[P-KS-35-3] 末梢神経損傷が関節不動モデルの関節包線維化に及ぼす影響
キーワード:ラット, 関節不動, 末梢神経損傷
【はじめに,目的】
我々はラット後肢膝関節を創外固定にて不動化し,関節構成体の癒着や線維化が生じる事,およびこの病的変化に筋線維芽細胞が関与する可能性について報告してきた。またラット末梢神経損傷モデルに対して関節固定を行うと,これらの病的変化が殆ど観察されないことを報告してきた。そこで今回,神経系が筋線維芽細胞の増生に何らかの影響を及ぼしているとの仮説を立て,ラット末梢神経損傷モデルの後肢を不動化し,関節構成体の変化および筋線維芽細胞の増生について検討する事を目的に実験を行った。
【方法】
9週齢のWistar系雄性ラット(n=12)を使用した。全身麻酔下で体重を測定し,実験群は先行研究と同様に右鼠径部を切開して大腿神経を確認し,結紮・切断を行った。覚醒後,膝関節伸展が不可である事を確認してから創外固定を用いて右後肢膝関節を120度屈曲位で不動化した。対照群は全身麻酔以外の介入を行わず自然飼育とした。実験期間は2週間とし,期間終了後体重を測定した後にラットを安楽死させ右後肢を股関節より採取し,組織固定・脱灰後に矢状面にて二割して切り出し,通常手技によりにパラフィン包埋標本を作製した。ミクロトームで3μmの厚さの連続切片を作成し,その切片にHE染色と免疫染色を行った。免疫染色に使用する抗体は筋線維芽細胞の検出を目的にα-SMA(ab5694:abcam社製)を,血管内皮細胞の染色にCD34(ab81289:abcam社製)を用いた。染色後,顕微鏡デジタルカメラを用いて1つの標本につき200倍で10視野撮影した。この時,免疫染色を行ったものについては可能な限り同じ場所を撮影するように留意した。
画像を拡大印刷し,α-SMA抗体に陽性を示す細胞のうちCD34抗体に陽性である血管内皮細胞に隣接した血管周皮細胞を除外するため,CD34陽性の細胞に隣接していないα-SMA抗体陽性細胞の数を算出した。なお,細胞数の算出は画像が実験群・対照群のどちらのものかが判らないようにして行った。実験群,対照群の細胞数について対応のないt検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
実験群,対照群共に関節軟骨と滑膜の癒着は観察されなかった。またCD34陽性細胞に隣接しないα-SMA陽性細胞の数は実験群では10.1±2.2個,対照群では9.3±4.3個であり,有意差を認めなかった。
【結論】
関節不動モデルにおける関節構成体の病的変化には神経系が関与している可能性を示唆しており,関節可動域障害の病態を理解し,効果的な治療法を確立するために新たな知識を与えるものである。
我々はラット後肢膝関節を創外固定にて不動化し,関節構成体の癒着や線維化が生じる事,およびこの病的変化に筋線維芽細胞が関与する可能性について報告してきた。またラット末梢神経損傷モデルに対して関節固定を行うと,これらの病的変化が殆ど観察されないことを報告してきた。そこで今回,神経系が筋線維芽細胞の増生に何らかの影響を及ぼしているとの仮説を立て,ラット末梢神経損傷モデルの後肢を不動化し,関節構成体の変化および筋線維芽細胞の増生について検討する事を目的に実験を行った。
【方法】
9週齢のWistar系雄性ラット(n=12)を使用した。全身麻酔下で体重を測定し,実験群は先行研究と同様に右鼠径部を切開して大腿神経を確認し,結紮・切断を行った。覚醒後,膝関節伸展が不可である事を確認してから創外固定を用いて右後肢膝関節を120度屈曲位で不動化した。対照群は全身麻酔以外の介入を行わず自然飼育とした。実験期間は2週間とし,期間終了後体重を測定した後にラットを安楽死させ右後肢を股関節より採取し,組織固定・脱灰後に矢状面にて二割して切り出し,通常手技によりにパラフィン包埋標本を作製した。ミクロトームで3μmの厚さの連続切片を作成し,その切片にHE染色と免疫染色を行った。免疫染色に使用する抗体は筋線維芽細胞の検出を目的にα-SMA(ab5694:abcam社製)を,血管内皮細胞の染色にCD34(ab81289:abcam社製)を用いた。染色後,顕微鏡デジタルカメラを用いて1つの標本につき200倍で10視野撮影した。この時,免疫染色を行ったものについては可能な限り同じ場所を撮影するように留意した。
画像を拡大印刷し,α-SMA抗体に陽性を示す細胞のうちCD34抗体に陽性である血管内皮細胞に隣接した血管周皮細胞を除外するため,CD34陽性の細胞に隣接していないα-SMA抗体陽性細胞の数を算出した。なお,細胞数の算出は画像が実験群・対照群のどちらのものかが判らないようにして行った。実験群,対照群の細胞数について対応のないt検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
実験群,対照群共に関節軟骨と滑膜の癒着は観察されなかった。またCD34陽性細胞に隣接しないα-SMA陽性細胞の数は実験群では10.1±2.2個,対照群では9.3±4.3個であり,有意差を認めなかった。
【結論】
関節不動モデルにおける関節構成体の病的変化には神経系が関与している可能性を示唆しており,関節可動域障害の病態を理解し,効果的な治療法を確立するために新たな知識を与えるものである。