第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P06

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-06-1] 近位型頚椎症性筋萎縮症の一症例

徒手筋力検査で段階3を保つことの必要性について

源裕介 (千葉こどもとおとなの整形外科)

Keywords:頚椎症性筋萎縮症, Keegan型, 徒手筋力検査

【はじめに,目的】Keeganが報告した近位型頚椎症性筋萎縮症(以下Keegan型CSA)にて手術療法を選択する場合,徒手筋力検査(以下MMT)段階2以下の機能低下を基準とすべきとの見解があるが,実際にどの段階で行うと機能が再獲得しやすいかという報告は渉猟した範囲では見当たらず,見解が曖昧なのが現状である。今回,Keegan型CSAを発症して手術療法を選択し,術後早期に機能の再獲得を得られた症例に運動療法に関わる機会を得たので,何故早期に機能を再獲得できたかという考察をMMTの所見を踏まえて報告することを目的とする。

【方法】症例は60歳代前半の男性で,卓球中スマッシュして右肩関節に疼痛が生じたことをきっかけに来院し運動療法が開始された。当初の症状は上腕二頭筋腱付近の疼痛であったが,徐々に右上肢挙上動作困難と,右肘関節屈曲困難を生じるようになり,緩やかに悪化の傾向をたどっていた。徒手筋力検査(以下MMT)では上腕二頭筋で段階3を保っていたが,右肘関節の自動屈曲運動を繰り返していると,急に屈曲運動が不可能となってしまう現象が起き,これがきっかけで精密検査を受け,Keegan型CSAに発症していることが発覚した。手術療法を行うまで,当院で関わった運動療法期間は3ヶ月間であり,内容の多くは上腕二頭筋の筋出力を改善する運動療法を中心に行っていた。手術目的のため他院に転院後も,上腕二頭筋の自主トレーニングは継続してもらい,MMT段階3は保つように努めた。運動療法開始から6ヶ月後にC4-5,C5-6椎弓形成,C4-5,C5-6椎間孔拡大術を実施した。

【結果】手術後は他院にて入院中に2週間運動療法を実施した。退院時には以前のような右肘関節屈曲困難となる症状は消失し,症状が出現する以前の状態(MMT段階5)の状態まで改善が見られた。

【結論】今回の試みとしては,MMT段階3を保つことに重きを置いて運動療法に取り組んだことが結果として,術後早期に機能が再獲得できたと考えられた。過去の肩関節周囲筋MMT段階2以下の症例における手術症例の報告では,運動療法開始後3ヶ月を経過しないと改善が見られなかったという報告や,平均1年4ヶ月経過を追った5症例の内2症例しかMMT段階2以上に改善しなかったという報告が存在することから,MMT段階2以下での手術では,機能の再獲得に難渋することが推測される。これらより,Keegan型CSAの症例で手術を検討している症例に関しては,術前にMMT段階3という機能の維持または獲得を運動療法にて事前に行っておくことが,術後早期の機能再獲得を目指せるということが今回の経過より考えられた。