[P-KS-33-2] 温熱プレコンディショニングによる熱ショックタンパク質を介した腎虚血再灌流障害の改善
キーワード:腎虚血再還流障害, 熱ショックタンパク質, caspase3
【はじめに,目的】
腎臓等の手術において,虚血再灌流障害は,術後臓器不全の原因となる主要な臨床的問題である。我々は,深部体温を1~2℃上昇させるマイルドな全身温熱(LTS)がアポトーシス経路に作用して腎不全マウスの腎機能を保護することを報告してきた。今回の研究目的は,LTSをプレコンディショニングとして使用したとき,腎虚血再灌流障害(IRI)マウスの腎障害の抑制を確認し,アポトーシスへの作用について検討することである。
【方法】
雄性マウス(C3H/He系統,11週齢,21~26g)17匹を使用した。無作為に,IRI手術前にLTSを行うマウス(IRIS,n=6),IRI手術のみのマウス(ISIC,n=6),室温(25℃)介入後に偽手術を施すマウス(SC,n=5)の3群に分けた。SC群をコントロールとした。IRISマウスは39℃で15分間加温した後,35℃で20分間保温した。IRICマウスは同時間,25℃の加温器に入れた。LTSから12時間後に,IRI手術(虚血40分)を実施した。血液および腎組織は,IRI手術から24時間後に採取した。腎障害の指標である血漿クレアチニン(Cr)および血中尿素窒素(BUN)を評価した。腎組織の病理組織学的分析は,病理専門医によって盲検下に評価された。また,TUNEL染色にて死細胞数を,光学顕微鏡を用いカウントした。腎におけるタンパク質発現はウェスタンブロット法を用い,各バンドの密度を数値化し,βアクチンに対する相対値で示した。統計学的分析は,一元配置分散分析,事後比較にTurkey testを用いた。P値<0.05を統計的有意差ありとみなした。
【結果】
実験終了時点におけるIRIマウスのCrおよびBUN値はSCマウスに比して有意に上昇した(P<0.01)。IRIS群のCr値はIRIC群に比して有意な低値(IRIS:1.1±0.3 mg/ml,IRIC:1.9±0.8 mg/ml,P<0.05)を示した。BUNにおいても同様の結果であった(IRIS:119±27 mg/ml,IRIC:152±30 mg/ml,P<0.05)。IRISマウスの尿細管損傷はIRICマウスに比して明らかに軽く(P<0.05),TUNEL陽性細胞数も有意に低値を示した(IRIS:72/field,IRIC:183/field,P<0.001)。アポトーシスに関わるcaspase3の活性は,IRICマウスに比しIRISマウスで有意に低下していた(P<0.05)。細胞保護に作用するリン酸化Hsp27(P<0.05)やHsp70(P<0.001)の発現は,IRICマウスに比しIRISマウスで有意に上昇した。
【結論】
LTS前処置は,行わなかったIRIマウスに比してCrやBUN値を有意に抑制した。虚血再灌流時にはATP枯渇による細胞内ホメオスタシスの崩壊,様々なケミカルメディエーターの放出により腎障害,特に代謝活性の高い尿細管が損傷を受ける。LTSはHsp27やHsp70など細胞恒常性に関わるタンパク発現を事前に誘導することで,腎耐性を高め,アポトーシス経路を抑制することが示唆された。
腎臓等の手術において,虚血再灌流障害は,術後臓器不全の原因となる主要な臨床的問題である。我々は,深部体温を1~2℃上昇させるマイルドな全身温熱(LTS)がアポトーシス経路に作用して腎不全マウスの腎機能を保護することを報告してきた。今回の研究目的は,LTSをプレコンディショニングとして使用したとき,腎虚血再灌流障害(IRI)マウスの腎障害の抑制を確認し,アポトーシスへの作用について検討することである。
【方法】
雄性マウス(C3H/He系統,11週齢,21~26g)17匹を使用した。無作為に,IRI手術前にLTSを行うマウス(IRIS,n=6),IRI手術のみのマウス(ISIC,n=6),室温(25℃)介入後に偽手術を施すマウス(SC,n=5)の3群に分けた。SC群をコントロールとした。IRISマウスは39℃で15分間加温した後,35℃で20分間保温した。IRICマウスは同時間,25℃の加温器に入れた。LTSから12時間後に,IRI手術(虚血40分)を実施した。血液および腎組織は,IRI手術から24時間後に採取した。腎障害の指標である血漿クレアチニン(Cr)および血中尿素窒素(BUN)を評価した。腎組織の病理組織学的分析は,病理専門医によって盲検下に評価された。また,TUNEL染色にて死細胞数を,光学顕微鏡を用いカウントした。腎におけるタンパク質発現はウェスタンブロット法を用い,各バンドの密度を数値化し,βアクチンに対する相対値で示した。統計学的分析は,一元配置分散分析,事後比較にTurkey testを用いた。P値<0.05を統計的有意差ありとみなした。
【結果】
実験終了時点におけるIRIマウスのCrおよびBUN値はSCマウスに比して有意に上昇した(P<0.01)。IRIS群のCr値はIRIC群に比して有意な低値(IRIS:1.1±0.3 mg/ml,IRIC:1.9±0.8 mg/ml,P<0.05)を示した。BUNにおいても同様の結果であった(IRIS:119±27 mg/ml,IRIC:152±30 mg/ml,P<0.05)。IRISマウスの尿細管損傷はIRICマウスに比して明らかに軽く(P<0.05),TUNEL陽性細胞数も有意に低値を示した(IRIS:72/field,IRIC:183/field,P<0.001)。アポトーシスに関わるcaspase3の活性は,IRICマウスに比しIRISマウスで有意に低下していた(P<0.05)。細胞保護に作用するリン酸化Hsp27(P<0.05)やHsp70(P<0.001)の発現は,IRICマウスに比しIRISマウスで有意に上昇した。
【結論】
LTS前処置は,行わなかったIRIマウスに比してCrやBUN値を有意に抑制した。虚血再灌流時にはATP枯渇による細胞内ホメオスタシスの崩壊,様々なケミカルメディエーターの放出により腎障害,特に代謝活性の高い尿細管が損傷を受ける。LTSはHsp27やHsp70など細胞恒常性に関わるタンパク発現を事前に誘導することで,腎耐性を高め,アポトーシス経路を抑制することが示唆された。