[P-KS-43-5] 骨盤前後傾運動における胸郭-骨盤間の運動学的解析
Keywords:骨盤前後傾, 水平面運動, 運動パターン
【はじめに,目的】
骨盤前後傾運動の機能評価において胸郭-骨盤間の水平面運動を注意深く観察すると,前後傾運動に伴った運動パターンが存在する。これらのベースには,我々の研究で明らかになってきているヒトに見られる特徴的な胸郭形状の非対称性2015)や左側方偏位2012)が存在し,それぞれの運動に影響を及ぼしているものと推測している。骨盤と胸郭は脊柱やそれらに関係を持つ筋群によりお互いに影響を及ぼし,体幹の安定に関わる大きな要因となるため,各運動に応じた胸郭-骨盤間の位置関係を適切に把握することは重要である。
そこで本研究では,健常成人における骨盤前傾および後傾運動に伴う胸郭-骨盤間の水平面運動を観察することで,個人間に共通した水平面運動パターンを理解することを目的とした。
【方法】
対象は既往のない健常成人男性17名(平均年齢26.7±3.4歳)とした。測定肢位は頸部後方で棒を支持した端座位とした。課題動作は視線を前方へ注視させた腰部主体の骨盤前傾・後傾運動とした。計測には3次元動作解析装置(VICON-MX,VICON社)を用い,胸郭セグメントと骨盤セグメントの水平面角度を算出した。胸郭セグメントは剣状突起,剣状突起を背面に投影した棘突起上の点,剣状突起から左右それぞれ等間隔に位置する点にマーカーを貼付した。また,骨盤セグメントは両上前腸骨棘,両上後腸骨棘にマーカーを貼付し,それぞれセグメントを作成した。開始肢位,前傾15°,後傾15°での骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度をそれぞれ算出し,3回実施した平均値を代表値とした。
統計処理は開始肢位と骨盤前傾位,後傾位における骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度をそれぞれ対応のあるt検定を用いて比較検討した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度は,前傾運動において開始肢位と比較し前傾位で右回旋角度が増大し(p<0.05),後傾運動においては開始肢位と比較し後傾位で左回旋角度が増大した(p<0.01)。
【結論】
本研究結果より骨盤の矢状面運動は体幹との協調的な水平面運動を生じさせ,特徴的な運動パターンを形成することが示唆された。この現象は,測定肢位による違いがあるもののFujiharaら2013)の報告と類似するものであり,脊柱屈伸運動に伴った水平面上の運動パターンが存在するものと考える。以上のことから,骨盤前傾運動では体幹の右回旋,骨盤後傾運動では体幹の左回旋を産生する活動が関与し,これらは効率よく動作を遂行するための運動パターンであると考える。
よって今回得られた結果は,体幹の不安定性を呈する疾患に対する基準値となりえ,体幹の不安定性を定量化できる評価として臨床に活用できる可能性があると考える。
骨盤前後傾運動の機能評価において胸郭-骨盤間の水平面運動を注意深く観察すると,前後傾運動に伴った運動パターンが存在する。これらのベースには,我々の研究で明らかになってきているヒトに見られる特徴的な胸郭形状の非対称性2015)や左側方偏位2012)が存在し,それぞれの運動に影響を及ぼしているものと推測している。骨盤と胸郭は脊柱やそれらに関係を持つ筋群によりお互いに影響を及ぼし,体幹の安定に関わる大きな要因となるため,各運動に応じた胸郭-骨盤間の位置関係を適切に把握することは重要である。
そこで本研究では,健常成人における骨盤前傾および後傾運動に伴う胸郭-骨盤間の水平面運動を観察することで,個人間に共通した水平面運動パターンを理解することを目的とした。
【方法】
対象は既往のない健常成人男性17名(平均年齢26.7±3.4歳)とした。測定肢位は頸部後方で棒を支持した端座位とした。課題動作は視線を前方へ注視させた腰部主体の骨盤前傾・後傾運動とした。計測には3次元動作解析装置(VICON-MX,VICON社)を用い,胸郭セグメントと骨盤セグメントの水平面角度を算出した。胸郭セグメントは剣状突起,剣状突起を背面に投影した棘突起上の点,剣状突起から左右それぞれ等間隔に位置する点にマーカーを貼付した。また,骨盤セグメントは両上前腸骨棘,両上後腸骨棘にマーカーを貼付し,それぞれセグメントを作成した。開始肢位,前傾15°,後傾15°での骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度をそれぞれ算出し,3回実施した平均値を代表値とした。
統計処理は開始肢位と骨盤前傾位,後傾位における骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度をそれぞれ対応のあるt検定を用いて比較検討した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
骨盤セグメントに対する胸郭セグメントの水平面角度は,前傾運動において開始肢位と比較し前傾位で右回旋角度が増大し(p<0.05),後傾運動においては開始肢位と比較し後傾位で左回旋角度が増大した(p<0.01)。
【結論】
本研究結果より骨盤の矢状面運動は体幹との協調的な水平面運動を生じさせ,特徴的な運動パターンを形成することが示唆された。この現象は,測定肢位による違いがあるもののFujiharaら2013)の報告と類似するものであり,脊柱屈伸運動に伴った水平面上の運動パターンが存在するものと考える。以上のことから,骨盤前傾運動では体幹の右回旋,骨盤後傾運動では体幹の左回旋を産生する活動が関与し,これらは効率よく動作を遂行するための運動パターンであると考える。
よって今回得られた結果は,体幹の不安定性を呈する疾患に対する基準値となりえ,体幹の不安定性を定量化できる評価として臨床に活用できる可能性があると考える。