[P-KS-40-2] 片脚立位時間が歩行自立の可否に及ぼす影響
~高齢入院患者における検討~
キーワード:片脚立位時間, 歩行自立度, 高齢者
【はじめに,目的】
本研究の目的は,片脚立位時間が歩行自立度に与える影響について検討し,片脚立位保持検査が独歩自立の可否を判別する指標となり得るか否かを明らかにすることである。
【方法】
対象は,65歳以上の高齢入院患者309名(男性165名,女性144名)である。中枢神経疾患や明らかな荷重関節の整形外科的疾患,認知症を有する者は対象から除外した。片脚立位保持検査は,開眼にて両手を腰に当て,一側の下肢を5cm以上挙上するよう指示した。測定は,30秒を上限として左右2回ずつ計測し,最高値を採用した。歩行自立度は,独歩自立群(院内の移動を独歩にて可能)と,非独歩自立群(院内の移動に監視もしくは介助や補助具を要する)の2群に選別した。また,片脚立位時間を2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の5群に区分し,独歩自立例の割合を群ごとに算出した。統計学的解析には,対応のないt検定,χ2検定を用いた。また,Receiver Operating Characteristic曲線(以下,ROC曲線)より,独歩自立のための片脚立位時間のカットオフ値を決定した。いずれも危険率5%を有意水準とした。
【結果】
独歩自立例は187名,非独歩自立例は122名であった。平均片脚立位時間は,独歩自立群,非独歩自立群の順に,16.5±10.9秒,1.7±2.6秒であり,有意差を認めた(p<0.01)。片脚立位時間区分別にみた独歩自立例の割合は,2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の順に,17%,45%,74%,91%,100%であり,片脚立位時間が短いほど有意に低下した(p<0.01)。独歩自立群において片脚立位保持が不能な症例を3名認めた。また,ROC曲線における曲線下面積は0.93(95%CI:0.90-0.96)であり,片脚立位時間は独歩自立の可否を判別する因子であった。感度と特異度の和が最大となる片脚立位時間は,4.3秒であった。4.3秒をカットオフ値とした場合,感度は83%,特異度は88%,陽性的中率は91%,正診率は85%であった。
【結論】
本研究では高齢入院患者を対象として,片脚立位時間が歩行自立度に及ぼす影響について検討した。片脚立位時間が15秒以上では全例が独歩自立していたのに対して,15秒を下回る場合,片脚立位時間の減少にしたがって独歩自立例の割合は減少した。また,ROC曲線解析より算出した独歩自立の可否を判別する片脚立位時間の最適なカットオフ値は4.3秒であり,曲線下面積,感度,特異度,陽性的中率,正診率のいずれも良好な値であった。これらのことより,片脚立位時間は歩行自立度と関連性があり,片脚立位保持検査は独歩自立の可否を判別する有益な指標と考えられた。一方,片脚立位保持が困難な者においても独歩自立例を認めた。以上のことから,片脚立位保持検査は高齢入院患者の歩行自立度を判別する指標となり得るものの,独歩自立の可否をより正確に判別するには下肢筋力測定や他の立位バランス評価を併用する必要があると考えられた。
本研究の目的は,片脚立位時間が歩行自立度に与える影響について検討し,片脚立位保持検査が独歩自立の可否を判別する指標となり得るか否かを明らかにすることである。
【方法】
対象は,65歳以上の高齢入院患者309名(男性165名,女性144名)である。中枢神経疾患や明らかな荷重関節の整形外科的疾患,認知症を有する者は対象から除外した。片脚立位保持検査は,開眼にて両手を腰に当て,一側の下肢を5cm以上挙上するよう指示した。測定は,30秒を上限として左右2回ずつ計測し,最高値を採用した。歩行自立度は,独歩自立群(院内の移動を独歩にて可能)と,非独歩自立群(院内の移動に監視もしくは介助や補助具を要する)の2群に選別した。また,片脚立位時間を2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の5群に区分し,独歩自立例の割合を群ごとに算出した。統計学的解析には,対応のないt検定,χ2検定を用いた。また,Receiver Operating Characteristic曲線(以下,ROC曲線)より,独歩自立のための片脚立位時間のカットオフ値を決定した。いずれも危険率5%を有意水準とした。
【結果】
独歩自立例は187名,非独歩自立例は122名であった。平均片脚立位時間は,独歩自立群,非独歩自立群の順に,16.5±10.9秒,1.7±2.6秒であり,有意差を認めた(p<0.01)。片脚立位時間区分別にみた独歩自立例の割合は,2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の順に,17%,45%,74%,91%,100%であり,片脚立位時間が短いほど有意に低下した(p<0.01)。独歩自立群において片脚立位保持が不能な症例を3名認めた。また,ROC曲線における曲線下面積は0.93(95%CI:0.90-0.96)であり,片脚立位時間は独歩自立の可否を判別する因子であった。感度と特異度の和が最大となる片脚立位時間は,4.3秒であった。4.3秒をカットオフ値とした場合,感度は83%,特異度は88%,陽性的中率は91%,正診率は85%であった。
【結論】
本研究では高齢入院患者を対象として,片脚立位時間が歩行自立度に及ぼす影響について検討した。片脚立位時間が15秒以上では全例が独歩自立していたのに対して,15秒を下回る場合,片脚立位時間の減少にしたがって独歩自立例の割合は減少した。また,ROC曲線解析より算出した独歩自立の可否を判別する片脚立位時間の最適なカットオフ値は4.3秒であり,曲線下面積,感度,特異度,陽性的中率,正診率のいずれも良好な値であった。これらのことより,片脚立位時間は歩行自立度と関連性があり,片脚立位保持検査は独歩自立の可否を判別する有益な指標と考えられた。一方,片脚立位保持が困難な者においても独歩自立例を認めた。以上のことから,片脚立位保持検査は高齢入院患者の歩行自立度を判別する指標となり得るものの,独歩自立の可否をより正確に判別するには下肢筋力測定や他の立位バランス評価を併用する必要があると考えられた。