[P-KS-35-6] 神経筋電気刺激(NMES)と温熱刺激の併用は筋疲労耐性を高めるか?
Keywords:NMES, 温熱刺激, 筋疲労
【はじめに,目的】
神経筋電気刺激(NMES)は運動機能障害に対する電気刺激療法であり,一般に筋収縮を伴う。NMESでは実施中の筋疲労が問題となることがある。この場合,パルス振幅や周波数の引き下げ,オン時間の短縮,オフ時間の延長などで対応することが多い。しかし,このような対応はNMESの効果を低下させる可能性もある。最近,温熱刺激(HS)に伴う筋疲労耐性の向上が一部で報告されているが,NMESにHSを併用した場合の筋疲労耐性向上の可能性は未検討の問題であった。以上から本研究では,NMESとHSの併用により筋疲労耐性が高められるか検討することを目的とした。
【方法】
健常者15名を対象とし,安静背臥位を保持した対象者の左右の前脛骨筋に対してNMESとHSを併用する条件(NMES+HS)とNMESのみ施行する条件(NMES単独)の2条件を無作為順序で1日以上の間隔を空けて実施した。各条件でのNMESは,電極(5cm×5cmの粘着パッド)を前脛骨筋の運動点と筋腹遠位端に貼付し,オン時間5秒,オフ時間10秒,周波数30Hz,パルス幅250μsecの単相性矩形波を足背屈各が0度となるパルス振幅にて20分実施した。NMES+HSでは,NMESに先立ち前脛骨筋の加温を目的としたホットパックによるHSを20分(松澤,2007)実施し,前脛骨筋を事前に加温した状態でNMESを実施した。なお,NMES開始後もHSは継続した。各条件の実施中,筋疲労関連指標としてオン時間での背屈角(腓骨長軸と第5中足骨長軸を用いたデジタル画像解析にて測定)と前脛骨筋の筋血流量(総ヘモグロビン量:Total-Hb)をNMES開始時(基準)から5分間隔でNMES終了まで測定した。また,各条件の実施前後での前脛骨筋の筋硬度も測定した。その上で,各条件での背屈角とTotal-Hbの基準からの経時的変化を多重比較検定にて,各条件の実施前後での筋硬度の変化を対応のあるt検定にて比較した。
【結果】
背屈角については,NMES単独ではNMES開始10分後以降での有意な低下を認めた。これに対して,NMES+HSでは経過中での低下傾向は見られたものの有意な変化ではなかった。Total-Hbについては,NMES単独では経過を通じ明らかな変化を認めなったが,NMES+HSではNMES開始5分後以降での有意な増加を認めた。筋硬度については,NMES+HSでのみ実施前後での有意な低下を認めた。
【結論】
背屈角の結果は,NMESとHSの併用により筋疲労耐性が向上した可能性を示している。HSに伴う筋疲労耐性の向上には,HSに伴う筋加温に起因した筋血流量の増加や筋細胞内での熱ショックタンパク質の発現の増加などの諸要因の関与が考えられる。本研究では,NMES+HSでのみTotal-Hbの有意な増加や筋硬度の有意な低下が認められた。これらの所見は,HSに伴い筋が加温されたことに伴う循環促進や筋伸張性の向上を反映している可能性があり,前述の諸要因の関与を支持していると考える。今後,実際の症例においてNMESとHSの併用が筋疲労耐性や治療効果に及ぼす影響を検討する必要がある。
神経筋電気刺激(NMES)は運動機能障害に対する電気刺激療法であり,一般に筋収縮を伴う。NMESでは実施中の筋疲労が問題となることがある。この場合,パルス振幅や周波数の引き下げ,オン時間の短縮,オフ時間の延長などで対応することが多い。しかし,このような対応はNMESの効果を低下させる可能性もある。最近,温熱刺激(HS)に伴う筋疲労耐性の向上が一部で報告されているが,NMESにHSを併用した場合の筋疲労耐性向上の可能性は未検討の問題であった。以上から本研究では,NMESとHSの併用により筋疲労耐性が高められるか検討することを目的とした。
【方法】
健常者15名を対象とし,安静背臥位を保持した対象者の左右の前脛骨筋に対してNMESとHSを併用する条件(NMES+HS)とNMESのみ施行する条件(NMES単独)の2条件を無作為順序で1日以上の間隔を空けて実施した。各条件でのNMESは,電極(5cm×5cmの粘着パッド)を前脛骨筋の運動点と筋腹遠位端に貼付し,オン時間5秒,オフ時間10秒,周波数30Hz,パルス幅250μsecの単相性矩形波を足背屈各が0度となるパルス振幅にて20分実施した。NMES+HSでは,NMESに先立ち前脛骨筋の加温を目的としたホットパックによるHSを20分(松澤,2007)実施し,前脛骨筋を事前に加温した状態でNMESを実施した。なお,NMES開始後もHSは継続した。各条件の実施中,筋疲労関連指標としてオン時間での背屈角(腓骨長軸と第5中足骨長軸を用いたデジタル画像解析にて測定)と前脛骨筋の筋血流量(総ヘモグロビン量:Total-Hb)をNMES開始時(基準)から5分間隔でNMES終了まで測定した。また,各条件の実施前後での前脛骨筋の筋硬度も測定した。その上で,各条件での背屈角とTotal-Hbの基準からの経時的変化を多重比較検定にて,各条件の実施前後での筋硬度の変化を対応のあるt検定にて比較した。
【結果】
背屈角については,NMES単独ではNMES開始10分後以降での有意な低下を認めた。これに対して,NMES+HSでは経過中での低下傾向は見られたものの有意な変化ではなかった。Total-Hbについては,NMES単独では経過を通じ明らかな変化を認めなったが,NMES+HSではNMES開始5分後以降での有意な増加を認めた。筋硬度については,NMES+HSでのみ実施前後での有意な低下を認めた。
【結論】
背屈角の結果は,NMESとHSの併用により筋疲労耐性が向上した可能性を示している。HSに伴う筋疲労耐性の向上には,HSに伴う筋加温に起因した筋血流量の増加や筋細胞内での熱ショックタンパク質の発現の増加などの諸要因の関与が考えられる。本研究では,NMES+HSでのみTotal-Hbの有意な増加や筋硬度の有意な低下が認められた。これらの所見は,HSに伴い筋が加温されたことに伴う循環促進や筋伸張性の向上を反映している可能性があり,前述の諸要因の関与を支持していると考える。今後,実際の症例においてNMESとHSの併用が筋疲労耐性や治療効果に及ぼす影響を検討する必要がある。