[P-KS-42-2] 二重課題条件下における最小つま先距離に関連する下肢関節角度についての検討
キーワード:二重課題, 最少つま先距離, 下肢関節角度
【はじめに,目的】
日常生活では外部環境に注意を向けながら動作を遂行しなければならず,注意機能がつまずき動作に強く影響していることが示唆されている。そこで,本研究では若年者および高齢者での二重課題条件で最小つま先距離(minimum toe clearance:MTC)に関連する下肢関節角度について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常若年者15名(男性8名,女性7名,20.5±1.3歳)と健常高齢者15名(男性8名,女性7名,68.6±4.9歳)とした。3次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics社製)を用い,通常の歩行(single task:ST)を3回実施した。その後,ディスプレイに映写された1桁の足し算を解答しながら歩行する(dual task:DT)を3回施行した。被検足は非利き足として,歩行中のMTC(立脚側と遊脚側の爪先が矢状面上で揃う時点の遊脚側母趾の床からの距離),股関節,膝関節,足関節,骨盤の矢状面上の関節角度を抽出し,各群で平均値を求めSTとDT時における若年者と高齢者の下肢関節角度変化を検討した。MTCは抽出する歩行周期は遊脚中期(mid swing:MSw),遊脚初期(initial swing:ISw),前遊脚期(pre swing:PSw),立脚後期(terminal stance:TS)とした。統計学的処理として,STとDTのMTCを対応のあるt検定を用いて比較した。さらにMTCと各期における下肢関節角度の関連性について,Shapiro-Wilk検定を行い,正規性が認められればPearsonの積率相関係数を用い,正規性が認められなければSpearmanの順位相関係数を用いて,ST,DTそれぞれで検討した。すべて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
若年者においてDTのMTCはSTに比べて有意に低下した(p<0.0001)。若年者のSTにおけるMTCでは,MSw(r=0.43,p<0.05),ISw(r=0.50,p<0.005),PSw(r=0.56,p<0.001)の膝関節屈曲,PSw(r=0.46,p<0.05)の股関節伸展,TS(r=0.39,p<0.05)の足関節背屈と有意な正の相関関係が認められた。DTではMSw(r=0.52,p<0.005),ISw(r=0.43,p<0.05),PSw(r=0.41,p<0.05)にかけて膝関節屈曲に正の相関関係が認められた。一方,高齢者のSTではISw(r=-0.45,p<0.05)での骨盤前傾にのみ負の相関関係が認められた。DTではMSw(r=-0.63,p<0.001),ISw(r=-0.60,p<0.005)PSw(r=0.65,p<0.001)まで骨盤前傾に負の相関関係が認められ,TS(r=-0.45,p<0.05,r=-0.62,p<0.001)では股関節伸展,骨盤前傾に負の相関関係が認められた。
【結論】
若年者ではDTによって立脚期での股関節伸展や足関節背屈角度が減少するのに対し,高齢者では骨盤の前傾角度の増大がMTCの高さに負の影響を及ぼす可能性が示された。本研究の結果から,前方で提示される計算課題によって注意が分配されることで,若年者と高齢者の歩行ではMTCに影響を及ぼす下肢関節角度は異なることが示された。
日常生活では外部環境に注意を向けながら動作を遂行しなければならず,注意機能がつまずき動作に強く影響していることが示唆されている。そこで,本研究では若年者および高齢者での二重課題条件で最小つま先距離(minimum toe clearance:MTC)に関連する下肢関節角度について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常若年者15名(男性8名,女性7名,20.5±1.3歳)と健常高齢者15名(男性8名,女性7名,68.6±4.9歳)とした。3次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics社製)を用い,通常の歩行(single task:ST)を3回実施した。その後,ディスプレイに映写された1桁の足し算を解答しながら歩行する(dual task:DT)を3回施行した。被検足は非利き足として,歩行中のMTC(立脚側と遊脚側の爪先が矢状面上で揃う時点の遊脚側母趾の床からの距離),股関節,膝関節,足関節,骨盤の矢状面上の関節角度を抽出し,各群で平均値を求めSTとDT時における若年者と高齢者の下肢関節角度変化を検討した。MTCは抽出する歩行周期は遊脚中期(mid swing:MSw),遊脚初期(initial swing:ISw),前遊脚期(pre swing:PSw),立脚後期(terminal stance:TS)とした。統計学的処理として,STとDTのMTCを対応のあるt検定を用いて比較した。さらにMTCと各期における下肢関節角度の関連性について,Shapiro-Wilk検定を行い,正規性が認められればPearsonの積率相関係数を用い,正規性が認められなければSpearmanの順位相関係数を用いて,ST,DTそれぞれで検討した。すべて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
若年者においてDTのMTCはSTに比べて有意に低下した(p<0.0001)。若年者のSTにおけるMTCでは,MSw(r=0.43,p<0.05),ISw(r=0.50,p<0.005),PSw(r=0.56,p<0.001)の膝関節屈曲,PSw(r=0.46,p<0.05)の股関節伸展,TS(r=0.39,p<0.05)の足関節背屈と有意な正の相関関係が認められた。DTではMSw(r=0.52,p<0.005),ISw(r=0.43,p<0.05),PSw(r=0.41,p<0.05)にかけて膝関節屈曲に正の相関関係が認められた。一方,高齢者のSTではISw(r=-0.45,p<0.05)での骨盤前傾にのみ負の相関関係が認められた。DTではMSw(r=-0.63,p<0.001),ISw(r=-0.60,p<0.005)PSw(r=0.65,p<0.001)まで骨盤前傾に負の相関関係が認められ,TS(r=-0.45,p<0.05,r=-0.62,p<0.001)では股関節伸展,骨盤前傾に負の相関関係が認められた。
【結論】
若年者ではDTによって立脚期での股関節伸展や足関節背屈角度が減少するのに対し,高齢者では骨盤の前傾角度の増大がMTCの高さに負の影響を及ぼす可能性が示された。本研究の結果から,前方で提示される計算課題によって注意が分配されることで,若年者と高齢者の歩行ではMTCに影響を及ぼす下肢関節角度は異なることが示された。