[P-KS-44-1] 外側広筋の動態と筋硬度・圧痛の関係
筋の動態は何の影響を受けるのか?
Keywords:超音波画像診断装置, 外側広筋, 滑走性
【はじめに,目的】
外側広筋(VL)の滑走性の低下は,膝屈曲可動域制限や,VLの伸張性の低下を惹起するため,臨床上問題となるが,その計測手法は確立されていない。一方,超音波画像診断装置(US)は,運動器の形態や動態を高い再現性のもと計測できる(佐藤,2015)。我々は膝自動屈曲に伴い,VLが後内側に滑走することを示している(中村,2015)が,この動態が筋の硬度や張力,疲労など,どのような要素を反映しているかは不明である。我々はVLの動態に合わせた徒手的操作により,VLの伸張性や圧痛と共に,筋の動態が改善することを明らかにしている(中村,2015)。そこでVLの動態には筋硬度や圧痛が関係していると仮説を立てた。本研究の目的はVLの膝屈曲運動時の動態が筋の柔軟性や圧痛を反映しているか検討することである。
【方法】
健常成人男性20名40肢(平均年齢20.0±2.3歳,身長167.4±5.8cm,体重59.9±6.9kg)とした。USにはMy-Lab25を用い,自動屈曲運動時のVLの後内側への変位量(VL変位量)を計測した。測定モードはBモード,リニアプローブを用い,腹臥位にて大腿中央外側にてVLと大腿二頭筋を短軸走査で確認し,プローブを固定した。膝関節完全伸展位から90度屈曲位までの自動運動中のエコー動画から,完全伸展位と90度屈曲位の画像を抽出しVL外側端が移動した距離をVL変位量としてImage-Jを用いて計測した。また筋硬度,圧痛を大腿中央外側にてそれぞれ筋硬度計,圧痛計を用いて計測した。さらに,自作した装置に徒手筋力測定器を設置し,膝他動屈曲時の抵抗力(以下,抗力)を測定した。VL変位量と筋硬度,圧痛,抗力の関係性を検討した。統計学的処理にはR2.8.1を使用し,Spearmanの順位相関係数(有意水準5%未満)を用いた。
【結果】
VL変位量と抗力はr=0.51と有意な相関関係を認めた。またVL変位量と筋硬度はr=0.71と有意な相関関係を認めた。一方,VLの動態と圧痛は有意な相関関係を認めなかった。
【結論】
本研究の結果,VL変位量はVLの筋硬度を反映するが,圧痛の程度は反映しないものと考えられた。抗力は筋の長軸上に発生する弾性力を示すのに対して,筋硬度計による計測は,筋以外の皮下組織や皮膚の硬度も反映する(Ichikawa, 2015)。我々の先行研究では,大腿外側の筋硬度計を用いた計測は,VLの硬度と相関を認めず,周囲の結合組織の硬度と相関を認めた(洞庭,2015)。つまり,大腿外側部の筋硬度計による硬度は皮下組織や外側筋間中隔などのVL周囲の結合組織の硬度を反映していると考えられる。筋周囲の結合組織は隣接する筋間との滑走性を保証する。すなわち,VL変位量はVLの硬度とともに,周囲組織との滑走性を反映するものと考えられた。蒲田らは筋間の滑走性の重要性を指摘しているが,定量的測定は困難であった。USによるVLの動態評価はVL周囲の滑走性を定量的に測定でき,今後の外傷予防や疼痛発生機序の解明に有効になる可能性がある。
外側広筋(VL)の滑走性の低下は,膝屈曲可動域制限や,VLの伸張性の低下を惹起するため,臨床上問題となるが,その計測手法は確立されていない。一方,超音波画像診断装置(US)は,運動器の形態や動態を高い再現性のもと計測できる(佐藤,2015)。我々は膝自動屈曲に伴い,VLが後内側に滑走することを示している(中村,2015)が,この動態が筋の硬度や張力,疲労など,どのような要素を反映しているかは不明である。我々はVLの動態に合わせた徒手的操作により,VLの伸張性や圧痛と共に,筋の動態が改善することを明らかにしている(中村,2015)。そこでVLの動態には筋硬度や圧痛が関係していると仮説を立てた。本研究の目的はVLの膝屈曲運動時の動態が筋の柔軟性や圧痛を反映しているか検討することである。
【方法】
健常成人男性20名40肢(平均年齢20.0±2.3歳,身長167.4±5.8cm,体重59.9±6.9kg)とした。USにはMy-Lab25を用い,自動屈曲運動時のVLの後内側への変位量(VL変位量)を計測した。測定モードはBモード,リニアプローブを用い,腹臥位にて大腿中央外側にてVLと大腿二頭筋を短軸走査で確認し,プローブを固定した。膝関節完全伸展位から90度屈曲位までの自動運動中のエコー動画から,完全伸展位と90度屈曲位の画像を抽出しVL外側端が移動した距離をVL変位量としてImage-Jを用いて計測した。また筋硬度,圧痛を大腿中央外側にてそれぞれ筋硬度計,圧痛計を用いて計測した。さらに,自作した装置に徒手筋力測定器を設置し,膝他動屈曲時の抵抗力(以下,抗力)を測定した。VL変位量と筋硬度,圧痛,抗力の関係性を検討した。統計学的処理にはR2.8.1を使用し,Spearmanの順位相関係数(有意水準5%未満)を用いた。
【結果】
VL変位量と抗力はr=0.51と有意な相関関係を認めた。またVL変位量と筋硬度はr=0.71と有意な相関関係を認めた。一方,VLの動態と圧痛は有意な相関関係を認めなかった。
【結論】
本研究の結果,VL変位量はVLの筋硬度を反映するが,圧痛の程度は反映しないものと考えられた。抗力は筋の長軸上に発生する弾性力を示すのに対して,筋硬度計による計測は,筋以外の皮下組織や皮膚の硬度も反映する(Ichikawa, 2015)。我々の先行研究では,大腿外側の筋硬度計を用いた計測は,VLの硬度と相関を認めず,周囲の結合組織の硬度と相関を認めた(洞庭,2015)。つまり,大腿外側部の筋硬度計による硬度は皮下組織や外側筋間中隔などのVL周囲の結合組織の硬度を反映していると考えられる。筋周囲の結合組織は隣接する筋間との滑走性を保証する。すなわち,VL変位量はVLの硬度とともに,周囲組織との滑走性を反映するものと考えられた。蒲田らは筋間の滑走性の重要性を指摘しているが,定量的測定は困難であった。USによるVLの動態評価はVL周囲の滑走性を定量的に測定でき,今後の外傷予防や疼痛発生機序の解明に有効になる可能性がある。