第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P36

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-36-5] 低~中強度の定期的な運動が実験的脳梗塞ラットのヒラメ筋に及ぼす影響について

松田史代, 榊間春利, 樋口逸郎, 米和徳 (鹿児島大学医学部保健学科)

Keywords:脳梗塞, ヒラメ筋, 運動

【はじめに,目的】

脳卒中は,臨床場面で理学療法士が最も多く遭遇する疾患の1つである。これまでは主としてミオパチーや下位運動ニューロン病変に伴う筋線維変化についての研究が行われてきた。しかし,上位運動ニューロン病変に伴う麻痺を呈したラットに対して運動を行い,その運動が骨格筋に及ぼす影響を調べた研究は少ない。そこで今回,中大脳動脈領域の脳梗塞モデルラットを作成し,骨格筋の中枢神経障害後の経時的形態学的変化と,中枢神経障害後の骨格筋に対する低~中強度の定期的な運動介入効果の影響について比較・検討した。

【方法】

実験動物は,8週齢のWistar系雄性ラット30匹を使用した。トレッドミル運動群と非運動群に15匹ずつに分け,1,3,5,7,14,28日に各3匹ずつ無作為に分けた。脳梗塞は小泉らの方法に準じて作成した。運動群は術後1日より毎日20分間のトレッドミル走行を最長4週間行った。運動開始後1,2,3,4週に運動機能および神経学的評価を行った。各時期に深麻酔下でヒラメ筋を摘出し,筋質重量計測後,凍結固定した。凍結連続切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色,ATPase染色を行った。ヒラメ筋の筋線維タイプ構成比率,タイプIとタイプII線維の筋線維横断面積を測定した。筋湿重量,筋線維横断面積,筋線維のタイプ構成の運動群,非運動群の比較にはF検定を行った後,対応のないt検定を用い,左右の比較には対応のあるt検定を用いた。また,経時的群間比較には,一元配置分散分析(ANOVA)を行い,有意水準はいずれの検定においても5%未満とした。

【結果】

運動機能や神経学的評価において4週後で運動群が非運動群に比べ有意な改善を示した。筋質重量は,両群術後7日まで減少したがその後回復し,運動の有無による筋湿重量に有意な差はみられなかった。また,両群ともに,麻痺側・反対側ともに有意な差はみられなかった。H/E所見では,非運動群の麻痺側3日後と14日後を比較して14日後は3日後に比べて,一部の筋において,筋線維間の隙間がみられた。非運動群7日目の筋線維タイプ構成率で,麻痺側は反対側に比べて,タイプII線維の比率が多く,有意な差がみられた。また,麻痺側14日目の筋線維タイプ構成率で,非運動群は運動群と比べて,タイプII線維の比率が多く,有意な差がみられた。横断面積はタイプII繊維が有意に小さく術7日後まで減少し,その後回復を示した。

【結論】

14日後の非運動群の麻痺側に一部,筋線維間に隙間が見られ,形態学的萎縮と思われる所見が確認され,筋タイプ構成では,非運動群でタイプI線維が減少し,タイプII線維の増加がみられた。筋線維横断面積では,非運動群はタイプII線維の萎縮が著明であり,運動群はタイプII線維は一時的に減少するものの,2週間後で回復また増加傾向にあった。このことから,中枢神経障害後,運動をすることで,タイプII線維の筋萎縮を抑制することが示唆された。