[P-MT-03-3] 脊椎のアライメントと骨盤臓器脱の関連
直腸脱症例に関する仙骨傾斜角による検討
キーワード:仙骨傾斜角, 直腸脱, 姿勢アライメント
【背景】当院は,大腸肛門病の専門病院として排便障害を有する患者の診療を行っている。理学療法士は排泄リハビリテーションの治療の一環として,他部署と協力しながら直腸肛門機能訓練や運動療法に取り組んでいる。排便障害を主訴とする患者では,姿勢制御機構が崩壊している症例を多く経験する。特に,近年の高齢社会では直腸脱の高齢女性患者が増加しており,多くの症例は脊椎のアライメントが崩壊している。そこで今回,直腸脱の診断で手術が行われた症例について,単純X線から脊椎疾患の既往と,仙骨傾斜角(sacral slope:SS)の調査を後方視的に行ったので以下に報告する。
【対象と方法】過去の1年間に直腸脱の診断で初回手術を受けた方の中で,腰仙椎の単純X線撮影(正面,側面像)が行われていた女性28例(平均年齢83.4±6.6歳)を直腸脱群。同年に内外痔核で手術が行われた80歳以上の女性23例(平均年齢82.9±3.2歳)を対照群とした。撮影された腰仙椎の正面像と側面像の診察結果を電子カルテから調査し,両群間で脊椎疾患の既往の有無を比較した。また,放射線技師が水平面に対する仙骨上縁の傾きであるSSを計測し,手術前の肛門内圧検査が行われていた症例は,肛門最大静止圧(静止圧)と肛門随意収縮圧(随意圧)について,両群間での比較検討を行った。統計学的検討には,Mann-Whitney's U検定(5%未満を有意と判断)を用いた。
【結果】直腸脱群は圧迫骨折21例(75%),変形性脊椎症26例(93%)であったのに対し,対照群では圧迫骨折4例(17%),変形性脊椎症5例(22%)であり,直腸脱群では多くの脊椎疾患の既往が存在した。また,SSは,直腸脱症群(23.3°±11.1°),対照群(30.5°±9.4°)であり,直腸脱群で有意(p=0.01)に鋭角であった。静止圧と随意圧は直腸脱群26例(22.1±9.5,75.1±43.4cmH2O),対照群11例(55.5±27.4,167.7±69.2cmH2O),と直腸脱群で有意(p=0.0001)に低下していた。
【考察】今回,直腸脱の症例と対照群としての痔核症例でSSの比較検討を行った。金村らは日本人の仙骨回旋角は平均35.3°としており,直腸脱症例は対照群よりも鋭角であった。また,変形性脊椎症や圧迫骨折などの脊椎アライメントが崩壊する疾患が直腸脱群に多かった。直腸は解剖学的に仙骨前面の彎曲に沿って位置することから,脊椎アライメントが崩壊し,仙骨の傾斜が減少すると,腹圧が高まる動作などで直腸肛門部への負荷が高くなることが考えられる。肛門の静止圧や随意圧も直腸脱群で低値を示していることからも,直腸へ腹圧が加わり易くなる姿勢アライメントは直腸脱のリスクが高くなると考えられ,理学療法士が姿勢へのアプローチを行うことが必要になってくると思われる。
【対象と方法】過去の1年間に直腸脱の診断で初回手術を受けた方の中で,腰仙椎の単純X線撮影(正面,側面像)が行われていた女性28例(平均年齢83.4±6.6歳)を直腸脱群。同年に内外痔核で手術が行われた80歳以上の女性23例(平均年齢82.9±3.2歳)を対照群とした。撮影された腰仙椎の正面像と側面像の診察結果を電子カルテから調査し,両群間で脊椎疾患の既往の有無を比較した。また,放射線技師が水平面に対する仙骨上縁の傾きであるSSを計測し,手術前の肛門内圧検査が行われていた症例は,肛門最大静止圧(静止圧)と肛門随意収縮圧(随意圧)について,両群間での比較検討を行った。統計学的検討には,Mann-Whitney's U検定(5%未満を有意と判断)を用いた。
【結果】直腸脱群は圧迫骨折21例(75%),変形性脊椎症26例(93%)であったのに対し,対照群では圧迫骨折4例(17%),変形性脊椎症5例(22%)であり,直腸脱群では多くの脊椎疾患の既往が存在した。また,SSは,直腸脱症群(23.3°±11.1°),対照群(30.5°±9.4°)であり,直腸脱群で有意(p=0.01)に鋭角であった。静止圧と随意圧は直腸脱群26例(22.1±9.5,75.1±43.4cmH2O),対照群11例(55.5±27.4,167.7±69.2cmH2O),と直腸脱群で有意(p=0.0001)に低下していた。
【考察】今回,直腸脱の症例と対照群としての痔核症例でSSの比較検討を行った。金村らは日本人の仙骨回旋角は平均35.3°としており,直腸脱症例は対照群よりも鋭角であった。また,変形性脊椎症や圧迫骨折などの脊椎アライメントが崩壊する疾患が直腸脱群に多かった。直腸は解剖学的に仙骨前面の彎曲に沿って位置することから,脊椎アライメントが崩壊し,仙骨の傾斜が減少すると,腹圧が高まる動作などで直腸肛門部への負荷が高くなることが考えられる。肛門の静止圧や随意圧も直腸脱群で低値を示していることからも,直腸へ腹圧が加わり易くなる姿勢アライメントは直腸脱のリスクが高くなると考えられ,理学療法士が姿勢へのアプローチを行うことが必要になってくると思われる。