[P-KS-32-5] 慢性疼痛を有する外来患者の身体活動量と運動機能の特徴
Keywords:慢性疼痛, 身体活動量, 運動機能
【はじめに,目的】
国民生活基礎調査によると,病気やけが等の自覚症状として主に疼痛を訴えることが示されている。また,当院に長期間通院している外来患者もその主症状として疼痛を訴えることが多く,このような疼痛は運動機能低下と関連性があることが報告されている。一方,基礎的研究領域においても身体活動量の低下が疼痛を増悪させることが報告されている。そのため,慢性疼痛に関しては単に器質的な問題としてのみ捉えるのではなく,身体活動量など他の因子を踏まえた上で検討していく必要がある。しかし,実際には運動機能の低下を認めないにも関わらず,疼痛を強く訴える患者にも遭遇し,その患者の有する疼痛を理解することに難渋する。そこで,慢性疼痛を有する患者に関わる因子を特定するため,今回我々は慢性疼痛を有する外来患者の身体活動量や運動機能の特徴を調査した。
【方法】
3ヶ月以上疼痛を有する男性12名,女性9名の計21名の外来患者(平均年齢70.3±12.1歳)を対象とした。同意が得られなかった者,各種評価が実施できない者や疼痛に影響を与える合併症がある者は除外した。国際標準化身体活動質問表(International Physical Activity Questionnaire:IPAQ)によって算出された身体活動量により,IPAQカテゴリー2の条件を満たした者を高活動群,満たしていない者を低活動群に振り分けた。運動機能の評価にはTimed Up and Go Test(TUG),最大歩行速度,5回立ち座り試験,握力を用い,疼痛強度の評価は数値的アナログスケール(Numerical Rating Scale:NRS)を用いた。統計学的検定について,最大歩行速度,握力,疼痛強度には対応のないt検定,その他項目にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
IPAQにより分類された身体活動量は高活動群が4492.7±3280.7 MET-分/週(11名),低活動群が408.5±494.1 MET-分/週(10名)であった。運動機能評価の結果ではTUG(高活動群8.9±2.9秒,低活動群7.8±1.5秒),最大歩行速度(高活動群81.4±19.8 m/s,低活動群92.8±17.0 m/s),5回立ち座り試験(高活動群12.7±5.6秒,低活動群13.9±6.1秒),握力(高活動群28.0±8.1 kg,低活動群27.3±11.2 kg)であり,両群の各運動機能に有意差は認めなかった。しかし,疼痛強度の評価では,高活動群のNRS 4.8±1.9に対して,低活動群のNRSは7.4±1.7と有意に高値を示した(p<0.01)。
【結論】
身体活動量の違いにより疼痛の訴える程度が異なり,運動機能が低下していなくとも身体活動量が低下している場合は,疼痛を強く訴えることが明らかとなった。しかし,この疼痛に関わる因子を明らかとすることができなかったため,今後は身体活動量と疼痛に関わる因子を多面的に評価していきたいと考えている。
国民生活基礎調査によると,病気やけが等の自覚症状として主に疼痛を訴えることが示されている。また,当院に長期間通院している外来患者もその主症状として疼痛を訴えることが多く,このような疼痛は運動機能低下と関連性があることが報告されている。一方,基礎的研究領域においても身体活動量の低下が疼痛を増悪させることが報告されている。そのため,慢性疼痛に関しては単に器質的な問題としてのみ捉えるのではなく,身体活動量など他の因子を踏まえた上で検討していく必要がある。しかし,実際には運動機能の低下を認めないにも関わらず,疼痛を強く訴える患者にも遭遇し,その患者の有する疼痛を理解することに難渋する。そこで,慢性疼痛を有する患者に関わる因子を特定するため,今回我々は慢性疼痛を有する外来患者の身体活動量や運動機能の特徴を調査した。
【方法】
3ヶ月以上疼痛を有する男性12名,女性9名の計21名の外来患者(平均年齢70.3±12.1歳)を対象とした。同意が得られなかった者,各種評価が実施できない者や疼痛に影響を与える合併症がある者は除外した。国際標準化身体活動質問表(International Physical Activity Questionnaire:IPAQ)によって算出された身体活動量により,IPAQカテゴリー2の条件を満たした者を高活動群,満たしていない者を低活動群に振り分けた。運動機能の評価にはTimed Up and Go Test(TUG),最大歩行速度,5回立ち座り試験,握力を用い,疼痛強度の評価は数値的アナログスケール(Numerical Rating Scale:NRS)を用いた。統計学的検定について,最大歩行速度,握力,疼痛強度には対応のないt検定,その他項目にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
IPAQにより分類された身体活動量は高活動群が4492.7±3280.7 MET-分/週(11名),低活動群が408.5±494.1 MET-分/週(10名)であった。運動機能評価の結果ではTUG(高活動群8.9±2.9秒,低活動群7.8±1.5秒),最大歩行速度(高活動群81.4±19.8 m/s,低活動群92.8±17.0 m/s),5回立ち座り試験(高活動群12.7±5.6秒,低活動群13.9±6.1秒),握力(高活動群28.0±8.1 kg,低活動群27.3±11.2 kg)であり,両群の各運動機能に有意差は認めなかった。しかし,疼痛強度の評価では,高活動群のNRS 4.8±1.9に対して,低活動群のNRSは7.4±1.7と有意に高値を示した(p<0.01)。
【結論】
身体活動量の違いにより疼痛の訴える程度が異なり,運動機能が低下していなくとも身体活動量が低下している場合は,疼痛を強く訴えることが明らかとなった。しかし,この疼痛に関わる因子を明らかとすることができなかったため,今後は身体活動量と疼痛に関わる因子を多面的に評価していきたいと考えている。