[P-KS-39-4] 衝撃吸収からみた,足部内側縦アーチの適切な評価
キーワード:足部内側縦アーチ, 歩行, 評価
【はじめに,目的】
歩行は,下肢への荷重と非荷重を繰り返しながら身体を前方へ運ぶ動作であり,荷重の受け継ぎは立脚期において重要な課題の1つである。このとき不可欠となるのが衝撃吸収であり,寄与する因子の1つに足部内側縦アーチ(以下,MLA)がある。MLAは特に立脚初期での衝撃吸収に寄与し,MLAが有する機能が果たせないと衝撃吸収が十分に行われないことは容易に推察できる。実際にMLAと障害・疾患との関連が数多く報告されているため,MLAは重要な臨床的指標であり,簡便かつ定量的に評価するために様々な形態学的評価が研究されている。しかしながら,どの評価が適切であるか,衝撃吸収機能の観点からは検討されていない。そこで本研究では,歩行中のMLAの機能を推定するための適切な評価を特定することを目的として,運動力学的観点から検討を行った。
【方法】
被験者は健常若年成人女性25人(年齢:21.7±1.6歳,身長:157.5±4.4cm,体重:50.6±5.8kg)であった。MLAの評価は,座位,立位,片脚立位でのアーチ高率(以下,AHI)とNavicular drop test(以下,NDT)の計4つとした。AHIは舟状骨高を足長で除した値とし,NDTは座位時の舟状骨高から立位時の舟状骨高を引いた値とした。被験者の感じる快適スピードでの歩行の模様を,赤外線カメラ6台と赤外線反射マーカを用いた3次元動作解析システムVicon MX(ViconMotion System社製),8基の床反力計(テック技販社製)により計測した。MLAが衝撃吸収に寄与できているかを判断するためのパラメータに,Loading rate(以下,LR)を用いた。LRは,初期接地から床反力鉛直成分(以下,Fz)の第1ピークに達した瞬間までの時間を100%で時間正規化し,20%時から80%時までのFzの差分を時間で除すことで算出し,その値が大きいほど衝撃吸収の低下を示す。統計学的解析にはSPSS Ver.22.0J(日本アイ・ビー・エム社製)を用いた。得られたデータに対しShapiro-Wilk検定にて正規性を確認した。MLAの評価とLRの相関分析は,データに正規性が認められた場合にはPearsonの積率相関係数を,正規性が認められなった場合にはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
3条件下のAHIの評価とLRの間に有意な相関関係が示されなかったが,NDTとLRとの間には有意な正の相関(0.407,p<0.05)を示した。
【結論】
歩行のように下肢への荷重量が時々刻々と変化する動作を捉えるには,単一姿勢での舟状骨高を基に算出したAHIでは困難であることが推察される。一方,足部への荷重量を変化させて測定するNDTとLRとの間には有意な正の相関を示したことから,NDTの値が高いほど,歩行中の衝撃吸収を十分に行うことができず,MLAの機能が低下していることが示唆された。したがって,歩行中のMLAの機能を捉える評価として,NDTを用いることが有用であると考えられる。
歩行は,下肢への荷重と非荷重を繰り返しながら身体を前方へ運ぶ動作であり,荷重の受け継ぎは立脚期において重要な課題の1つである。このとき不可欠となるのが衝撃吸収であり,寄与する因子の1つに足部内側縦アーチ(以下,MLA)がある。MLAは特に立脚初期での衝撃吸収に寄与し,MLAが有する機能が果たせないと衝撃吸収が十分に行われないことは容易に推察できる。実際にMLAと障害・疾患との関連が数多く報告されているため,MLAは重要な臨床的指標であり,簡便かつ定量的に評価するために様々な形態学的評価が研究されている。しかしながら,どの評価が適切であるか,衝撃吸収機能の観点からは検討されていない。そこで本研究では,歩行中のMLAの機能を推定するための適切な評価を特定することを目的として,運動力学的観点から検討を行った。
【方法】
被験者は健常若年成人女性25人(年齢:21.7±1.6歳,身長:157.5±4.4cm,体重:50.6±5.8kg)であった。MLAの評価は,座位,立位,片脚立位でのアーチ高率(以下,AHI)とNavicular drop test(以下,NDT)の計4つとした。AHIは舟状骨高を足長で除した値とし,NDTは座位時の舟状骨高から立位時の舟状骨高を引いた値とした。被験者の感じる快適スピードでの歩行の模様を,赤外線カメラ6台と赤外線反射マーカを用いた3次元動作解析システムVicon MX(ViconMotion System社製),8基の床反力計(テック技販社製)により計測した。MLAが衝撃吸収に寄与できているかを判断するためのパラメータに,Loading rate(以下,LR)を用いた。LRは,初期接地から床反力鉛直成分(以下,Fz)の第1ピークに達した瞬間までの時間を100%で時間正規化し,20%時から80%時までのFzの差分を時間で除すことで算出し,その値が大きいほど衝撃吸収の低下を示す。統計学的解析にはSPSS Ver.22.0J(日本アイ・ビー・エム社製)を用いた。得られたデータに対しShapiro-Wilk検定にて正規性を確認した。MLAの評価とLRの相関分析は,データに正規性が認められた場合にはPearsonの積率相関係数を,正規性が認められなった場合にはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
3条件下のAHIの評価とLRの間に有意な相関関係が示されなかったが,NDTとLRとの間には有意な正の相関(0.407,p<0.05)を示した。
【結論】
歩行のように下肢への荷重量が時々刻々と変化する動作を捉えるには,単一姿勢での舟状骨高を基に算出したAHIでは困難であることが推察される。一方,足部への荷重量を変化させて測定するNDTとLRとの間には有意な正の相関を示したことから,NDTの値が高いほど,歩行中の衝撃吸収を十分に行うことができず,MLAの機能が低下していることが示唆された。したがって,歩行中のMLAの機能を捉える評価として,NDTを用いることが有用であると考えられる。