[P-KS-43-2] 骨盤回旋が下位胸郭形状および胸郭位置に与える影響
キーワード:左右骨盤回旋, 胸郭形状, 胸郭位置
【はじめに,目的】
胸郭は骨盤上に位置しているため,骨盤肢位や運動は胸郭アライメントに影響を及ぼす。臨床上,骨盤回旋時に胸郭形状が変化し,これにより胸郭の位置変化が生じることを経験する。これは,骨盤回旋の動きが腰椎を介して胸椎の配列に変化を与えた結果であると捉えている。そこで本研究の目的は,骨盤回旋が胸郭形状と胸郭位置に与える変化を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,健常成人男性10名(平均年齢25.2±3.5歳)とした。骨盤回旋時の骨盤・胸郭の動きの計測に三次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。赤外線反射マーカー貼付位置は,剣状突起(A点),第10胸椎棘突起(B点),B点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,左右各3点),骨盤と胸郭セグメントを定義するために左右上前腸骨棘,左右上後腸骨棘,頚切痕,第1胸椎棘突起の計14点とした。下位胸郭前後径をA-C点間の距離として算出し,左右それぞれ総和に対する比率を算出した。測定肢位は,回転板上に骨盤前後傾0°で両手を組んだ端座位とした。測定課題は,安静呼気位においてメトロノームに合わせて7秒間回転板を他動的に回すこととし,回転範囲として同側への体幹回旋の代償が起きる前までの範囲とした。測定条件として胸郭位置を前額面に対し平行に保持させるよう両肩峰前に障害物を設置し,被験者の目線の高さに設置した前方の指標を注視するよう指示した。測定実施前に,数度練習し習熟させてから測定した。なお,骨盤セグメントが安静時から左右5°回旋位での下位胸郭前後径と胸郭中心位置を算出した。各値は,左右骨盤回旋3施行のそれぞれ平均値を解析値とした。
統計処理は,安静時の下位胸郭前後径左右比率を対応のないt検定で,骨盤左右回旋課題の比較を対応のあるt検定を用いて検討した。解析には統計ソフトウェアIBM SPSS Statistics 21(IBM社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
安静時の下位胸郭前後径は左側に比べ右側で有意に大きかった(p<0.01)。また,安静時に比べて骨盤右回旋では下位胸郭前後径の左右差が有意に増大,左回旋時では有意に減少した(p<0.01)。また,骨盤右回旋時の胸郭中心位置は骨盤左回旋に比べ,有意に後方へ移動した(p<0.01)。
【結論】
本研究結果から下位胸郭形状は定型的な左右非対称性を呈しており,骨盤右回旋で胸郭形状の非対称性が増大して胸郭位置が後方化した。これは骨盤を右回旋させることで寛骨と仙骨の位置関係から胸腰椎の配列により強い捻れが生じ,胸郭形状の非対称性が強まる。この捻れが脊柱の屈曲を生じさせることで胸郭位置が後方化したことが示唆される。そして骨盤左回旋では逆の現象が生じていることが考えられる。以上のことから,左右骨盤回旋でそれぞれ胸郭形状と胸郭位置変化に異なる変化が生じることが分かり,この運動特性を加味した理学療法が重要であると考える。
胸郭は骨盤上に位置しているため,骨盤肢位や運動は胸郭アライメントに影響を及ぼす。臨床上,骨盤回旋時に胸郭形状が変化し,これにより胸郭の位置変化が生じることを経験する。これは,骨盤回旋の動きが腰椎を介して胸椎の配列に変化を与えた結果であると捉えている。そこで本研究の目的は,骨盤回旋が胸郭形状と胸郭位置に与える変化を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,健常成人男性10名(平均年齢25.2±3.5歳)とした。骨盤回旋時の骨盤・胸郭の動きの計測に三次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。赤外線反射マーカー貼付位置は,剣状突起(A点),第10胸椎棘突起(B点),B点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,左右各3点),骨盤と胸郭セグメントを定義するために左右上前腸骨棘,左右上後腸骨棘,頚切痕,第1胸椎棘突起の計14点とした。下位胸郭前後径をA-C点間の距離として算出し,左右それぞれ総和に対する比率を算出した。測定肢位は,回転板上に骨盤前後傾0°で両手を組んだ端座位とした。測定課題は,安静呼気位においてメトロノームに合わせて7秒間回転板を他動的に回すこととし,回転範囲として同側への体幹回旋の代償が起きる前までの範囲とした。測定条件として胸郭位置を前額面に対し平行に保持させるよう両肩峰前に障害物を設置し,被験者の目線の高さに設置した前方の指標を注視するよう指示した。測定実施前に,数度練習し習熟させてから測定した。なお,骨盤セグメントが安静時から左右5°回旋位での下位胸郭前後径と胸郭中心位置を算出した。各値は,左右骨盤回旋3施行のそれぞれ平均値を解析値とした。
統計処理は,安静時の下位胸郭前後径左右比率を対応のないt検定で,骨盤左右回旋課題の比較を対応のあるt検定を用いて検討した。解析には統計ソフトウェアIBM SPSS Statistics 21(IBM社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
安静時の下位胸郭前後径は左側に比べ右側で有意に大きかった(p<0.01)。また,安静時に比べて骨盤右回旋では下位胸郭前後径の左右差が有意に増大,左回旋時では有意に減少した(p<0.01)。また,骨盤右回旋時の胸郭中心位置は骨盤左回旋に比べ,有意に後方へ移動した(p<0.01)。
【結論】
本研究結果から下位胸郭形状は定型的な左右非対称性を呈しており,骨盤右回旋で胸郭形状の非対称性が増大して胸郭位置が後方化した。これは骨盤を右回旋させることで寛骨と仙骨の位置関係から胸腰椎の配列により強い捻れが生じ,胸郭形状の非対称性が強まる。この捻れが脊柱の屈曲を生じさせることで胸郭位置が後方化したことが示唆される。そして骨盤左回旋では逆の現象が生じていることが考えられる。以上のことから,左右骨盤回旋でそれぞれ胸郭形状と胸郭位置変化に異なる変化が生じることが分かり,この運動特性を加味した理学療法が重要であると考える。