[P-KS-44-3] ダイナミックストレッチングの運動速度の違いが筋柔軟性向上効果および筋力に違いを与えるか?
―ストレイン・エラストグラフィによる検討―
Keywords:ストレッチング, エラストグラフィ, 筋硬度
【はじめに,目的】
本研究の目的は,関節運動速度の違う2種類のダイナミックストレッチング(以下,DS)が筋硬度と筋力に与える効果の違いを比較することである。DSは実施後にスタティックストレッチング(以下,SS)のような筋力低下が無いとされ,既にスポーツ現場ではSSに代わるストレッチングとして注目されている。今後は理学療法の対象である高齢者や患者などへ臨床応用が期待される方法であるが,一般的なDSは関節運動速度が50rpm以上であり,素早い関節運動が要求されるため臨床現場には不向きな一面がある。そこで関節運動速度が10rpmのゆっくりとしたDSの場合,その効果が一般的なDSの速度(50rpm)と違いが出るのかを比較した。近年,ストレイン・エラストグラフィによってストレッチング前後の筋硬度評価を直接的に評価できるようになった。本研究においてもストレイン・エラストグラフィによりDSの運動速度の違いが筋硬度に対してどのような効果を及ぼすのか検討した。
【方法】
対象は健常成人15名(平均年齢20.3±1.2歳,男性7名女性8名)とした。研究デザインをランダム化クロスオーバー試験とし,左腓腹筋を対象に1回6秒,12回の関節運動を50rpmの速度で行う一般的なDSを受ける介入(以下,通常のDS),通常のDSと同様の方法で運動速度を10rpmとしたDSを受ける介入(以下,ゆっくりしたDS),1分間のSSを受ける介入,1分間の安静を保つコントロール介入の4回の実験条件をランダムに与えデータを収集した。測定は介入の前後に行い,腓腹筋内側頭の筋硬度,足関節底屈ピークトルクを測定した。筋硬度は超音波診断装置AVIUS(日立アロメディカ社製)のストレイン・エラストグラフィモードを用いた。これにより筋硬度を示すStrain Ratioが算出され,値が小さければ筋硬度が低く,値が大きければ筋硬度が高い。足関節底屈ピークトルクはCYBEX NORM(CSMi社製)を用いた。統計処理はSPSS21.0を用い介入前後の値に有意差があるか検討した。
【結果】
Strain Ratioは,通常のDSにおいて介入前0.027±0.011(平均値±標準偏差)から有意に介入後0.016±0.009へ低下し(p<0.01効果量r=0.79),ゆっくりしたDSも介入前0.026±0.015から有意に介入後0.012±0.009へ低下した(p<0.01効果量r=0.80)。またSSも介入前0.029±0.021から有意に介入後0.015±0.008へ低下した(p<0.01効果量r=0.80)。コントロールは有意な変化がみられなかった。また足底屈ピークトルクは,通常のDS,ゆっくりしたDS,およびコントロールにおいて有意な変化は認めなかったが,SSにおいて介入前73.8±27.8Nmから介入後71.6±27.5Nmへ有意に低下した(p<0.01効果量r=0.70)。
【結論】
ゆっくりしたDSは,通常のDSおよびSSと同様に筋硬度を低下させ,通常のDSと同様にSSのような筋力低下を認めなかった。ゆっくりとしたDSは今後臨床における活用が期待できる手法と考えられた。
本研究の目的は,関節運動速度の違う2種類のダイナミックストレッチング(以下,DS)が筋硬度と筋力に与える効果の違いを比較することである。DSは実施後にスタティックストレッチング(以下,SS)のような筋力低下が無いとされ,既にスポーツ現場ではSSに代わるストレッチングとして注目されている。今後は理学療法の対象である高齢者や患者などへ臨床応用が期待される方法であるが,一般的なDSは関節運動速度が50rpm以上であり,素早い関節運動が要求されるため臨床現場には不向きな一面がある。そこで関節運動速度が10rpmのゆっくりとしたDSの場合,その効果が一般的なDSの速度(50rpm)と違いが出るのかを比較した。近年,ストレイン・エラストグラフィによってストレッチング前後の筋硬度評価を直接的に評価できるようになった。本研究においてもストレイン・エラストグラフィによりDSの運動速度の違いが筋硬度に対してどのような効果を及ぼすのか検討した。
【方法】
対象は健常成人15名(平均年齢20.3±1.2歳,男性7名女性8名)とした。研究デザインをランダム化クロスオーバー試験とし,左腓腹筋を対象に1回6秒,12回の関節運動を50rpmの速度で行う一般的なDSを受ける介入(以下,通常のDS),通常のDSと同様の方法で運動速度を10rpmとしたDSを受ける介入(以下,ゆっくりしたDS),1分間のSSを受ける介入,1分間の安静を保つコントロール介入の4回の実験条件をランダムに与えデータを収集した。測定は介入の前後に行い,腓腹筋内側頭の筋硬度,足関節底屈ピークトルクを測定した。筋硬度は超音波診断装置AVIUS(日立アロメディカ社製)のストレイン・エラストグラフィモードを用いた。これにより筋硬度を示すStrain Ratioが算出され,値が小さければ筋硬度が低く,値が大きければ筋硬度が高い。足関節底屈ピークトルクはCYBEX NORM(CSMi社製)を用いた。統計処理はSPSS21.0を用い介入前後の値に有意差があるか検討した。
【結果】
Strain Ratioは,通常のDSにおいて介入前0.027±0.011(平均値±標準偏差)から有意に介入後0.016±0.009へ低下し(p<0.01効果量r=0.79),ゆっくりしたDSも介入前0.026±0.015から有意に介入後0.012±0.009へ低下した(p<0.01効果量r=0.80)。またSSも介入前0.029±0.021から有意に介入後0.015±0.008へ低下した(p<0.01効果量r=0.80)。コントロールは有意な変化がみられなかった。また足底屈ピークトルクは,通常のDS,ゆっくりしたDS,およびコントロールにおいて有意な変化は認めなかったが,SSにおいて介入前73.8±27.8Nmから介入後71.6±27.5Nmへ有意に低下した(p<0.01効果量r=0.70)。
【結論】
ゆっくりしたDSは,通常のDSおよびSSと同様に筋硬度を低下させ,通常のDSと同様にSSのような筋力低下を認めなかった。ゆっくりとしたDSは今後臨床における活用が期待できる手法と考えられた。