[P-KS-37-4] 等尺性運動による疼痛抑制効果の検証
―等尺性運動は中枢性疼痛修飾系にまで影響を及ぼすか―
Keywords:疼痛抑制, 等尺性運動, 中枢性疼痛修飾系
【はじめに,目的】運動による疼痛抑制(exercise-induced hypoalgesia:EIH)について,様々な運動様式による効果が検証されている。そのなかで等尺性運動によるEIH効果は運動強度に依存するといわれているが(Kelly 2011),低強度であっても効果は認められており(Umeda 2010),未だ有効な運動強度やそのメカニズムの解明には至っていない。近年,疼痛抑制メカニズムの検証において,中枢性感作(疼痛促通系)の抑制および中枢性疼痛抑制系を反映する指標として時間的加重(temporal summation:TS)やconditioned pain modulation(CPM)が用いられている。そこで本研究は,等尺性運動によるEIH効果について,TSとCPMを指標に中枢性疼痛修飾系への影響を含め,異なる運動強度で比較検討した。
【方法】対象は健常男性16名(20.5±1.5歳)とした。運動は利き手にて25%または80%maximum voluntary contraction(MVC)強度で握力計を最大2分間連続把持する等尺性運動とし,全対象に実施順序を無作為に両強度の運動を別日に行わせた。測定項目はTS,CPMとし運動前後に測定した。TSは非利き手側前腕に熱痛覚閾値温度+2℃の熱刺激を5秒間(刺激間隔2秒間)10回連続で加え,各回の熱痛覚強度(HPI)をVASで測定し,1~4・5~7・8~10回目の各平均値(VAS-I・II・III)を算出後,VAS-IIIをVAS-Iで除した値を解析に供じた(Graven-Nielsen 2015)。CPMは,TS測定後,コンディショニング刺激として5~7℃の冷水に利き手同側の足部を1分間浸漬した後に非利き手側前腕で再びTSを測定し,VAS-IをCPM効果指標とした。統計学的解析は,群内の経時的変化にFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定またはWilcoxonの符号付順位検定,強度間比較にWilcoxonの符号付順位検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】両運動の強度と時間の平均は,25%MVCで9.3±1.3kg,120.0±0.0秒,80%MVCで29.8±12.1kg,29.5±12.1秒であった。TSは25%MVCで運動後に有意な低下を示したが,80%MVCでは運動による変化を示さなかった。CPMは両強度ともに運動前,後にそれぞれ有意に減少したが,両強度とも運動によるVAS-Iの変化はなかった。
【結論】今回,低強度の等尺性運動によってTSの抑制を認めた一方,高強度運動ではTSの変化を認めず,また,CPM効果は低・高強度運動によってもみられなかった。TSは反復侵害刺激により上行性の侵害受容入力を増幅させ痛覚感受性が亢進する中枢性感作を示す一現象であり,一方でCPMは侵害刺激入力を下行性に抑制する中枢性疼痛抑制作用を反映するもので(Kong 2012,Nielsen 2009),いずれも中枢性疼痛修飾系の指標として疼痛の病態メカニズムの解析に用いられる。等尺性運動は中枢性疼痛修飾系に影響を及ぼす可能性は示唆されるが,中枢性疼痛修飾系を賦活するトリガーとなるべく至適運動強度と時間についてさらなる検討が必要である。
【方法】対象は健常男性16名(20.5±1.5歳)とした。運動は利き手にて25%または80%maximum voluntary contraction(MVC)強度で握力計を最大2分間連続把持する等尺性運動とし,全対象に実施順序を無作為に両強度の運動を別日に行わせた。測定項目はTS,CPMとし運動前後に測定した。TSは非利き手側前腕に熱痛覚閾値温度+2℃の熱刺激を5秒間(刺激間隔2秒間)10回連続で加え,各回の熱痛覚強度(HPI)をVASで測定し,1~4・5~7・8~10回目の各平均値(VAS-I・II・III)を算出後,VAS-IIIをVAS-Iで除した値を解析に供じた(Graven-Nielsen 2015)。CPMは,TS測定後,コンディショニング刺激として5~7℃の冷水に利き手同側の足部を1分間浸漬した後に非利き手側前腕で再びTSを測定し,VAS-IをCPM効果指標とした。統計学的解析は,群内の経時的変化にFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定またはWilcoxonの符号付順位検定,強度間比較にWilcoxonの符号付順位検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】両運動の強度と時間の平均は,25%MVCで9.3±1.3kg,120.0±0.0秒,80%MVCで29.8±12.1kg,29.5±12.1秒であった。TSは25%MVCで運動後に有意な低下を示したが,80%MVCでは運動による変化を示さなかった。CPMは両強度ともに運動前,後にそれぞれ有意に減少したが,両強度とも運動によるVAS-Iの変化はなかった。
【結論】今回,低強度の等尺性運動によってTSの抑制を認めた一方,高強度運動ではTSの変化を認めず,また,CPM効果は低・高強度運動によってもみられなかった。TSは反復侵害刺激により上行性の侵害受容入力を増幅させ痛覚感受性が亢進する中枢性感作を示す一現象であり,一方でCPMは侵害刺激入力を下行性に抑制する中枢性疼痛抑制作用を反映するもので(Kong 2012,Nielsen 2009),いずれも中枢性疼痛修飾系の指標として疼痛の病態メカニズムの解析に用いられる。等尺性運動は中枢性疼痛修飾系に影響を及ぼす可能性は示唆されるが,中枢性疼痛修飾系を賦活するトリガーとなるべく至適運動強度と時間についてさらなる検討が必要である。