第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P37

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-37-1] 周期運動による慢性頚肩痛有訴者の鎮痛・気分改善効果および中枢性疼痛修飾系への影響

山口修平1, 鈴木亨1, 中田健太1, 藤井裕也1, 山本亜沙美1, 倉知朋代2, 城由起子3, 松原貴子1 (1.日本福祉大学健康科学部, 2.名古屋徳洲会総合病院リハビリテーション科, 3.名古屋学院大学リハビリテーション学科)

Keywords:鎮痛, 慢性疼痛, 周期運動

【はじめに,目的】自転車などの周期運動は,セロトニン(5-TH)分泌を促進し気分を改善すると報告されている。一方,5-TH作動性ニューロンによる下行性疼痛抑制系作動や鎮痛薬として5-TH製剤など,5-THが鎮痛に作用することは周知の事実である。このことから,我々は健常者において周期運動が気分改善に加え痛覚感受性の低下をもたらすことを報告したが,慢性痛有訴者での効果は不明であり,痛覚感受性への影響は確認したものの中枢性疼痛修飾系を介した鎮痛効果の確認には至っていない。そこで慢性痛有訴者における自転車周期運動による鎮痛効果を中枢性疼痛修飾系の指標とされるtemporal summation(TS)やconditioned pain modulation(CPM)を用いて検証した。

【方法】健常男性20名(20.5±1.4歳:健常群)と慢性頚肩痛有訴男性17名(20.7±2.0歳:疼痛群)を対象に,50%HRRでの自転車運動を1回転/秒の周期で20分間行わせた。評価項目は,疼痛群の頚肩痛強度(VAS),両群の僧帽筋筋硬度,痛覚感受性,TS,CPM,脳波,爽快感(VAS),気分(POMS短縮版)とし,運動前後に測定した。測定には熱痛覚閾値+2℃の刺激による熱痛強度(HPI,VASにて測定)を用い,痛覚感受性は頚肩部と大腿部のHPI,TSは非利き手側前腕に10回熱刺激を加えた時の各回HPIの経時的変化,傾き,1~4(VAS-I)・5~7(VAS-II)・8~10(VAS-III)回目の各平均値を算出した。CPMはTS測定後に利き手手部を3~5℃の冷水に1分間浸漬した後,非利き手前腕でHPIを測定した。脳波は国際10-20法にて,気分の指標とされる前頭部α1パワー値の非対称性と頭頂部α2パワー値を算出した。統計学的解析はFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,Wilcoxonの符号付順位検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】疼痛群の頚肩痛強度は運動後に低下した。筋硬度は疼痛群で運動前に高値を示し,運動後に疼痛群のみ低下した。痛覚感受性は運動後に頚肩部で健常群のみ,大腿部で両群とも低下した。TSは両群とも経時的変化で運動前のみ1回目と比べ10回目でHPIが増大,傾きおよびVAS-II・IIIが運動後に低下した。CPMは健常群のみ冷水曝露後のHPIが運動後に低下した。脳波は両群とも運動後にα1が右側優位に変化し,α2が増大した。また,両群とも運動後に爽快感とPOMSの「活気」は増大,「緊張」と「抑うつ」は低下し,疼痛群のみ「怒り」が低下した。

【結論】今回,周期運動により疼痛群の自覚的頚肩痛を軽減し,非有痛部の痛覚感受性低下と気分改善効果をもたらした。また,疼痛群では周期運動により,侵害受容を下行性に抑制するCPMは変化しなかったけれども,上行性の侵害受容を増幅し中枢性感作の指標となるTSは健常群と同様に抑制された。よって,周期運動は中枢性疼痛修飾系を賦活し,さらにその効果は慢性痛有訴者にも生じうる可能性が示唆された。