第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P05

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-05-5] 腱板断裂術後において関節可動域制限を残さないための術後早期の目標角度は?

高橋友明, 畑幸彦, 石垣範雄, 雫田研輔, 田島泰裕 (北アルプス医療センターあづみ病院肩関節治療センター)

Keywords:腱板断裂, 関節可動域, 術後早期

【はじめに】以前,われわれは腱板断裂術後早期の肩関節可動域制限は術後3ヵ月以降の肩関節機能の回復を低下させるという報告をしたが,術後早期の具体的な肩関節可動域の目標値については言及できなかった。今回,われわれは,術後早期の具体的な肩関節可動域の目標値を明らかにする目的で,術後の他動的肩関節角度を経時的に調査したので報告する。

【対象】対象は,広範囲腱板断裂を除く腱板全層断裂に対してmini open repair法を施行された79例79肩である。内訳は,手術時年齢が平均65.7歳(43歳~74歳),男性41肩・女性38肩,右50肩・左29肩であった。また,術後後療法は,全例に対して同一プログラムを施行した。

【方法】まず術後6ヵ月時の関節可動域を用いて,対象を挙上角度が150°以上かつ外転角度が90°以上の良好群54例54肩と挙上角度が150°未満または外転角度が90°未満の不良群25例25肩の2群に分けた。次に2群間で,病歴(手術時年齢,性別および手術側),断裂サイズ,術後1週,2週,3週および4週の関節可動域の3項目について有意差検定を行った。なお,肩関節可動域は,術後1週と2週では90°scapution(前方分回し30°・外転90°)位での外旋角度を,術後3週では90°外転位内旋・外旋角度を,術後4週では屈曲,外転,下垂位外旋および90°外転位内旋・外旋角度を同一検者が他動的に測定した。統計学的解析は,性別と手術側についてはχ2検定を用いて行い,断裂サイズについてはマン・ホイットニ検定を用いて行い,手術時年齢についてはウィルコクソン符号付き順位和検定を用いて行い,それぞれ危険率5%未満を有意差ありとした。さらに肩関節可動域については箱ひげ図を用いて2群間での境界値を算出した。

【結果】病歴の手術時年齢,性別,手術側および断裂サイズについては,2群間で有意差を認めなかった。各時期の関節可動域については,箱ひげ図で2群間の間に境界線を引けたのは,術後1週では90°scapution位外旋40°であった。術後2週の箱ひげ図では境界線を引けず,術後3週では90°外転位外旋30°で境界線が引けた。術後4週の箱ひげ図では,屈曲140°と下垂位外旋10°で境界線が引けた。

【結論】今回の結果から,術後6ヵ月で良好な関節可動域を獲得するための術後早期の目標角度は,術後1週,3週および4週においては示すことができたと考える。これに関して,矢貴らは,『腱板断裂術後6ヵ月において,肩関節可動域が良好な群の術後2週時の肩関節角度は,屈曲159.0±4.0°,外転127.0±15.0°,90°外転位外旋83.0±9.0°であった。』と報告しており,戸野塚らは,『腱板断裂術後3ヵ月において,挙上120°と下垂位外旋10°の基準可動域値をクリアすることが術後24ヵ月での良好な可動域の獲得に強く影響していた。』と報告している。しかし今回の結果はこれまでの報告よりさらに明確で詳細な術後早期の関節可動域の基準値を提供することができたと考えた。