[P-KS-38-5] 歩行時のarm swingと体幹回旋運動の左右対称性
キーワード:Arm swing, 体幹回旋, 対称性
【はじめに,目的】歩行時のarm swing(腕振り)がバランスや推進力の面で不可欠であることをヒトは経験的に知っているが,歩行制御への本質的な貢献は未だ明らかにされていない。先行研究では,体幹回旋への寄与をarm swing抑制条件との比較を行った報告から,体幹回旋運動の減少や加速度への寄与が述べられているが,そのメカニズムは未解明である。一方で,臨床上動作分析等において,arm swingの非対称性は非常に着目しやすいため,無意識的に行われるarm swingと,身体他体節との関係性が解明されれば,理学療法介入を行う上で非常に有用な情報となり得る。本研究ではarm swingと体幹回旋の左右非対称性に着目をし,左右のarm swing amplitudeと体幹の左右回旋の関連性を調査することで,arm swingの制御機能を明らかにすることを目的とした。
【方法】健常成人男性13名を対象に,床反力付きトレッドミル(BERTEC社)にて0.9m/sの速度条件で通常歩行を3試行行った。データ計測は三次元動作解析装置(カメラ17台,VICON社,200Hz)で剛体リンクモデルPlug in gait full body AI modelを用い,39個の反射マーカーの三次元座標を記録した。計測はトレッドミル歩行が定常状態になってから20秒間記録し,うち各試行16歩行周期を解析した。
データから体幹回旋角度と,体重及び上肢マーカー情報により算出した上肢質量中心点(以下COM)のy座標情報を用いてarm swingの前後振幅を得た。左右COMの矢状面上の交点から前後方向のピークまでの距離の累積和を左右それぞれで算出し,arm swing amplitudeの変数とした。対称性の尺度としてSymmetrical Index(SI)を用い,体幹の左右平均回旋角度と左右arm swing amplitudeそれぞれのSIの相関係数を算出した。
【結果】arm swing amplitudeと体幹回旋は全被験者で非対称性を認めた。また,13名中10名が全試行を通じて,arm swingと体幹回旋の左右非対称性が同じ傾向を示した。しかし,体幹の左右回旋とarm swingの左右振幅の対称性には有意な相関を認めなかった(相関係数0.2277)。
【結論】Arm swingは健常人の定常歩行であっても前後振幅に左右差があることが先行研究により明らかになっている。肩によって体幹と連結する上肢のswingは体幹回旋運動に影響することが予想され,今回両者の非対称性を持ってその影響を示すことを試みたが,直接の関連性を認めなかった。ただ左右の非対称性が被験者内で一貫していたことから,今回用いた変数以外の因子がarm swingと関与している可能性が考えられる。本研究を踏まえ,さらに歩行におけるarm swingの制御機構が解明されることで,歩行障害に対する理学療法介入の一助となると考える。
【方法】健常成人男性13名を対象に,床反力付きトレッドミル(BERTEC社)にて0.9m/sの速度条件で通常歩行を3試行行った。データ計測は三次元動作解析装置(カメラ17台,VICON社,200Hz)で剛体リンクモデルPlug in gait full body AI modelを用い,39個の反射マーカーの三次元座標を記録した。計測はトレッドミル歩行が定常状態になってから20秒間記録し,うち各試行16歩行周期を解析した。
データから体幹回旋角度と,体重及び上肢マーカー情報により算出した上肢質量中心点(以下COM)のy座標情報を用いてarm swingの前後振幅を得た。左右COMの矢状面上の交点から前後方向のピークまでの距離の累積和を左右それぞれで算出し,arm swing amplitudeの変数とした。対称性の尺度としてSymmetrical Index(SI)を用い,体幹の左右平均回旋角度と左右arm swing amplitudeそれぞれのSIの相関係数を算出した。
【結果】arm swing amplitudeと体幹回旋は全被験者で非対称性を認めた。また,13名中10名が全試行を通じて,arm swingと体幹回旋の左右非対称性が同じ傾向を示した。しかし,体幹の左右回旋とarm swingの左右振幅の対称性には有意な相関を認めなかった(相関係数0.2277)。
【結論】Arm swingは健常人の定常歩行であっても前後振幅に左右差があることが先行研究により明らかになっている。肩によって体幹と連結する上肢のswingは体幹回旋運動に影響することが予想され,今回両者の非対称性を持ってその影響を示すことを試みたが,直接の関連性を認めなかった。ただ左右の非対称性が被験者内で一貫していたことから,今回用いた変数以外の因子がarm swingと関与している可能性が考えられる。本研究を踏まえ,さらに歩行におけるarm swingの制御機構が解明されることで,歩行障害に対する理学療法介入の一助となると考える。