean Square(RMS),Root Mean Square ratio(RMSR),Autocorrelation(AC)の定常性および対称性を算出した。LIは,5歩行周期を加算平均し,前額面におけるLI(第1,第2象限)の左右偏倚量と,矢状面におけるLI(第2,第3象限)の上下偏倚量を算出した。健常高齢者と片麻痺者の各指標を,対応のないt検定を用い比較した。すべての統計解析は,統計ソフトR-2.8.1を用い,統計学的な有意水準は5%とした。
【結果】
健常高齢者と片麻痺者の比較では,前後・上下・左右のRMSとAC(定常性,対称性),上下RMSR,矢状面LIにおいて,健常高齢者で有意に高値を示した(P<0.01)。前額面LI,前後・左右RMSRにおいては,片麻痺者で有意に高値を示した(P<0.01)。
【結論】
今回の結果から,前額面LIと矢状面LIを用いて歩行の特徴を定量化することができ,歩容のフィードバック手段として有用であることが示唆された。前額面LIでは,片麻痺者で左右偏倚量が大きくなり,左右のAC対称性や定常性,RMSRにも有意差を認めることから,左右の対称性を反映したと考えられる。矢状面LIにおいては,片麻痺者で有意に低値を示し,第2象限の比率が小さく,上下RMSRも小さいことから,歩行中の上方運動を反映する可能性が高いと思われる。今後は,臨床における歩行フィードバック手段の一つとして,有用性が期待できる。