[P-MT-05-1] 鏡視下腱板修復術後,修復良好群と再断裂群の術前筋力の比較
キーワード:鏡視下腱板修復術, 術後再断裂, 術前筋力
【はじめに,目的】
鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:以下,ARCR)は良好な術後成績が報告されている。それに踏まえて,ARCR後再断裂に関連した様々な報告もされている。しかし,再断裂の術後の報告は数多く報告されているが,術前の評価に関した報告は数少ない。そこで,当院におけるARCR後の修復良好群と再断裂群の両群で術前の筋力評価を比較し,臨床への応用を検討する。
【方法】
当院にて過去4年間にARCRを施行し,術前の評価が行えた37例(男性25名,女性12名,平均年齢62.9±9.8歳,部分~小断裂12名,中断裂13名,大~広範囲断裂12名,うち肩甲下筋腱断裂を含む5名)のうち,術後半年~1年でのMRI評価においてSugaya分類TypeI~IIIを修復良好群(28名:部分~小断裂11名,中断裂11名,大~広範囲断裂6名),TypeIV~Vを再断裂群(9名:部分~小断裂1名,中断裂2名,大~広範囲断裂6名)とし,2群間での比較検討を行った。
測定にはANIMA社製等尺性筋力計ミュータスF-1を用い,術前の肩関節90°外転位(以下,ABD90°),下垂位外旋位(以下,ER),下垂位内旋位(以下,IR)の最大等尺性収縮ピーク値を測定した。得られた数値をABD90°では上肢長との積を,ER,IRでは前腕長との積を関節トルク(Nm)とし,男女差が出ないよう健側比を算出(Nm%)し比較検討を行った。統計処理は対応のないt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
当院全体でのARCR後の再断裂率は19.6%であった。対象年齢は修復良好群61.4±10.3歳,再断裂群67.4±7.8歳であり有意差は認められなかった。術前筋力(修復良好群/再断裂群)は,ABD90°(58.4±28.1Nm%/39.4±24.0Nm%),ER(77.3±21.3Nm%/48.5±25.6Nm%),IR(92.0±21.4Nm%/82.2±20.1Nm%)であり,ABD90°,IRでは有意な差は認められず,ERのみ有意な差が認められた。
【結論】
今回の結果から,ERのみ術前筋力において有意な差が認められた。腱板断裂(rotator cuff tear:以下RCT)において最も損傷を受けやすい棘上筋は,どの断裂サイズにおいても何らかの影響を受けている可能性が高く,ABD90°において有意な差はみられなかったと考える。IRに関しても肩甲下筋の断裂が5名と少数であったため結果に反映されなかったと考える。
断裂サイズが大きいほど再断裂の危険性が高いことは周知の事実である。当院の再断裂群において,断裂サイズを視てみると大~広範囲断裂が高い割合を占めることから,その傾向が反映されていることを示している。以上のことを踏まえ,ERにおいて再断裂群ではRCTの大~広範囲断裂サイズが占める割合が高いことから,棘下筋の損傷が高度であるため有意な差が認められた結果となったと考察する。
今後,RCTにおいて大断裂以上のサイズのARCR後の再断裂に気を付けることはもちろん,特に外旋筋力が弱い症例に関して治療を行う上で細心の注意を払う必要があると考える。
鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:以下,ARCR)は良好な術後成績が報告されている。それに踏まえて,ARCR後再断裂に関連した様々な報告もされている。しかし,再断裂の術後の報告は数多く報告されているが,術前の評価に関した報告は数少ない。そこで,当院におけるARCR後の修復良好群と再断裂群の両群で術前の筋力評価を比較し,臨床への応用を検討する。
【方法】
当院にて過去4年間にARCRを施行し,術前の評価が行えた37例(男性25名,女性12名,平均年齢62.9±9.8歳,部分~小断裂12名,中断裂13名,大~広範囲断裂12名,うち肩甲下筋腱断裂を含む5名)のうち,術後半年~1年でのMRI評価においてSugaya分類TypeI~IIIを修復良好群(28名:部分~小断裂11名,中断裂11名,大~広範囲断裂6名),TypeIV~Vを再断裂群(9名:部分~小断裂1名,中断裂2名,大~広範囲断裂6名)とし,2群間での比較検討を行った。
測定にはANIMA社製等尺性筋力計ミュータスF-1を用い,術前の肩関節90°外転位(以下,ABD90°),下垂位外旋位(以下,ER),下垂位内旋位(以下,IR)の最大等尺性収縮ピーク値を測定した。得られた数値をABD90°では上肢長との積を,ER,IRでは前腕長との積を関節トルク(Nm)とし,男女差が出ないよう健側比を算出(Nm%)し比較検討を行った。統計処理は対応のないt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
当院全体でのARCR後の再断裂率は19.6%であった。対象年齢は修復良好群61.4±10.3歳,再断裂群67.4±7.8歳であり有意差は認められなかった。術前筋力(修復良好群/再断裂群)は,ABD90°(58.4±28.1Nm%/39.4±24.0Nm%),ER(77.3±21.3Nm%/48.5±25.6Nm%),IR(92.0±21.4Nm%/82.2±20.1Nm%)であり,ABD90°,IRでは有意な差は認められず,ERのみ有意な差が認められた。
【結論】
今回の結果から,ERのみ術前筋力において有意な差が認められた。腱板断裂(rotator cuff tear:以下RCT)において最も損傷を受けやすい棘上筋は,どの断裂サイズにおいても何らかの影響を受けている可能性が高く,ABD90°において有意な差はみられなかったと考える。IRに関しても肩甲下筋の断裂が5名と少数であったため結果に反映されなかったと考える。
断裂サイズが大きいほど再断裂の危険性が高いことは周知の事実である。当院の再断裂群において,断裂サイズを視てみると大~広範囲断裂が高い割合を占めることから,その傾向が反映されていることを示している。以上のことを踏まえ,ERにおいて再断裂群ではRCTの大~広範囲断裂サイズが占める割合が高いことから,棘下筋の損傷が高度であるため有意な差が認められた結果となったと考察する。
今後,RCTにおいて大断裂以上のサイズのARCR後の再断裂に気を付けることはもちろん,特に外旋筋力が弱い症例に関して治療を行う上で細心の注意を払う必要があると考える。