第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P06

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-06-3] 頸椎症性筋萎縮症の総指伸筋の麻痺に対する神経筋電気刺激と運動療法の効果検討

高電圧パルス電流法を用いて

圓福陽介, 満安隆之, 砂川一馬, 前原孝政, 蓑原勝哉, 茂利久嗣, 植村郁, 野海渉, 渡辺一徹, 東友和, 太田尾祐史, 児玉香織, 深野木快士, 小牧亘 (医療法人社団牧会小牧病院)

キーワード:頚椎症性筋萎縮症遠位型, 第3・4指伸展不全(drop fingers), 高電圧パルス電流法

【はじめに,目的】頚椎症性筋萎縮症(以下,CSA)は,近位型と遠位型に分類され,多くは近位型である。遠位型は若年男性が多いとされるが,今回稀な遠位型の女性を経験したので報告する。近位型に対して運動療法の報告は散見されるが,遠位型に対しては少なく有効な治療法が確立しているとは言い難い。近年,脳卒中片麻痺に対する治療として,電気刺激と促通反復療法の併用が足部機能や歩行能力が改善するとの報告もある。しかし,CSAに関する報告そのものが少ない。今回,CSAの総指伸筋の麻痺による第3・4指伸展不全(drop fingers)に対して,高電圧パルス電流法Hi Voltage Pulsed Current Therapy:HVCTと随意運動中心の運動療法との併用が手指機能・上肢能力やQOLの改善につながるかを検討した。

【方法】対象は,CSAの遠位型を呈した61歳女性。身長148cm,体重48kg,BMI21.9,現病歴はH23頃より左肩~上肢にかけての疼痛としびれ出現。近医クリニックにて保存治療行うも改善みられず,H27.4月近医病院紹介受診し,H27.8.6同病院にて手術:C3~C6椎弓形成術・C6/7左椎間孔拡大術を施行され,H27.8.19当院にリハビリ目的にて入院となった。電気刺激は,電流発生装置(ES-530,伊藤超短波社製)のHVCTを使用。HVCTの通電方法は,施行者がマウス型導子を用いて刺激部位を総指伸筋のモーターポイントとし,症例の手指伸展の随意運動に同期させた。また,疼痛のない刺激強度(周波数50Hz,パルス幅50μs)で,通電時間は5秒間かけ最終域まで伸展させその位置で5秒間保持した後に5秒間休憩を1クールとし,10分間施行した。リハビリは,週6回,8週間実施した。デザインはBefore-after trialで,簡易上肢機能検査Simple Test for Evaluating Hand Function:STEF,Fugl-Meyer Assessmentの上肢のみ:FMA,左第3・4指伸展MMT,左第3・4指伸展の自動伸展可動域,握力,痺れをVAS,医師による日本整形外科学会頚部脊髄症評価質問票にて(JOACMEQ)介入前,2週後,4週後,8週後に評価した。

【結果】介入前,2週後,4週後,8週後の各評価の数値を羅列するとSTEF72,84,98,100FMA51,57,63,65,左第3・4指MMT2,3,3,3,左第3・4指伸展の自動伸展可動域-85,-50,-35-,15,握力(kg)19.2,19.4,19.8,19.8,右22.2,23.2,24.4,24.2,JOACMEQ293,348,388,422(QOL25,32,47,61),痺れは介入前後ともに左第4・5にVAS10.0cmであった。

【結論】痺れに関しては,手術前後にて変化を認めず,手術前の頚髄神経圧迫によるダメージが反映したと考えられた。それ以外の評価項目に関しては,全項目にて改善が認められた。手術介入に加え,術後早期からの麻痺筋への神経筋促通を電気刺激と運動療法を併用したことにより,drop fingers以外にも各機能の改善やQOLの向上が認められたと考える。今回結果からCSA遠位型の椎弓形成術後患者の理学療法は,HVCTと運動療法との併用の検討余地があり,理学療法学研究としての意義があったと考えた。