第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P08

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-08-1] 変形性膝関節症患者におけるCS-30に影響を及ぼす因子の検討

加古誠人1, 鈴木謙太郎1, 高木優衣1, 林和寛1, 佐藤克成1, 鄭伃廷1, 佐藤幸治1, 門野泉2,3, 酒井忠博3 (1.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学)

キーワード:変形性膝関節症, CS-30, 痛み

【はじめに,目的】

30seconds chair stand test(CS-30)は,下肢筋力の推測可能なパフォーマンステストとして広く知られており,虚弱高齢者などの評価にも用いられ,その有用性の報告は数多くされている。一方で,整形外科疾患患者における報告は少なく,痛みがCS-30に影響を及ぼすことが予測されるが,その関連因子は十分に検討されていない。そこで,本研究は変形性膝関節症患者(膝OA患者)におけるCS-30の有用性とそれに影響を及ぼす因子を検討することを目的とした。


【方法】

対象は2014年5月から2015年9月までの期間に人工膝関節置換術目的に当院へ入院した膝OA患者37例(女性32例,男性5例,年齢70.9±7.2歳,身長151.3±7.5cm,体重61.4±11.1kg)で,膝OAの重症度はKellgren-Lawrence分類3もしくは4であった。CS-30は,高さ40cmの座面にて両上肢を胸の前で組んだ姿勢に統一し,測定は30秒間に出来るだけ多く起立,着座を行うよう指示して行った。測定は1回のみとした。運動機能の評価項目として,股関節,膝関節,足関節の関節可動域(ROM)と股関節外転・伸展,膝関節伸展の等尺性の最大筋力を計測した。筋力測定は,ハンドヘルドダイナモメータ(ミュータスF-100,アニマ社製)を使用した。また,10m最大歩行速度,Timed up and go test(TUG)を測定した。痛みに関する評価は,痛みの程度(Visual analogue scale:VAS),痛みに対する不安症状尺度(A short version of the pain anxiety symptoms scale:PASS-20)を測定した。また,不安,抑うつをHospital anxiety and depression scale(HADS)を用いて測定した。評価項目は,すべて手術前日に測定した。統計処理は,CS-30に対する各指標間の関連をPearsonの相関係数を用いた。結果は,平均値±標準偏差で示し,有意水準は5%未満とした。


【結果】

CS-30は平均10.0±6.16回であった。CS-30は10m最大歩行速度(r=.596,p<.001),TUG(r=-.557,p=.005)と有意な相関を示した。また,両側股関節屈曲角度(患側:r=.410,p=.012/健側:r=.425,p=.009),伸展角度(患側:r=.499,p=.012/健側:r=.546,p<.001),両側足関節背屈角度(患側:r=.387,p=.018/健側:r=.467,p=.004),健側股関節外転筋力(r=.371,p=.026),健側膝関節伸展筋力(r=.361,p=.031)と有意な正の相関を示した。また,VAS(r=-.344,p=.043),PASS-20下位項目の認知的不安(r=-.412,p=.012)において有意な負の相関を示した。


【結論】

CS-30は膝OA患者においても,これまでの報告と同様に両側下肢の筋力や可動性と正の相関が認められた。さらに歩行速度,TUGとも相関する結果が得られ,膝OA患者の下肢筋力や可動性,歩行能力を反映する有用な評価法であることが明らかになった。また,痛みに関する評価は,VAS,PASS-20の認知的不安が,負の相関を示したことより,膝OAによる慢性的な痛みを背景に,痛みに対する不安症状が起立,着座動作に影響を及ぼす可能性が示唆された。