[P-MT-08-2] 変形性膝関節症患者の血清コレステロール,中性脂肪は関節リウマチ患者に比べ高値を示す
キーワード:変形性膝関節症, 脂質代謝, 関節リウマチ
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下膝OA)患者にとって,体重の管理と減量指導は治療の第一選択となることが多い。脂質代謝異常が膝OAの病因となる仮説について,血清コレステロールおよび中性脂肪の値と骨髄変性の発症との関連性を認めた先行研究があり,近年膝OAの発症や増悪を防ぐために体重だけでなく脂質代謝をバランスよく維持しておくことの重要性が喚起されつつある。膝OA患者と関節に疼痛を有する他の疾患患者との間で,体重や肥満度,血清コレステロールの値とその比率,中性脂肪の値に相違があるかを明らかにする目的で後方視的に比較検証を行った。
【方法】
対象は2010年10月~2015年9月までの間に当院を受診し膝OAと診断された606人(男:女=108:498,年齢:63.6±10.90歳,身長:1.59±0.08m,体重:59.5±11.5kg),関節リウマチ(以下RA)と診断された463人(男:女=84:379,年齢:49.2±13.3歳,身長:1.60±0.07m,体重:54.3±10.1kg)について,BMI値を算出し,初回採血時の血液データより,総コレステロールとLDLコレステロール(以下LDL),HDLコレステロール(以下HDL),中性脂肪(以下TG),LDLとHDLの比率(以下LH比)を抽出し,平均値を求め,それぞれの値を比較検証した。統計学的処理としては対応のないt検定を用い,有意水準5%未満とした。採血データのない症例,膝OAとRA双方の診断がついている症例については対象から除外した。
【結果】
総コレステロール(p<0.01),LDL(p<0.01),TG(p<0.01),BMI(p<0.01),LH比(p<0.01)は膝OA群の方が高かった。OA群における総コレステロール(217.9±37.0 mg/dl),LDL(124.6±29.5 mg/dl),TG(146.9±99.4mg/dl)の平均値±標準偏差は一般に標準とされる値を超えなかった。一方で,BMI(23.6±3.6 kg/m2)とLH比(2.07±0.68)の平均値±標準偏差は標準とされる値(BMI=22.0,LH比=2.0)を超える結果を示した。
【結論】
検証結果より,統計学的に有意差を認めながらも標準とされる値を超えていない項目が多い中BMIとLH比がOA群で標準値より高く,膝OA患者はRA患者に比べ高齢で所謂悪玉コレステロールが多く肥満傾向にあり,脂質代謝に問題がある例が多いことが窺えた。先行研究において肥満が膝OAの発症と関連性があるとしているものは多く,膝OAの発症以前から肥満が存在する例が多いことも報告されている。日常生活において膝関節には体重の数倍の負荷がかかることが知られており,膝OA患者に対する体重管理や減量の指導は多く行われてきたが,今回の検証結果より肥満だけでなく脂質代謝の異常が膝OAの発症と関連性を持つ可能性が示唆された。血清コレステロールの値に注目し,脂質代謝を正常化させる治療や食餌療法・運動療法の提供,指導が膝OAの発症や増悪を予防し得る有効な手段である可能性が示唆された。今後は年代や性差にも着目し,より詳細な傾向を検証していく必要がある。
変形性膝関節症(以下膝OA)患者にとって,体重の管理と減量指導は治療の第一選択となることが多い。脂質代謝異常が膝OAの病因となる仮説について,血清コレステロールおよび中性脂肪の値と骨髄変性の発症との関連性を認めた先行研究があり,近年膝OAの発症や増悪を防ぐために体重だけでなく脂質代謝をバランスよく維持しておくことの重要性が喚起されつつある。膝OA患者と関節に疼痛を有する他の疾患患者との間で,体重や肥満度,血清コレステロールの値とその比率,中性脂肪の値に相違があるかを明らかにする目的で後方視的に比較検証を行った。
【方法】
対象は2010年10月~2015年9月までの間に当院を受診し膝OAと診断された606人(男:女=108:498,年齢:63.6±10.90歳,身長:1.59±0.08m,体重:59.5±11.5kg),関節リウマチ(以下RA)と診断された463人(男:女=84:379,年齢:49.2±13.3歳,身長:1.60±0.07m,体重:54.3±10.1kg)について,BMI値を算出し,初回採血時の血液データより,総コレステロールとLDLコレステロール(以下LDL),HDLコレステロール(以下HDL),中性脂肪(以下TG),LDLとHDLの比率(以下LH比)を抽出し,平均値を求め,それぞれの値を比較検証した。統計学的処理としては対応のないt検定を用い,有意水準5%未満とした。採血データのない症例,膝OAとRA双方の診断がついている症例については対象から除外した。
【結果】
総コレステロール(p<0.01),LDL(p<0.01),TG(p<0.01),BMI(p<0.01),LH比(p<0.01)は膝OA群の方が高かった。OA群における総コレステロール(217.9±37.0 mg/dl),LDL(124.6±29.5 mg/dl),TG(146.9±99.4mg/dl)の平均値±標準偏差は一般に標準とされる値を超えなかった。一方で,BMI(23.6±3.6 kg/m2)とLH比(2.07±0.68)の平均値±標準偏差は標準とされる値(BMI=22.0,LH比=2.0)を超える結果を示した。
【結論】
検証結果より,統計学的に有意差を認めながらも標準とされる値を超えていない項目が多い中BMIとLH比がOA群で標準値より高く,膝OA患者はRA患者に比べ高齢で所謂悪玉コレステロールが多く肥満傾向にあり,脂質代謝に問題がある例が多いことが窺えた。先行研究において肥満が膝OAの発症と関連性があるとしているものは多く,膝OAの発症以前から肥満が存在する例が多いことも報告されている。日常生活において膝関節には体重の数倍の負荷がかかることが知られており,膝OA患者に対する体重管理や減量の指導は多く行われてきたが,今回の検証結果より肥満だけでなく脂質代謝の異常が膝OAの発症と関連性を持つ可能性が示唆された。血清コレステロールの値に注目し,脂質代謝を正常化させる治療や食餌療法・運動療法の提供,指導が膝OAの発症や増悪を予防し得る有効な手段である可能性が示唆された。今後は年代や性差にも着目し,より詳細な傾向を検証していく必要がある。