[P-KS-41-5] 日常生活動作である挙手の利き手と非利き手の肩甲上腕リズムと筋活動
―三次元動作解析装置とテレメトリー筋電計を用いた検討―
Keywords:肩関節, 肩甲上腕リズム, 表面筋電図
【はじめに,目的】
上肢挙上に関する多くの研究は,肩甲骨面において肘関節伸展位で挙上(挙上)している。しかし,日常生活でよくみられる動作は,上肢を肘関節屈曲から伸展しながら挙げる運動(挙手)である。本研究の目的は,挙手における利き手と非利き手間において,肩甲上腕リズム(SHR)と肩甲骨周囲筋の筋活動ついて違いがあるか調査することである。
【方法】
肩痛の既往がない健常成人 男性15名,平均年齢24歳(19~30歳)を対象とした。体表マーカーは,烏口突起,肩峰角,肩甲棘内縁,上腕骨外側および内側上顆,Th2,Th7及びL5棘突起に挙手動作の中間位で触知し体表に貼付した。測定は,基本的立位姿勢から挙手を利き手と非利き手を自然に3秒間で最大となるように3回試行した。その画像データを三次元動作解析装置で取り込み解析した。筋電図は,三角筋中部線維(DM),僧帽筋上部線維(TU),僧帽筋下部線維(TL)及び前鋸筋下部線維(SA)上の皮膚表面を前処理して表面電極を貼付し,運動中にテレメトリー筋電計を用いて取り込み,三次元動作解析装置と同期した後,多用途生体情報解析システムを用いて解析した。SHRは上腕骨外転角度と肩甲骨上方回旋角度から算出した。筋電図は0度から10度ごとに抽出し,各波形はフィルタ処理,基線算出したのち振幅積分を行い各角度間の筋電図積分値を求めた。4筋の積分筋電図を比較するため,上腕骨外転角度100~110度における4筋の積分値を合計し,各筋の角度間の積分値を除して百分率(%IEMG)で表した。各筋の0度から130度まで10度毎の%IEMGの変化を比較した。統計解析はIBM SPSS Statistics 22を使用し,反復測定の分散分析(P<0.05)を用いた。
【結果】
挙手動作におけるSHRは,setting phaseとされている0~60度までは不安定で数値が安定せず,また安定した60~130度では利き手側平均3.4非利き手側平均3.2であり有意な差はなかった。筋活動においては,利き手側と非利き手側ではTUに有意な差があり交互作用がみられた。TUの利き手側筋活動は非利き手側に比較して挙手動作の初期から100度まで高く110~130度で逆転して利き手側が高くなる傾向がみられた。DM,TLおよびSAでは有意な差がなかった。
【結論】
挙手におけるSHRの解析では,利き手側と非利き手側では差がないが,筋活動ではTUは上腕骨外転角度の増加に伴いの%IEMGパターンに差があり交互作用がみられた。従って,挙手動作では,関節可動域の評価において利き手と非利き手または左右の比較を行うことは妥当であることが推察される。しかし,筋活動は,利き手側と非利き手側においてTUに差があっり,一概に両腕を同一とみて比較することはできないことが示唆された。今後は,棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋について調査し,setting phaseと個人差についての詳細な検討が必要である。
上肢挙上に関する多くの研究は,肩甲骨面において肘関節伸展位で挙上(挙上)している。しかし,日常生活でよくみられる動作は,上肢を肘関節屈曲から伸展しながら挙げる運動(挙手)である。本研究の目的は,挙手における利き手と非利き手間において,肩甲上腕リズム(SHR)と肩甲骨周囲筋の筋活動ついて違いがあるか調査することである。
【方法】
肩痛の既往がない健常成人 男性15名,平均年齢24歳(19~30歳)を対象とした。体表マーカーは,烏口突起,肩峰角,肩甲棘内縁,上腕骨外側および内側上顆,Th2,Th7及びL5棘突起に挙手動作の中間位で触知し体表に貼付した。測定は,基本的立位姿勢から挙手を利き手と非利き手を自然に3秒間で最大となるように3回試行した。その画像データを三次元動作解析装置で取り込み解析した。筋電図は,三角筋中部線維(DM),僧帽筋上部線維(TU),僧帽筋下部線維(TL)及び前鋸筋下部線維(SA)上の皮膚表面を前処理して表面電極を貼付し,運動中にテレメトリー筋電計を用いて取り込み,三次元動作解析装置と同期した後,多用途生体情報解析システムを用いて解析した。SHRは上腕骨外転角度と肩甲骨上方回旋角度から算出した。筋電図は0度から10度ごとに抽出し,各波形はフィルタ処理,基線算出したのち振幅積分を行い各角度間の筋電図積分値を求めた。4筋の積分筋電図を比較するため,上腕骨外転角度100~110度における4筋の積分値を合計し,各筋の角度間の積分値を除して百分率(%IEMG)で表した。各筋の0度から130度まで10度毎の%IEMGの変化を比較した。統計解析はIBM SPSS Statistics 22を使用し,反復測定の分散分析(P<0.05)を用いた。
【結果】
挙手動作におけるSHRは,setting phaseとされている0~60度までは不安定で数値が安定せず,また安定した60~130度では利き手側平均3.4非利き手側平均3.2であり有意な差はなかった。筋活動においては,利き手側と非利き手側ではTUに有意な差があり交互作用がみられた。TUの利き手側筋活動は非利き手側に比較して挙手動作の初期から100度まで高く110~130度で逆転して利き手側が高くなる傾向がみられた。DM,TLおよびSAでは有意な差がなかった。
【結論】
挙手におけるSHRの解析では,利き手側と非利き手側では差がないが,筋活動ではTUは上腕骨外転角度の増加に伴いの%IEMGパターンに差があり交互作用がみられた。従って,挙手動作では,関節可動域の評価において利き手と非利き手または左右の比較を行うことは妥当であることが推察される。しかし,筋活動は,利き手側と非利き手側においてTUに差があっり,一概に両腕を同一とみて比較することはできないことが示唆された。今後は,棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋について調査し,setting phaseと個人差についての詳細な検討が必要である。