第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-02-4] 人工股関節全置換術前後のJHEQとJOA scoreの関連についての検討

八木宏明1, 砥上恵幸1, 松島年宏2,3, 富永俊克2,3, 城戸研二3 (1.労働者健康福祉機構山口労災病院中央リハビリテーション部, 2.労働者健康福祉機構山口労災病院リハビリテーション科, 3.労働者健康福祉機構山口労災病院整形外科)

Keywords:人工股関節全置換術, 日本整形外科学会股関節疾患評価質問票, 日本整形外科学会股関節機能判定基準

【はじめに,目的】股関節疾患に関する評価指標として,従来より,日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA score)が用いられてきた。近年,患者立脚型の評価法の有用性が認識され,日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)も導入されるようになってきている。本研究の目的は,人工股関節全置換術(THA)前後における,JHEQとJOA scoreの関連性を検討し,患者満足度を意識した使用方法を見い出すことである。




【方法】対象は,2015年1月から9月にTHAを施行し,術前と退院時の評価が可能であった25例(年齢:65.7±9.4歳,男性:2例,女性:23例,術式:前外側侵入,術後平均在院日数:23.3±7.3日),25関節とした。JHEQは,痛み,動作,メンタルの3つの下位尺度と股関節の状態(不満足度)から構成され,点数が高いほどQOLが高いとされる。不満足度は,合計点には含まれず,単独の指標として,Visual Analogue Scaleにて評価を行い,点数が高いほど不満が強いことが表される。評価項目は,JHEQおよびJOA scoreとした。術前および退院時における,JHEQ合計点と下位尺度の点数および不満足度,JOA scoreの合計点と下位尺度の点数の関連性を検討するために,相関分析を行った。統計学的手法は,Shapiro-Wilk検定にて,正規性について確認し,Pearsonの相関係数およびSpearmanの順位相関係数を行った。統計学的解析には,R.2.8.1を使用し,有意水準は5%未満,相関係数0.5以上を相関ありとした。




【結果】術前は,JHEQ痛み-JOA score合計点(ρ=0.66,p=0.00),JHEQ痛み-JOA score痛み(ρ=0.60,p=0.00),JHEQメンタル-JOA score歩行(ρ=0.53,p=0.00)に,退院時は,JHEQ合計点-JOA score合計点(r=0.62,p=0.00),JHEQ合計点-JOA score痛み(ρ=0.50,p=0.00),JHEQ痛み-JOA score合計点(r=0.66,p=0.00),JHEQ動作-JOA score合計点(r=0.50,p=0.01),JHEQ不満足度-JOA score痛み(ρ=-0.53,p=0.00)に相関が認められた。




【結論】THA前後のJHEQとJOA scoreの検討では,術後の合計点に相関を認め,術後の総合的な評価という観点では関連性を見い出せたが,痛みと合計点以外の下位尺度間や不満足度とには,あまり関連性は認められなかった。JHEQの特徴は,メンタルや不満足度を評価することができる点であり,JOA scoreの特徴は,可動域といった機能面や歩行能力を評価できる点である。前者を患者立脚型とするならば,後者は医療従事者立脚型の評価指標であると言える。THA術前後の評価には,適切な時期に,JHEQとJOA scoreの双方を用いることで,機能面から能力面,QOLまでを含む,個別性を重視した多角的な評価が可能になると考える。