[P-MT-03-6] ハンドヘルドダイナモメータを用いた座位における体幹屈曲筋力測定の工夫
―筋力値と筋活動の再検討―
Keywords:体幹筋力, 体幹屈曲, ハンドヘルドダイナモメータ
【はじめに,目的】
腰痛症や脊椎疾患における体幹筋力評価は臨床において重要である。遠藤らはハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)を用いた座位体幹屈曲筋力測定で,腹直筋の筋活動が外腹斜筋に比べ低値を示したことを報告した。しかし,体幹屈曲の主動作筋はあくまで腹直筋であり,徒手筋力検査(以下,MMT)の腹直筋筋活動を基準として比較検討を行うならば,腹直筋の筋活動をより反映させる筋力測定の工夫が必要である。
本研究の目的は,座位体幹屈曲筋力測定の測定値を高く,かつ主動作筋である腹直筋がより高い筋活動を発揮できる測定方法を,筋力値および筋活動に着目して再検討することである。
【方法】
対象は健常成人男性15名とした。評価項目は,HHDを用いた座位体幹屈曲筋力測定による筋力値と筋電図を用いた筋活動量とした。体幹筋力測定は抵抗部位を胸骨柄とし,徒手圧迫によって実施した。表面筋電計はテレマイオDTSを用い,上部腹直筋,下部腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋を導出筋とした。なお,各筋のMMTを基準とした%iEMGを算出した。検討項目は,(1)腰部と壁の間にタオル(1200×600mm)を挟み,後方より骨盤を固定する骨盤固定法と従来の徒手圧迫法を比較。なお,本研究では腰部と壁の間にタオルを挟むことを,骨盤固定と規定した。(2)ヘッドアップティルトテーブルを用いて,体幹後方傾斜角0°,10°,20°,30°を開始肢位とした測定を比較の2つとした。統計的解析は,筋力値・筋活動の比較に対応のある検定および多重比較法を用いて,有意水準を5%とした。
【結果】
(1)筋力値・筋活動量ともに徒手圧迫法に比べ骨盤固定法で有意に高値を示した。
(2)体幹後方傾斜角度の違いによる筋力値は,後方傾斜角20°で30°に比べ有意に高値を示し,それ以外の角度では有意差を認めなかった。筋活動量は,上部・下部腹直筋は20°以上で有意に増加した。
【結論】
従来の徒手圧迫法は,腰部・骨盤と壁の間にスペースが空いており,被験者の固定が不十分であった可能性がある。タオルを用いて後方より骨盤を固定することで,より筋活動が得られやすい環境となり,筋力値・筋活動ともに良好な結果となったと考える。
体幹後方傾斜角度については,より高いPeak値を測定値とすることが好ましいという報告から,本研究では体幹後方傾斜角度0-20°までが,評価として好ましいと考える。また,筋活動は,体幹後方傾斜角度20°,30°と傾斜が強くなるにつれて,腹直筋上部および下部の筋活動が向上している。しかし,体幹後方傾斜30°の座位は臨床では測定困難な姿勢になると考える。以上のことより,体幹後方傾斜角度20°を開始肢位とした後方骨盤固定による測定が,腹直筋の筋活動をより反映した測定方法であると考える。
腰痛症や脊椎疾患における体幹筋力評価は臨床において重要である。遠藤らはハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)を用いた座位体幹屈曲筋力測定で,腹直筋の筋活動が外腹斜筋に比べ低値を示したことを報告した。しかし,体幹屈曲の主動作筋はあくまで腹直筋であり,徒手筋力検査(以下,MMT)の腹直筋筋活動を基準として比較検討を行うならば,腹直筋の筋活動をより反映させる筋力測定の工夫が必要である。
本研究の目的は,座位体幹屈曲筋力測定の測定値を高く,かつ主動作筋である腹直筋がより高い筋活動を発揮できる測定方法を,筋力値および筋活動に着目して再検討することである。
【方法】
対象は健常成人男性15名とした。評価項目は,HHDを用いた座位体幹屈曲筋力測定による筋力値と筋電図を用いた筋活動量とした。体幹筋力測定は抵抗部位を胸骨柄とし,徒手圧迫によって実施した。表面筋電計はテレマイオDTSを用い,上部腹直筋,下部腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋を導出筋とした。なお,各筋のMMTを基準とした%iEMGを算出した。検討項目は,(1)腰部と壁の間にタオル(1200×600mm)を挟み,後方より骨盤を固定する骨盤固定法と従来の徒手圧迫法を比較。なお,本研究では腰部と壁の間にタオルを挟むことを,骨盤固定と規定した。(2)ヘッドアップティルトテーブルを用いて,体幹後方傾斜角0°,10°,20°,30°を開始肢位とした測定を比較の2つとした。統計的解析は,筋力値・筋活動の比較に対応のある検定および多重比較法を用いて,有意水準を5%とした。
【結果】
(1)筋力値・筋活動量ともに徒手圧迫法に比べ骨盤固定法で有意に高値を示した。
(2)体幹後方傾斜角度の違いによる筋力値は,後方傾斜角20°で30°に比べ有意に高値を示し,それ以外の角度では有意差を認めなかった。筋活動量は,上部・下部腹直筋は20°以上で有意に増加した。
【結論】
従来の徒手圧迫法は,腰部・骨盤と壁の間にスペースが空いており,被験者の固定が不十分であった可能性がある。タオルを用いて後方より骨盤を固定することで,より筋活動が得られやすい環境となり,筋力値・筋活動ともに良好な結果となったと考える。
体幹後方傾斜角度については,より高いPeak値を測定値とすることが好ましいという報告から,本研究では体幹後方傾斜角度0-20°までが,評価として好ましいと考える。また,筋活動は,体幹後方傾斜角度20°,30°と傾斜が強くなるにつれて,腹直筋上部および下部の筋活動が向上している。しかし,体幹後方傾斜30°の座位は臨床では測定困難な姿勢になると考える。以上のことより,体幹後方傾斜角度20°を開始肢位とした後方骨盤固定による測定が,腹直筋の筋活動をより反映した測定方法であると考える。