第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-01-4] 人工膝関節置換術後の腫脹と膝機能,歩行能力との関連について

岡本健佑1, 小林信吾1, 根来政徳1, 中井陽子1, 岩田晃2, 北口拓也1 (1.大阪労災病院中央リハビリテーション部, 2.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:人工膝関節置換術, 腫脹, 機能障害

【はじめに,目的】

人工膝関節置換術(Total Knee Arthoplasty,以下TKA)術後の膝機能や歩行能力には,腫脹が影響することが明らかにされている。Holmらは,TKA術後患者の術側膝関節の腫脹を周径で評価し,術後の周径,膝伸展筋力,歩行能力の術前に対する変化率を算出した結果,術後3日における周径の増加率が大きいほど,同時期の膝伸展筋力の低下率が大きくなると報告している。このように,術後早期に生じた腫脹が同じ時期の膝機能に影響を及ぼすことは報告されているが,その後の腫脹が膝機能や歩行能力にどのような影響を与えるのか,さらにどの時期まで腫脹が影響を与えるのか,について検討された先行研究は見当たらない。TKA術後の入院期間が3週間程度の場合,術後早期以降の腫脹が膝機能や歩行能力に及ぼす影響について明確にすることは,理学療法の実施内容を考える上で重要である。

そこで,急性期以降の術後2,3週の時期に腫脹を評価し,同時期の膝機能や歩行能力とどのような関係があるかを明らかにすることを本研究の目的とした。

【方法】

2015年1月から2015年6月の間に,当院で初回の片側TKAを施行された患者55名(平均年齢74.7±8.0歳,男性5名,女性50名,BMI26.9±4.2kg/m2)を対象とした。測定項目は,術前日,術後2,3週における術側膝関節の周径,膝伸展筋力と屈曲可動域,歩行速度とした。周径は,背臥位で可能な限り膝関節を伸展位にした状態で膝蓋骨中央をメジャーで計測した。膝伸展筋力は,端座位で膝関節屈曲60°の等尺性膝伸展筋力をハンドヘルドダイナモメータで測定し,体重比に換算した値を用いた。膝関節屈曲可動域はゴニオメータで計測した。歩行速度は,16mの歩行路を通常速度で歩行し,中央10mの所要時間をストップウォッチで計測し,速度を計算した。Holmらと同様の方法で,各測定項目の術前に対する変化率を算出した。術後の周径変化率とその他の項目の変化率との関係性について,Pearsonの積立相関係数を用いて有意水準は5%未満で検討した。

【結果】

周径は,術前38.4±3.0cm,術後2週40.2±2.8cm(4.6%),術後3週39.5±2.6cm(2.9%)であった。膝伸展筋力は,術前2.6±1.0N/kg,術後2週1.4±0.6N/kg(-42.7%),術後3週1.7±0.7N/kg(-28.6%)であった。膝関節屈曲可動域は,術前115.2±16.4°,術後2週100.9±10.6°(-11.0%),術後3週106.9±10.8°(-5.8%)であった。歩行速度は,術前0.9±0.2m/s,術後2週0.8±0.2m/s(-11.0%),術後3週0.9±0.2m/s(4.3%)であった。全ての測定時期において,周径変化率と膝機能や歩行速度の変化率には有意な相関関係が認められなかった。

【結論】

本研究では,TKA術後2週以降における腫脹の術前に対する変化率と,術側膝関節の伸展筋力,屈曲可動域,歩行速度の変化率には関連がみられなかった。この結果から,術後急性期以降の腫脹は,同時期の膝関節の伸展筋力や屈曲可動域,歩行能力には影響しないことが示唆された。