[P-KS-33-4] ラットにおける低負荷・高負荷のトレッドミル運動が肺組織に及ぼす影響
Keywords:運動, 肺組織, 生化学分析
【はじめに,目的】
加齢に伴い呼吸機能の低下は肺炎や肺気腫を引き起こし,日常生活活動量を低下させる。そのため,運動は肺機能に良い効果をもたらすことが明らかになっているが,肺実質に生化学的影響を及ぼすか否かの報告はない。そこで,本研究では,動物モデルから加齢に伴う運動介入(低負荷・高負荷:3ヶ月間)が肺実質に及ぼす影響について異化・同化作用を有する因子を中心に分子生物学的方法から明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は,4ヶ月齢のWistar系雄性ラット28匹。対照群(CTR)として4ヶ月齢ラット7匹,4ヶ月齢より3ヶ月間の低負荷運動群(low ex)7匹,高負荷運動群(high ex)7匹,通常飼育群(no ex)7匹の4群にて比較した。
運動は,小動物用トレッドミル(MK-680室町機械株式会社)を使使用した。low exは12m/min(傾斜0°)とし,high exは12m/min(傾斜0°)より1分ごとに2m/min増加させ最大52m/minまでとしall-outした時点で終了とした。介入頻度は,3days/week,20minと設定した。生化学的分析は右中葉肺組織に対してリアルタイムPCR法を使用した。目的遺伝子を,tumor necrosis factor-α(TNF-α)とinterferon-gamma(IFN-γ),vascular endothelial growth factor(VEGF),内部標準遺伝子をGAPDHとし,リアルタイムPCR法を用い,ΔΔCT法により相対値を算出した。統計処理は一元配置分散分析により比較検討した。
【結果】
TNF-αの発現量はCTR群と比較しno群では1.25倍,low群では1.39倍,high群では1.11倍であった。IFN-γの発現量はCTR群と比較しno群では1.15倍,low群では1.17倍,high群では1.04倍であった。VEGFの発現量はCTR群と比較しno群では0.82倍,low群では0.81倍,high群では0,88倍であった。全群において統計的に有意差を認めなかった。
【結論】
肺実質は加齢によって肺胞腔域の拡大を示し,炎症性細胞促進因子であるTNF-αやIFN-γの増加によって異化が促進されるが,VEGFの増加は肺胞修復過程における肺実質の形態維持に関与する。
TNF-αとIFN-γでno群・low群に比較しhigh群で低い傾向であったこと,同様にVEGFでno群・low群に比較しhigh群で高い傾向にあったことより,運動負荷量の違いが肺実質における炎症性細胞因子や肺胞修復過程因子の発現量に異なった影響を及ぼす可能性が示唆された。本研究は運動負荷後に反応する肺実質の生化学的動態を検証したものであり,この反応が肺組織に影響を及ぼすか否かは組織学的検証が必要であり今後の課題である。
加齢に伴い呼吸機能の低下は肺炎や肺気腫を引き起こし,日常生活活動量を低下させる。そのため,運動は肺機能に良い効果をもたらすことが明らかになっているが,肺実質に生化学的影響を及ぼすか否かの報告はない。そこで,本研究では,動物モデルから加齢に伴う運動介入(低負荷・高負荷:3ヶ月間)が肺実質に及ぼす影響について異化・同化作用を有する因子を中心に分子生物学的方法から明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は,4ヶ月齢のWistar系雄性ラット28匹。対照群(CTR)として4ヶ月齢ラット7匹,4ヶ月齢より3ヶ月間の低負荷運動群(low ex)7匹,高負荷運動群(high ex)7匹,通常飼育群(no ex)7匹の4群にて比較した。
運動は,小動物用トレッドミル(MK-680室町機械株式会社)を使使用した。low exは12m/min(傾斜0°)とし,high exは12m/min(傾斜0°)より1分ごとに2m/min増加させ最大52m/minまでとしall-outした時点で終了とした。介入頻度は,3days/week,20minと設定した。生化学的分析は右中葉肺組織に対してリアルタイムPCR法を使用した。目的遺伝子を,tumor necrosis factor-α(TNF-α)とinterferon-gamma(IFN-γ),vascular endothelial growth factor(VEGF),内部標準遺伝子をGAPDHとし,リアルタイムPCR法を用い,ΔΔCT法により相対値を算出した。統計処理は一元配置分散分析により比較検討した。
【結果】
TNF-αの発現量はCTR群と比較しno群では1.25倍,low群では1.39倍,high群では1.11倍であった。IFN-γの発現量はCTR群と比較しno群では1.15倍,low群では1.17倍,high群では1.04倍であった。VEGFの発現量はCTR群と比較しno群では0.82倍,low群では0.81倍,high群では0,88倍であった。全群において統計的に有意差を認めなかった。
【結論】
肺実質は加齢によって肺胞腔域の拡大を示し,炎症性細胞促進因子であるTNF-αやIFN-γの増加によって異化が促進されるが,VEGFの増加は肺胞修復過程における肺実質の形態維持に関与する。
TNF-αとIFN-γでno群・low群に比較しhigh群で低い傾向であったこと,同様にVEGFでno群・low群に比較しhigh群で高い傾向にあったことより,運動負荷量の違いが肺実質における炎症性細胞因子や肺胞修復過程因子の発現量に異なった影響を及ぼす可能性が示唆された。本研究は運動負荷後に反応する肺実質の生化学的動態を検証したものであり,この反応が肺組織に影響を及ぼすか否かは組織学的検証が必要であり今後の課題である。