第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P05

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-05-2] 鏡視下肩腱板修復術後のCRPSの発症が術後経過に及ぼす影響

渡邊直樹1, 中山裕子1, 野嶋素子1, 小川幸恵1, 石津克人1, 早川敬2 (1.新潟中央病院リハビリテーション部, 2.新潟中央病院整形外科)

Keywords:腱板断裂, CRPS, 関節可動域

【はじめに,目的】鏡視下肩腱板修復術(以下,ARCR)後に発症する合併症の一つに複合性局所疼痛症候群(以下,CRPS)がある。これまでの報告によると,その発症頻度は11~24%で,特徴として術前の痛みが強い,術前の外旋制限があるとされている。術前の要因に関する報告は散見されるが,術後の経過は報告が少なく十分検討されているとは言えない。本研究の目的は,ARCR後に発症したCRPS症例の経過を調査し,その傾向を明らかにすることである。

【方法】

2013年4月から15年7月に当院でARCRを施行した166例(男性100例,女性66例,年齢67.1歳)のうち,本邦のCRPS判定指標に該当した15例をCRPS群とし,それ以外の151例のうちデータが得られた63例を対象群とした。カルテより年齢,性別,術前・6か月の疼痛(NRS),断裂サイズ,再断裂の有無,自動および他動肩屈曲・下垂位外旋角度(術前,術後6週・3か月・6か月)について調査し,CRPS群と対象群で比較した。また,CRPS群について発症時期・症状持続期間・症状を調査した。後療法は術直後から肩外転装具を装着,術翌日から理学療法室にて肩・肩甲帯のリラクゼーションを開始,リラクゼーションが得られた後,他動可動域運動を追加,原則4週で装具除去,自動可動域運動を開始した。入院期間は約2週間で,以降外来での理学療法を週1~2回継続した。CRPS症状が見られた場合には作業療法が処方された。統計学的検討は,t検定,χ2検定を行い有意水準は5%未満とした。

【結果】

CRPSの発症頻度は166例中15例(9.0%)であった。術前NRSは,CRPS群6.0±2.4,対象群6.3±2.4,6か月は2.5±2.3,2.9±2.1であり,両群間に有意差はみられなかった。術前自動外旋は,CRPS群は31.0±21.9°,対象群は49.1±18.1°,術前他動外旋は43.0±27.8°,61.6±19.4°,他動屈曲6週は86.2±12.8°,109.2±16.9°,3か月は,128.0±14.1°,143.5±12.7°,6か月は,149.4±16.2°,159.5±10.0°であり,それぞれCRPS群が有意に小さい値を示した。CRPS発症時期は,4.8±4.3週であり,症状は肘関節,手指の関節可動域制限10例,疼痛7例,浮腫14例,発汗亢進2例であった。症状が軽快した症例は8例(53.5%)であり,症状持続期間は12.2±10.5週であった。症状が継続していた症例中6例は改善が見られ,1例は発症当初の症状が持続していた。年齢,性別,断裂サイズ,再断裂の有無においては差が認められなかった。

【結論】

本調査におけるCRPSの発症頻度は9.0%であり,過去の報告と同程度であった。CRPS群では,術後他動屈曲角度が経過を通して有意に小さく,症状が軽快した後でも屈曲角度の改善に影響することが明らかとなった。また,CRPSを発症しても,半数は日常生活に支障がない程度まで改善することも明らかとなった。しかし,発症当初の症状が持続する症例も存在しており,可能な限り予防に努めることが重要と思われた。