第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P07

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-07-1] 在宅復帰を果たした大腿骨頸部骨折術後患者の再転倒に関連する因子の検討

太田大輔 (医療法人南洲会南洲整形外科病院)

キーワード:大腿骨頸部骨折, 転倒, 立位バランス

【はじめに,目的】

高齢者の転倒およびそれに伴う大腿骨頸部骨折は寝たきりの主要な原因であり,受傷前ADLの再獲得が難しい症例も多い。
今回,在宅復帰を果たした大腿骨頸部骨折術後患者の身体機能を調査し,立位バランス能力を中心に転倒歴も含め比較検討した。

【方法】

対象は歩行自立している当院デイケア利用女性22名。(内訳 大腿骨頸部骨折術後群
(以下骨折群):10例,術後経過期間5.9±2.6年,年齢85.2±5.12歳/非骨折群12例,年齢83.5±4.71歳)
重度の神経学的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。
調査項目は
1)過去1年間の転倒回数
2)他動関節可動域(股屈曲,伸展,外転,内転,膝屈曲,伸展,足底屈,背屈)
3)筋力(股屈筋,伸筋,外転筋,内転筋,膝伸筋)
静的バランス能力
4)矢状面における重心位置
動的バランス能力
5)開眼片脚立位保持時間
6)Functional Reach Test(以下FRT)
7)10m歩行時間
8)タンデム歩行の歩数
3)は,Handy型徒手筋力計使用(日本メディックス社製マイクロFET2)
分析は転倒回数と2)~8)各々の相関関係。
骨折群と非骨折群の比較。それぞれ有意水準5%未満とした。

【結果】

転倒回数は全体平均2±1.5回。骨折群2.8±1.2回 非骨折群1.3±1.5回。2群間に差を認めた。
転倒回数と以下の項目に有意な負の相関を認めた。(股伸展,膝屈曲,股屈筋,伸筋,外転筋,膝伸筋,片脚立位保持,タンデム歩行)
骨折群と非骨折群の比較では,股伸展,股伸筋,膝伸筋,FRTは骨折群が有意に低値を示した。

【結論】

在宅高齢者における1年間での転倒発生率は約20%と報告がある。高齢者の転倒原因として外的要因である生活環境と内的要因があり,内的要因には転倒歴,筋力,関節可動域,歩行能力,前庭機能,視覚機能などがある。今回の調査では転倒回数が多いほどROM,筋力,バランス能力の低下を認め,同様に内的要因の低下は再転倒する危険性が高くなることが分かった。
立位バランスを保つ戦略として足関節戦略,股関節戦略,踏み出し戦略が指摘されているが,Horakは高齢者の姿勢保持は股関節戦略に大きく依存していると述べている。今回の調査では転倒回数とFRT,股伸展,股屈筋,伸筋,外転筋,膝伸筋に負の相関を認め,また骨折群の股伸展,股伸筋,膝伸筋,が有意に低値な為,骨折群は立位バランス能力が非骨折群に比べ劣っており,FRTも有意に低値だったことから動的なバランス能力は低下していると考える。
今回の調査により,骨折群は週2,3回の定期的な運動介入,さらに術後平均約6年経過しているにもかかわらず,非骨折群と比べて股関節周囲機能が有意に低下していた。このことより骨折群は股関節戦略を行うために必要な能力が不十分であると推察され,より転倒リスクが高まるのではないかと考える。
今後の課題として,股関節周囲機能,特に股伸展,股伸展筋力向上を中心に治療介入を検討していきたい。