第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P35

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-35-4] 特発性手根管症候群の滑膜下結合組織においてPlatelet-derived Growth Factor Receptor alphaを発現する間葉系細胞が増殖する

齋藤悠城 (札幌医科大学大学院医学研究科解剖学第2講座)

キーワード:手根管症候群, 間葉系細胞, Platelet-derived Growth Factor Receptor alpha

【はじめに,目的】

滑膜下結合組織(Subsynovial Connective Tissues,SSCT)の線維化が特発性手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome,CTS)の原因とされている。近年,線維性疾患においてPlatelet-derived Growth Factor Receptor alpha(PDGFRα)陽性の間葉系細胞の過剰増殖が組織線維化の要因の一つとして注目されている。本研究では,CTS及びコントロールのSSCTにおけるPDGFRα陽性間葉系細胞と間葉系細胞の超微細形態について検討を行った。



【方法】

CTS患者2名(77歳女性,45歳女性),コントロール1名(47歳男性)および2遺体標本(86歳男性,94歳男性)の手根管よりSSCTを採取した。超微細形態観察のため,オスミウム固定後,超薄切片を作製し,電子染色を施した。免疫組織学的解析のため,凍結切片を作製しPDGFRα,Cadherin-11抗体で免疫組織染色を行い,1視野あたりの細胞密度,TGFβ1,CTGF陽性細胞の割合を算出した。結果の解析はCTS患者のSSCTをCTS群,コントロールおよび遺体標本のSSCT対象群とし,One way ANOVA及びTukey-Kramer testを用いて群間比較をした(α=0.05)。



【結果】CTS群における間葉系細胞の超微細形態所見では細胞質内の豊富な筋フィラメントと細胞質周囲に大量のコラーゲン様線維産生を認めた。CTS群におけるPDGFRα陽性細胞の割合は対象群より有意に高値を示したが,Cadherin-11陽性細胞の割合は有意に低値を示した。さらにPDGFRα陽性かつCadherin-11陽性細胞の割合がCTS群にて有意に低値を示した。



【結論】

CTS群においてPDGFRα陽性間葉系細胞の過剰増殖を認め,同時に正常な滑膜線維芽細胞のマーカーであるCadherin-11を発現する細胞が減少した。これらの結果から,CTSにおけるSSCTの線維化にはPDGFRα陽性間葉系細胞の関与が示唆された。