第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-02-6] 人工股関節全置換術後1年間の転倒の発生率と発生状況

生友尚志1, 永井宏達2, 田篭慶一1, 三浦なみ香1, 岡村憲一1, 奥埜尭人1, 伊本悠矢1, 中川法一1, 増原建作3 (1.医療法人増原クリニックリハビリテーション科, 2.兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科, 3.医療法人増原クリニック整形外科)

Keywords:股関節, 人工股関節全置換術, 転倒

【はじめに,目的】

人工股関節全置換術(THA)後1年間の転倒実態は未だ明らかになっていない。本研究の目的は,THA後1年間の転倒の発生率と発生状況を明らかにすることとした。


【方法】

2013年2月から2014年8月までにTHAを目的に入院した末期変形性股関節症(股OA)患者220名と地域在住の同年代健常女性127名を調査対象とした。対象除外基準は,男性,リウマチ,中枢神経障害,めまいを有する者,大腿骨頚部骨折術後,再THA,調査日より1年以内に反対側THAを受けた者とした。

転倒調査の内容は,過去1年間の転倒経験の有無と転倒回数,転倒発生時の状況(場所,時間帯,原因,方向,受傷内容)とし,自己記入式のアンケートにて調査した。股関節機能評価はHarris Hip Score(HHS)と日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を用いた。調査時期は,THA術前と術後1年時とした。転倒の定義は,「いかなる理由であっても人が地面,床またはより低い面へ予期せず倒れること」とし,めまいや自転車などの事故による転倒は解析対象から除外した。統計解析は,転倒経験者と転倒発生状況の割合の比較にはχ2検定を用い,HHSとJHEQのTHA前後での比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。


【結果】

調査対象者のうち除外基準に該当せず,欠損データのない股OA患者140名(THA群),健常者112名(健常群)を解析対象とした。平均年齢はTHA群が62.8±9.0歳,健常群が64.1±9.3歳であり,2群間に有意な差はなかった。

転倒発生率(転倒経験者)は,THA術前が31.4%(44名),術後が30%(42名)であり,術前後で有意な差はなかった。健常群の転倒発生率(転倒経験者)は,12.5%(14名)であり,転倒発生率はTHA群のほうが有意に高かった(p<0.01)。転倒発生時の状況は,術前,術後の順に,場所は「屋内」が45%,50%,「屋外」が42%,46%,「階段」が13%,4%であった。時間帯は「起床から10時まで」が10%,15%,「10時から17時まで」が70%,66%,「17時から就寝時まで」が20%,15%,「就寝時から起床まで」が0%,4%であった。原因は「滑った」が10%,12%,「つまずいた」が52%,47%,「バランスを崩した」が37%,37%,「人や物に当たった」が2%,3%,「その他」が0%,1%であった。方向は「前方」が53%,56%,「側方」が33%,22%,「後方」が13%,22%であった。受傷内容は「けがしなかった」が47%,63%,「打ち身」が37%,18%,「擦り傷」が8%,12%,「骨折」が8%,6%,「その他」が0%,1%であった。転倒発生時の場所,時間帯,原因,方向,受傷内容の全てにおいて術前後での割合の差はなかった。HHSとJHEQは術前に比べて術後のほうが有意に高く,術前後で改善がみられた(p<0.01)。


【結論】

THA前後で股関節機能は改善しているものの転倒発生率や転倒発生状況については変化がみられなかった。THA後1年間の転倒発生率は同年代の健常者に比べて高いことが明らかになった。