[P-KS-43-4] 不安定板上座位での体幹セグメント間協調性の定量化の試み
健常若年者・健常高齢者・小脳性運動失調者での比較
キーワード:協調性, 体幹, 不安定板
【はじめに,目的】
小脳性運動失調者は歩行障害を含む協調性障害を呈することが一般的である。歩行障害は主に体幹の協調性障害を反映されると考えられているが,体幹の協調性障害に対して利用可能な評価法は乏しい。そこで本研究の目的は,不安定板上での体幹セグメント間協調性を定量化するために,上下部体幹の角度変位の相関係数を算出し,年齢や病態,不安定板傾斜の加速度,パフォーマンスとの関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年者6名(24.7±3.9歳),健常高齢者7名(63.9±3.7歳),小脳性運動失調者6名(58.2±2.3歳)とした。測定条件は被験者の身体に三軸モーションセンサー(NORAXON,MYOMOTION)を4ヶ所(後頭隆起,第3胸椎,第3腰椎,不安定板),表面筋電図計(NORAXON,MYOMUSCLE)を8ヶ所(左右の僧帽筋,胸部・腰部傍脊柱筋,内外腹斜筋重複部位)に貼付し,側方方向の一軸性不安定板(Tumble Forms2Ⓡ,PC-4811)上に足底非接地での端座位とした。測定課題は,不安定板上での静的課題と動的課題(メトロノーム50bpmに合わせた側方随意的傾斜)の2条件を各30秒間,3試行実施した。主要評価項目として,側方方向の角度データから上下部体幹間の相互相関係数を算出した。副次評価項目として,不安定板傾斜の安定性あるいは円滑性として不安定板側方加速度root mean square(以下,RMS),左右対となる筋間の活動波形相関,Trunk Impairment Scale,歩行速度と変動係数,Scale for the assessment and rating of ataxiaと軀幹協調機能ステージを評価した。得られた結果から,体幹セグメント間協調性,不安定板側方加速度RMS,筋電図データについてグループ間での差を一元配置分散分析,主要および副次評価項目の関連をPearsonの積率相関係数あるいはSpearmanの順位相関係数で分析した。さらに特徴的な変数に基づきクラスター分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
静的課題では全指標で群間差を認めなかった。動的課題では,体幹セグメント間協調性において健常若年者が他群よりも有意に体幹セグメント間の逆相関がみられた。不安定板側方加速度RMSは健常高齢者と比較して小脳性運動失調者で有意に高かった。左右対の筋活動の相関係数は,胸部傍脊柱筋のみ健常若年者で他群よりも有意に逆相関を示した。体幹セグメント間協調性と不安定板側方加速度RMSの二変量についてのクラスター分析では,概ね各対象者群にしたがった分布を示した。小脳性運動失調者での体幹セグメント間協調性と副次評価項目との相関は認めなかった。
【結論】
上下部体幹セグメント間の逆方向の角度変位は加齢により減少し,不安定板傾斜は小脳性運動失調者で円滑性の低下を認めた。この二変量に基づいて3群は良好に分類可能であった。
小脳性運動失調者は歩行障害を含む協調性障害を呈することが一般的である。歩行障害は主に体幹の協調性障害を反映されると考えられているが,体幹の協調性障害に対して利用可能な評価法は乏しい。そこで本研究の目的は,不安定板上での体幹セグメント間協調性を定量化するために,上下部体幹の角度変位の相関係数を算出し,年齢や病態,不安定板傾斜の加速度,パフォーマンスとの関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年者6名(24.7±3.9歳),健常高齢者7名(63.9±3.7歳),小脳性運動失調者6名(58.2±2.3歳)とした。測定条件は被験者の身体に三軸モーションセンサー(NORAXON,MYOMOTION)を4ヶ所(後頭隆起,第3胸椎,第3腰椎,不安定板),表面筋電図計(NORAXON,MYOMUSCLE)を8ヶ所(左右の僧帽筋,胸部・腰部傍脊柱筋,内外腹斜筋重複部位)に貼付し,側方方向の一軸性不安定板(Tumble Forms2Ⓡ,PC-4811)上に足底非接地での端座位とした。測定課題は,不安定板上での静的課題と動的課題(メトロノーム50bpmに合わせた側方随意的傾斜)の2条件を各30秒間,3試行実施した。主要評価項目として,側方方向の角度データから上下部体幹間の相互相関係数を算出した。副次評価項目として,不安定板傾斜の安定性あるいは円滑性として不安定板側方加速度root mean square(以下,RMS),左右対となる筋間の活動波形相関,Trunk Impairment Scale,歩行速度と変動係数,Scale for the assessment and rating of ataxiaと軀幹協調機能ステージを評価した。得られた結果から,体幹セグメント間協調性,不安定板側方加速度RMS,筋電図データについてグループ間での差を一元配置分散分析,主要および副次評価項目の関連をPearsonの積率相関係数あるいはSpearmanの順位相関係数で分析した。さらに特徴的な変数に基づきクラスター分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
静的課題では全指標で群間差を認めなかった。動的課題では,体幹セグメント間協調性において健常若年者が他群よりも有意に体幹セグメント間の逆相関がみられた。不安定板側方加速度RMSは健常高齢者と比較して小脳性運動失調者で有意に高かった。左右対の筋活動の相関係数は,胸部傍脊柱筋のみ健常若年者で他群よりも有意に逆相関を示した。体幹セグメント間協調性と不安定板側方加速度RMSの二変量についてのクラスター分析では,概ね各対象者群にしたがった分布を示した。小脳性運動失調者での体幹セグメント間協調性と副次評価項目との相関は認めなかった。
【結論】
上下部体幹セグメント間の逆方向の角度変位は加齢により減少し,不安定板傾斜は小脳性運動失調者で円滑性の低下を認めた。この二変量に基づいて3群は良好に分類可能であった。