[P-KS-35-5] モノクロタリン誘導性右心不全ラットの骨格筋におけるユビキチン・プロテアソーム系ならびにオートファジー・ライソソーム系の経時的変化
Keywords:骨格筋, 心不全, タンパク分解
【はじめに,目的】
心不全における運動耐用能の低下には,循環器系の機能低下だけでなく,骨格筋の機能不全も関与するとされている。しかし,心不全に伴う骨格筋の機能不全に関して,その機序や経時的変化などの詳細は不明である。本研究では,心不全に伴う骨格筋の機能不全に対する最適な介入時期を決定するため,タンパク質分解系に着目して,その経時的変化を検証した。
【方法】
4週齢のWistar系雄ラットを,モノクロタリンの腹腔内投与によって右心不全を惹起した心不全群と対照群の2群に区分した。実験期間中は体重と餌摂取量,バイタルサインを毎日測定した。実験開始から14日後および21±1日後に,肺,心臓,腓腹筋,ヒラメ筋を摘出した。その後,骨格筋の凍結切片を作製し,ATPase染色並びにSDH染色を行い,筋線維の横断面積を測定した。また,骨格筋の試料から総RNAを抽出し,RNA逆転写酵素を使用してcDNAを合成した。その後,リアルタイムPCR法にてユビキチン・プロテアソーム系(Atrogin-1,MuRF-1)とオートファジー・ライソソーム系(LC3,p62)に関するmRNAを検出し,ΔΔCT法にて各mRNA量を測定した。なお,内在性コントロールには18SリボソームmRNAを用いた。全ての測定値に関する各群間の比較には,一元配置分散分析とTurkey HSDの多重比較検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
モノクロタリン投与14日後では,体重と餌摂取量,バイタルサイン,筋線維横断面積に関して,両群間に有意差を認めなかった。一方,心不全群の肺重量は対照群に比べて有意に高値を示した。また,心不全群では,形態学的な筋萎縮は認めないにも関わらず,腓腹筋におけるMuRF-1,Atrogin-1,LC3,p62のmRNA発現が顕著であった。餌摂取量と動脈血酸素飽和度に関して,モノクロタリン投与14日後以降において,心不全群は対照群に比べて低値を示した。モノクロタリン投与21±1日後では,心不全群の体重は対照群に比べて有意に低値を示し,心不全群の心重量は対照群に比べて有意に高値を示した。また,腓腹筋とヒラメ筋の筋線維横断面積に関して,心不全群は対照群に比べて有意に低値を示した。加えて,心不全群では,腓腹筋とヒラメ筋の両筋におけるMuRF-1,Atrogin-1,LC3,p62のmRNAの発現が対照群に比べて有意に高値を示した。
【結論】
骨格筋の形態学的な萎縮は心不全の発症と同時期に生じるが,速筋ではタンパク分解系の活動が心不全の発症に先行する可能性が示唆された。また,タンパク分解系に関するmRNA発現が亢進した後に餌摂取量や動脈血酸素飽和度が低下した事から,心不全に伴う筋萎縮には,低栄養や低酸素以外の要因も関与する可能性が示唆された。本研究より,心不全に伴う骨格筋の機能不全に対しては,筋萎縮の出現前から予防的に介入する必要性が示唆された。
心不全における運動耐用能の低下には,循環器系の機能低下だけでなく,骨格筋の機能不全も関与するとされている。しかし,心不全に伴う骨格筋の機能不全に関して,その機序や経時的変化などの詳細は不明である。本研究では,心不全に伴う骨格筋の機能不全に対する最適な介入時期を決定するため,タンパク質分解系に着目して,その経時的変化を検証した。
【方法】
4週齢のWistar系雄ラットを,モノクロタリンの腹腔内投与によって右心不全を惹起した心不全群と対照群の2群に区分した。実験期間中は体重と餌摂取量,バイタルサインを毎日測定した。実験開始から14日後および21±1日後に,肺,心臓,腓腹筋,ヒラメ筋を摘出した。その後,骨格筋の凍結切片を作製し,ATPase染色並びにSDH染色を行い,筋線維の横断面積を測定した。また,骨格筋の試料から総RNAを抽出し,RNA逆転写酵素を使用してcDNAを合成した。その後,リアルタイムPCR法にてユビキチン・プロテアソーム系(Atrogin-1,MuRF-1)とオートファジー・ライソソーム系(LC3,p62)に関するmRNAを検出し,ΔΔCT法にて各mRNA量を測定した。なお,内在性コントロールには18SリボソームmRNAを用いた。全ての測定値に関する各群間の比較には,一元配置分散分析とTurkey HSDの多重比較検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
モノクロタリン投与14日後では,体重と餌摂取量,バイタルサイン,筋線維横断面積に関して,両群間に有意差を認めなかった。一方,心不全群の肺重量は対照群に比べて有意に高値を示した。また,心不全群では,形態学的な筋萎縮は認めないにも関わらず,腓腹筋におけるMuRF-1,Atrogin-1,LC3,p62のmRNA発現が顕著であった。餌摂取量と動脈血酸素飽和度に関して,モノクロタリン投与14日後以降において,心不全群は対照群に比べて低値を示した。モノクロタリン投与21±1日後では,心不全群の体重は対照群に比べて有意に低値を示し,心不全群の心重量は対照群に比べて有意に高値を示した。また,腓腹筋とヒラメ筋の筋線維横断面積に関して,心不全群は対照群に比べて有意に低値を示した。加えて,心不全群では,腓腹筋とヒラメ筋の両筋におけるMuRF-1,Atrogin-1,LC3,p62のmRNAの発現が対照群に比べて有意に高値を示した。
【結論】
骨格筋の形態学的な萎縮は心不全の発症と同時期に生じるが,速筋ではタンパク分解系の活動が心不全の発症に先行する可能性が示唆された。また,タンパク分解系に関するmRNA発現が亢進した後に餌摂取量や動脈血酸素飽和度が低下した事から,心不全に伴う筋萎縮には,低栄養や低酸素以外の要因も関与する可能性が示唆された。本研究より,心不全に伴う骨格筋の機能不全に対しては,筋萎縮の出現前から予防的に介入する必要性が示唆された。