[P-KS-40-4] 前額面上における姿勢アライメントに着目した高齢者の方向転換動作の分析
Keywords:三次元動作解析, 移動動作, 体幹側屈
【はじめに,目的】方向転換動作には,瞬間的な方向転換と,連続的な方向転換がある。連続的な方向転換動作にはTimed Up and Go test(TUG)等があり,移動能力評価として活用されている。我々はTUG所要時間と課題中の総軌跡長との関連を分析した結果,TUG所要時間が長い高齢者ほど方向転換区間の総軌跡長が長くなる傾向がみられた。そこで今回,前額面上の姿勢アライメントに着目し,高齢者における方向転換動作の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常高齢者19名(対照:健常若年者9名)で,計測課題は最大努力歩行下のTUGとした。計測機器は三次元動作分析装置(VICON612:赤外線カメラ10台)を使用し,赤外線反射マーカーは36点貼付した。頭部・骨盤・左右の足関節中心の位置関係から姿勢を分析するため,身体重心の進行方向に対する前額面上の頭部中心点(Head),骨盤中心点(Pelvis),左右足関節中心点(Ankle)を算出した。また,左右上後腸骨棘の中点(CPSI)を算出し,目印(ソフトコーン)のX座標(左右)通過から方向転換後,目印のX座標(左右)通過までを方向転換区間と定義した。この区間における水平面上のCPSI総軌跡長(総軌跡長),目印とCPSIの距離(曲率半径)を算出した。方向転換時,身体は内方傾斜するが,この身体の傾斜の指標としてHead-Ankleのなす線の傾斜角度(H-A angle)を,体幹側屈の指標としてHead-Pelvisのなす線の傾斜角度(H-P angle)を算出した。H-A angleとH-P angleを比較し,H-P angleの方が小さかった高齢者11名をNormal群(N群),大きかった高齢者8名をTrunk群(T群)と分類した。統計学的処理には,マンホイットニーのU検定を用い,N群とT群における総軌跡長・曲率半径を比較した(有意水準5%未満)。
【結果】若年者の方向転換では,H-A angleよりH-P angleの方が小さく,体幹の側屈は小さかった。また,総軌跡長は平均0.59±0.10m,曲率半径は平均0.18±0.03mであった。N群において,総軌跡長は平均0.71±0.24m,曲率半径は平均0.22±0.08mであった。T群において,総軌跡長は平均0.90±0.26m,曲率半径は平均0.28±0.08mであった。統計の結果,N群とT群における総軌跡長,曲率半径はどちらも有意な差が認められた。
【結論】若年者の方向転換において,H-A angleよりH-P angleの方が小さく,体幹の立ち直りがみられた。N群とT群を比較すると,若年者と同様に体幹の側屈が小さかったN群に比べ,T群では体幹の側屈が大きく,体幹の立ち直りがみられなかった。また,T群では総軌跡長と曲率半径が増大し,大回りの方向転換をする傾向がみられた。このことから方向転換時の前額面上アライメントと方向転換のパフォーマンスとの関連が示唆された。今後,大回りの方向転換になる要因について詳細に分析を進めることによって,TUG所要時間だけでは評価することのできない新たな移動能力評価の指標としての応用を目指したい。
【方法】対象は健常高齢者19名(対照:健常若年者9名)で,計測課題は最大努力歩行下のTUGとした。計測機器は三次元動作分析装置(VICON612:赤外線カメラ10台)を使用し,赤外線反射マーカーは36点貼付した。頭部・骨盤・左右の足関節中心の位置関係から姿勢を分析するため,身体重心の進行方向に対する前額面上の頭部中心点(Head),骨盤中心点(Pelvis),左右足関節中心点(Ankle)を算出した。また,左右上後腸骨棘の中点(CPSI)を算出し,目印(ソフトコーン)のX座標(左右)通過から方向転換後,目印のX座標(左右)通過までを方向転換区間と定義した。この区間における水平面上のCPSI総軌跡長(総軌跡長),目印とCPSIの距離(曲率半径)を算出した。方向転換時,身体は内方傾斜するが,この身体の傾斜の指標としてHead-Ankleのなす線の傾斜角度(H-A angle)を,体幹側屈の指標としてHead-Pelvisのなす線の傾斜角度(H-P angle)を算出した。H-A angleとH-P angleを比較し,H-P angleの方が小さかった高齢者11名をNormal群(N群),大きかった高齢者8名をTrunk群(T群)と分類した。統計学的処理には,マンホイットニーのU検定を用い,N群とT群における総軌跡長・曲率半径を比較した(有意水準5%未満)。
【結果】若年者の方向転換では,H-A angleよりH-P angleの方が小さく,体幹の側屈は小さかった。また,総軌跡長は平均0.59±0.10m,曲率半径は平均0.18±0.03mであった。N群において,総軌跡長は平均0.71±0.24m,曲率半径は平均0.22±0.08mであった。T群において,総軌跡長は平均0.90±0.26m,曲率半径は平均0.28±0.08mであった。統計の結果,N群とT群における総軌跡長,曲率半径はどちらも有意な差が認められた。
【結論】若年者の方向転換において,H-A angleよりH-P angleの方が小さく,体幹の立ち直りがみられた。N群とT群を比較すると,若年者と同様に体幹の側屈が小さかったN群に比べ,T群では体幹の側屈が大きく,体幹の立ち直りがみられなかった。また,T群では総軌跡長と曲率半径が増大し,大回りの方向転換をする傾向がみられた。このことから方向転換時の前額面上アライメントと方向転換のパフォーマンスとの関連が示唆された。今後,大回りの方向転換になる要因について詳細に分析を進めることによって,TUG所要時間だけでは評価することのできない新たな移動能力評価の指標としての応用を目指したい。