第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P04

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-MT-04-5] 異なる上肢PNFパターンが対側ヒラメ筋H波に及ぼす影響

白谷智子1, 新井光男2, 来間弘展2, 保原塁1, 柳澤健3 (1.苑田第二病院リハビリテーション科, 2.首都大学東京健康福祉学部, 3.郡山健康科学専門学校)

Keywords:PNF, 遠隔反応, H波

【はじめに,目的】

固有受容性神経筋促通法(PNF)の上肢や肩甲骨パターンを用い,遠隔部位の関節可動域が改善することが報告されている(西浦ら;2009,立石ら;2003)。運動肢と対側に及ぼす影響として,西浦ら(2006)は健常者を対象に肩関節の静止性収縮が両股関節自動関節可動域(AROM)に及ぼす影響を検証した結果,運動肢と対側の膝伸展位での股関節屈曲(SLR)のAROMが有意に増大したことを報告しており,関節可動域に及ぼす影響は検証されているが,上肢PNFパターンが対側下肢に及ぼす下行性の生理学的影響は明らかではない。上肢筋の静止性収縮の下行性遠隔後効果の神経生理学的効果は,上肢筋群を収縮させることにより,遠隔部位の下肢の屈筋と伸筋の運動ニューロンの促通と下肢の反射の亢進が認められたことが報告されている(Toulouse;1980)。また,運動肢と同側ヒラメ筋H波に及ぼす影響は運動方向に依存し変化が認められたことが報告されているが(白谷ら,2015),対側肢への影響は明らかでない。本研究の目的は,異なる上肢PNFパターンが対側ヒラメ筋H波に及ぼす影響を検証することである。


【方法】

対象は整形外科的・神経学的疾患の既往のない健常者14名(男性11名,女性3名,平均年齢(SD)23.6(2.8)歳)であった。対象者は右肩関節90°屈曲位で上肢屈曲-内転-外旋の静止性収縮と上肢伸展-外転-内旋の静止性収縮を行った。誘発筋電図は誘発電位・筋電図検査装置(日本光電社・MEB9100)を用い,左ヒラメ筋H波を記録した。安静時,運動時,運動後3分40秒までH波を誘発した。20秒毎に各相でH波振幅値と安静時最大M波振幅値を比較した振幅H/M比を求めた。統計解析は,振幅H/M比を指標に,運動方向と経時的変化と個人を要因とした三元配置分散分析を行い,有意差の認められた要因においては多重比較検定(Turkey法)を行った。有意水準は5%とした。


【結果】

三元配置分散分析の結果,経時的変化の要因において有意差が認められた。経時的変化の要因は運動時より運動後に有意な抑制が認められた。運動方向の要因において有意差は認められなかった。


【結論】

運動肢と同側ヒラメ筋H波に及ぼす影響は運動方向に依存し変化が認められたことが報告されていたが(白谷ら,2015),対側ヒラメ筋H波に及ぼす影響は,上肢屈曲-内転-外旋・伸展-外転-内旋間に有意差は認められなかった。両パターン共に運動時より運動後にリラクセーション効果が認められた。今回の研究により,上肢伸展-外転-内旋パターンにより対側股関節SLRのAROMが増大した(西浦ら,2006)生理学的機序としてハムストリングスのリラクセーションが生じた影響が推察される。また,伸展-外転-内旋のみでなく,屈曲-内転-外線においても対側AROMが増大する可能性が示唆されると同時に,運動後にリラクセーション効果が認められたことより他動関節可動域も改善させる可能性が推察される。