[P-KS-41-3] 骨盤傾斜角度が上肢挙上時の背筋活動に及ぼす影響
キーワード:骨盤傾斜角度, 背筋, 筋電図
【はじめに,目的】
椎体圧迫骨折患者に対する理学療法として,脊柱後弯予防・改善を目的とした背筋の筋力増強が推奨されている。立位で上肢挙上位を保持する筋力トレーニングは,臨床上,疼痛が強く立位保持困難な症例に対し端座位で実施する場合が多いが,立位に比べ骨盤後傾位のトレーニングになりやすい。本研究では骨盤傾斜角度が上肢挙上時の背筋の筋活動に及ぼす影響を調査した。
【方法】
対象は整形外科的疾患の既往がなく,指床間距離テストが0cm以下の健常男性10名(年齢23.5±1.9歳,身長173.2±5.5cm,体重65.4±4.0kg)とした。筋電図(以下,EMG)測定はTelemyo DTS(Noraxon U.S.A. Inc.社製,サンプリング周波数1500Hz,計測周波数帯域10~500Hz)を使用し,利き手側の僧帽筋上部,中部,下部線維,腰部脊柱起立筋,多裂筋の5筋に銀塩化銀表面電極を貼付した。また上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線に垂直になるように傾斜計を装着し,骨盤傾斜角度をEMGと同期させた。測定肢位は肩峰-大転子を垂直線上に配列させた股膝関節90度屈曲位の端座位とし,前方のマーカーに合わせて上肢90度挙上位を保持させた。また姿勢評価として第7頸椎-第4胸椎-第7胸椎がなす角を上位胸椎角,第7胸椎-第10胸椎-第1腰椎がなす角を下位胸椎角,第1腰椎-第3腰椎-第2仙椎がなす角を腰椎角とした。測定条件は重錘非装着時における骨盤前傾5度,重錘1kg装着時における前傾5度,後傾5度,後傾15度とした。上肢挙上保持は10秒間とし,測定は3回行い,また休息時間は30秒とした。EMGは生波形を全波整流した後,波形が安定した3秒間を選択し積分値(以下,IEMG)を求めた。さらに重錘装着時の各課題のIEMGを重錘非装着時のIEMGで除し%IEMGを算出した。統計解析は一元配置分散分析および多重比較検定を行い,危険率は5%とした。
【結果】
%IEMGについて僧帽筋上部線維は骨盤前傾5度と比較し後傾15度で有意な増加(137.1-204.7%)を認め,中部線維は骨盤前傾5度と比較し後傾15度で有意な増加(121.7-153.0%)を認めた。また多裂筋は骨盤前傾5度と比較して後傾5度,15度で有意な減少(111.3%-87.6%-70.9%)を認めた。姿勢評価では腰椎角が骨盤後傾に伴い屈曲した。
【結論】
骨盤後傾によって脊柱安定化機構が筋系から靭帯系へ移行するため,骨盤後傾に伴い多裂筋の筋活動は減少し,代償的に僧帽筋上部,中部線維の筋活動が増加した。したがって,端座位での上肢挙上トレーニングは,多裂筋の筋活動が得られにくく肩甲帯周囲筋の過活動を生じさせるため背筋の筋力増強効果は少ない。
椎体圧迫骨折患者に対する理学療法として,脊柱後弯予防・改善を目的とした背筋の筋力増強が推奨されている。立位で上肢挙上位を保持する筋力トレーニングは,臨床上,疼痛が強く立位保持困難な症例に対し端座位で実施する場合が多いが,立位に比べ骨盤後傾位のトレーニングになりやすい。本研究では骨盤傾斜角度が上肢挙上時の背筋の筋活動に及ぼす影響を調査した。
【方法】
対象は整形外科的疾患の既往がなく,指床間距離テストが0cm以下の健常男性10名(年齢23.5±1.9歳,身長173.2±5.5cm,体重65.4±4.0kg)とした。筋電図(以下,EMG)測定はTelemyo DTS(Noraxon U.S.A. Inc.社製,サンプリング周波数1500Hz,計測周波数帯域10~500Hz)を使用し,利き手側の僧帽筋上部,中部,下部線維,腰部脊柱起立筋,多裂筋の5筋に銀塩化銀表面電極を貼付した。また上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線に垂直になるように傾斜計を装着し,骨盤傾斜角度をEMGと同期させた。測定肢位は肩峰-大転子を垂直線上に配列させた股膝関節90度屈曲位の端座位とし,前方のマーカーに合わせて上肢90度挙上位を保持させた。また姿勢評価として第7頸椎-第4胸椎-第7胸椎がなす角を上位胸椎角,第7胸椎-第10胸椎-第1腰椎がなす角を下位胸椎角,第1腰椎-第3腰椎-第2仙椎がなす角を腰椎角とした。測定条件は重錘非装着時における骨盤前傾5度,重錘1kg装着時における前傾5度,後傾5度,後傾15度とした。上肢挙上保持は10秒間とし,測定は3回行い,また休息時間は30秒とした。EMGは生波形を全波整流した後,波形が安定した3秒間を選択し積分値(以下,IEMG)を求めた。さらに重錘装着時の各課題のIEMGを重錘非装着時のIEMGで除し%IEMGを算出した。統計解析は一元配置分散分析および多重比較検定を行い,危険率は5%とした。
【結果】
%IEMGについて僧帽筋上部線維は骨盤前傾5度と比較し後傾15度で有意な増加(137.1-204.7%)を認め,中部線維は骨盤前傾5度と比較し後傾15度で有意な増加(121.7-153.0%)を認めた。また多裂筋は骨盤前傾5度と比較して後傾5度,15度で有意な減少(111.3%-87.6%-70.9%)を認めた。姿勢評価では腰椎角が骨盤後傾に伴い屈曲した。
【結論】
骨盤後傾によって脊柱安定化機構が筋系から靭帯系へ移行するため,骨盤後傾に伴い多裂筋の筋活動は減少し,代償的に僧帽筋上部,中部線維の筋活動が増加した。したがって,端座位での上肢挙上トレーニングは,多裂筋の筋活動が得られにくく肩甲帯周囲筋の過活動を生じさせるため背筋の筋力増強効果は少ない。