[P-MT-06-5] 頸椎症性脊髄症患者の術前後における頸部屈伸運動と体幹屈伸運動とQOLの変化
キーワード:頸椎症性脊髄症, 動作戦略, QOL
【はじめに,目的】
頸椎性脊髄症(CSM)は退行性変化を基盤とした頸椎症性変化により脊髄が圧迫され,脊髄症状が惹起される疾患の総称である。先行研究では術後頸部可動域の減少や,胸椎姿勢による頸椎姿勢への影響,術後の頸椎機能とQOLの関連が報告されている。このように頸部と体幹姿勢の関連性や主観的評価を同時に行う必要性が示唆されるが,頸部と体幹の運動とQOL評価を同時に行った報告は少ない。そこで今回術前後の頸部屈伸運動時の頸部,体幹角度とQOLの変化をあわせて検討することを目的とした。
【方法】
対象はCSMと診断され,椎弓形成術を行った患者12名とし,脊椎手術歴のある者,独歩不可能な者は除外した。
計測は三次元動作解析装置VICON MXを用い,安静椅子座位にて頸部最大屈伸運動を術前と術後3週に各5施行計測した。頭部と体幹に貼付したマーカより最大屈伸運動時の頭部角度と頸部角度,体幹角度を抽出し,各平均値を算出し,また,同時期に日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(JOACMEQ)を用い主観的評価を行い各々術前後で比較した。さらに,術後におけるJOACMEQの下位項目である頸椎機能と疼痛,頸部屈伸角度の関連性をそれぞれ検討した。
統計学的検討としてWilcoxonの符号順位和検定,Spearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
屈曲時の頭部角度(術前/術後:-16.6±9.4°/-3.6±13.0°)と頸部角度(1.1±13.6°/-7.0±13.6°),体幹角度(-17.1±5.6°/-12.3±5.0°)は術後有意に減少した。伸展時の頭部角度(63.5±12.7°/63.1±12.0°)は術前後に有意差が認められず,頸部角度(-76.8±10.3°/-66.3±10.1°)は有意に減少し,体幹角度(-10.7±7.5°/-2.6±5.9°)は有意に増加した。
また,JOACMEQは上肢機能(89.0±10.2/95.0±4.6),QOL(50.0±13.3/64.5±13.6),上肢痺れ(4.5±3.2/1.0±2.4),下肢体幹痺れ(2.0±3.0/0±2.1)が有意に改善した。また,頸椎機能(85.0±13.7/77.5±10.6)は有意に改悪した。術後の頸椎機能と疼痛に相関(r=0.06)はなく,頸椎機能と頸部屈伸角度にも相関(屈曲:r=0.06,伸展:r=0.18)はみられなかった。
【結論】
本結果より,頸部運動において伸展時のみ体幹の代償が生じ頭部伸展運動に有意差が認められなかったと考える。また,JOACMEQの結果では術後,頸椎機能は低下したが,主訴として多い痺れや上肢機能が改善したためQOLが改善したと考える。
術後疼痛と頸椎機能に相関は認められず,頸椎機能への疼痛の影響は少ないと考える。また,頸椎機能と頸部角度においても相関が認められないことから,頸部伸展時において体幹の代償がみられたように頸椎機能は他の部位からの代償による影響が含まれると考える。
先行研究では術後1年時での頸部の運動機能の温存,改善がQOL向上に必要と報告され,今後は代償動作だけでなく頸部運動の改善が必要であると考える。
頸椎性脊髄症(CSM)は退行性変化を基盤とした頸椎症性変化により脊髄が圧迫され,脊髄症状が惹起される疾患の総称である。先行研究では術後頸部可動域の減少や,胸椎姿勢による頸椎姿勢への影響,術後の頸椎機能とQOLの関連が報告されている。このように頸部と体幹姿勢の関連性や主観的評価を同時に行う必要性が示唆されるが,頸部と体幹の運動とQOL評価を同時に行った報告は少ない。そこで今回術前後の頸部屈伸運動時の頸部,体幹角度とQOLの変化をあわせて検討することを目的とした。
【方法】
対象はCSMと診断され,椎弓形成術を行った患者12名とし,脊椎手術歴のある者,独歩不可能な者は除外した。
計測は三次元動作解析装置VICON MXを用い,安静椅子座位にて頸部最大屈伸運動を術前と術後3週に各5施行計測した。頭部と体幹に貼付したマーカより最大屈伸運動時の頭部角度と頸部角度,体幹角度を抽出し,各平均値を算出し,また,同時期に日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(JOACMEQ)を用い主観的評価を行い各々術前後で比較した。さらに,術後におけるJOACMEQの下位項目である頸椎機能と疼痛,頸部屈伸角度の関連性をそれぞれ検討した。
統計学的検討としてWilcoxonの符号順位和検定,Spearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
屈曲時の頭部角度(術前/術後:-16.6±9.4°/-3.6±13.0°)と頸部角度(1.1±13.6°/-7.0±13.6°),体幹角度(-17.1±5.6°/-12.3±5.0°)は術後有意に減少した。伸展時の頭部角度(63.5±12.7°/63.1±12.0°)は術前後に有意差が認められず,頸部角度(-76.8±10.3°/-66.3±10.1°)は有意に減少し,体幹角度(-10.7±7.5°/-2.6±5.9°)は有意に増加した。
また,JOACMEQは上肢機能(89.0±10.2/95.0±4.6),QOL(50.0±13.3/64.5±13.6),上肢痺れ(4.5±3.2/1.0±2.4),下肢体幹痺れ(2.0±3.0/0±2.1)が有意に改善した。また,頸椎機能(85.0±13.7/77.5±10.6)は有意に改悪した。術後の頸椎機能と疼痛に相関(r=0.06)はなく,頸椎機能と頸部屈伸角度にも相関(屈曲:r=0.06,伸展:r=0.18)はみられなかった。
【結論】
本結果より,頸部運動において伸展時のみ体幹の代償が生じ頭部伸展運動に有意差が認められなかったと考える。また,JOACMEQの結果では術後,頸椎機能は低下したが,主訴として多い痺れや上肢機能が改善したためQOLが改善したと考える。
術後疼痛と頸椎機能に相関は認められず,頸椎機能への疼痛の影響は少ないと考える。また,頸椎機能と頸部角度においても相関が認められないことから,頸部伸展時において体幹の代償がみられたように頸椎機能は他の部位からの代償による影響が含まれると考える。
先行研究では術後1年時での頸部の運動機能の温存,改善がQOL向上に必要と報告され,今後は代償動作だけでなく頸部運動の改善が必要であると考える。