第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P41

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-41-4] 有訴部位からみた肩こりに対する疼痛発生因子の検討

西野雄大1, 増田一太1, 笠野由布子2 (1.いえだ整形外科リハビリクリニックリハビリテーション科, 2.中部学院大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

Keywords:肩こり, 頚椎アライメント, 肩甲背神経

【はじめに,目的】

肩こりは様々な定義が提唱されており,その多くは「後頭部から肩,肩甲部」にかけての範囲での症状を指す。また我が国における肩こり有訴者は欧米に比べ非常に多いが,肩こり自覚度と筋硬度の関係性は無いとの報告もあり,その病因は十分に解明されているとはいえない。そして,先行研究により肩こりの定義内には肩甲背神経由来の肩甲背部痛が包括されている可能性を報告した。そこで今回,肩こりの有訴症状の部位を分類し,それぞれの疼痛発生メカニズムを検討したので報告する。

【方法】

対象は平成26年12月~平成27年9月までに来院した椎間関節症および神経原性疾患が否定された「本態性肩こり」の症状を有する23名とした。平均年齢は57.3±16.7歳であった。有訴部位により頚部から肩甲上部の範囲の疼痛を主訴とする群(以下,U群)と肩甲背部痛群(以下,S群)で分類した。測定内容はVisual analogue scale,頚部・肩甲骨周囲筋の圧痛,頚椎・胸椎ROM,肩峰床面距離,X線画像により頚椎前弯距離,C2-7角,鎖骨の傾き,なで肩の有無を確認した。圧痛・なで肩の有無に対してはカイ二乗検定を,その他の項目の比較には対応のないt検定を実施した。さらに上位項目に対してステップワイズ法による判別分析を用いて疼痛要因を分析した。統計学的処理の有意水準は5%未満とした。

【結果】

U群と比較してS群において中斜角筋の圧痛に有意差を認めた(p<0.05)。また頚椎前弯距離,C2-7角においても2群間で有意差を認めた(p<0.05)。判別分析ではU群の発症に強く関連する因子は頚椎前弯距離,C2-7角,頚椎伸展可動域,なで肩,S群は頚椎前弯距離,C2-7角,頚椎伸展可動域,中斜角筋であった。

【結論】

肩こりの有訴部位の違いを検討したところU群17名,S群6名に分類され,3:1の比率でU群が多かった。本研究の結果から頚椎前弯距離,C2-7角,頚椎伸展可動域,なで肩,斜角筋が2群間で有意な関係性を認めた。U群はS群に比べてストレートネックやなで肩が多く,竹井やHarrisonらの報告を裏付ける結果であった。そのため肩甲挙筋を中心とした頚部伸筋群の緊張が高まり頚部から肩甲上部の範囲の疼痛が発生したと考えられた。一方,S群は頚椎前弯が正常よりも増強傾向であり,なで肩が有意に少なかったためU群に比べて下位頚椎と第1肋骨との距離が短縮し,中斜角筋の筋活動量が増大しやすい。また中斜角筋は頚椎伸展位で伸張されるため,頚椎伸展時には同筋の過活動が助長され肩甲背部痛が発生したと考えられた。本研究により,一般的な肩こりの定義内での頚部から肩甲上部の範囲での疼痛には頚椎アライメントやなで肩の有無が関与し,肩甲背部痛には中斜角筋での肩甲背神経のentrapment neuropathyが関与する可能性が示唆された。