[P-MT-08-3] 変形性膝関節症患者の膝機能と肥満および糖尿病の関係
キーワード:変形性膝関節症, 肥満, 糖尿病
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)は関節変形や可動域制限,筋力低下を生じる加齢性の変性疾患であり,高齢者人口の増加とともに罹患者数も増加すると予想されている。一方で,世界的に問題となっている慢性疾患として肥満と糖尿病が挙げられる。肥満と糖尿病は膝OAの発症を及び進行のリスク因子となるだけでなく,健常者を対象として研究では可動域制限や筋力低下にもつながることが報告されている。しかしながら,現在まで,末期変形性膝関節症患者の膝機能と肥満および糖尿病の関連性は明らかでない。そこで本研究では,末期膝OA患者の膝機能に肥満と糖尿病が与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は膝OAを原因疾患とし当院へ外来通院中である膝OA患者とした。膝機能の指標はthe new Knee Society Score(new KSS)とし,さらにKellgren-Lawrence分類によるgrade(重症度の高い側を患側,低い側を健側),Body mass index(BMI),HbA1c,飲酒の有無,喫煙の有無を調査した。BMIが25 kg/m2以上のものを肥満ありとし,カルテ情報から判断しHbA1cが6.5%以上もしくは糖尿病の既往のあるものを糖尿病ありとした。統計解析ではNew KSSの合計点を従属変数,肥満および糖尿病の有無で分類した4群を独立変数,さらに年齢,性別,健側grade,飲酒の有無,喫煙の有無を調整変数として投入した重回帰分析を行った。また同様の重回帰分析を男女別に行った。有意水準は5%とした。
【結果】
解析対象となったのはデータに欠測のない1069名であった。平均年齢72.4±7.8歳,男性206名,女性863名であり,患側gradeIVが896名,IIIが170名だった。調整後の重回帰分析の結果,肥満なし。糖尿病なしに対する各群の回帰係数β[95%信頼区間]はそれぞれ肥満なし・糖尿病ありβ=-8.11[-14.56―-1.67],肥満あり・糖尿病なしβ=-7.07[-10.09―-4.04],糖尿病あり・肥満ありβ=-13.15[-17.53―-8.77]であり,有意な関連を認めた。男女別の結果では,女性のみで有意な関連を認め,肥満なし・糖尿病ありβ=-7.67[-15.00―-0.34],肥満あり・糖尿病なしβ=-7.81[-11.15―-4.48],糖尿病あり・肥満ありβ=-13.40[-18.42―-8.39]であった。男性では一部有意な関連を認めなかったものの,肥満なし・糖尿病ありβ=-7.40[-21.16―-6.35],肥満あり・糖尿病なしβ=-3.76[-10.97―3.45],糖尿病あり・肥満ありβ=-11.69[-20.86―-2.52]であり,関連の傾向については一貫した結果であった。
【結論】
本研究結果より,肥満と糖尿病の罹患は膝機能の低下と関連していることが示された。したがって臨床において,同じ重症度であっても肥満や糖尿病を伴う場合は膝関節機能がより低下している可能性があり,より積極的な理学療法学的アプローチを行う必要性があることを示唆できたと考える。
変形性膝関節症(膝OA)は関節変形や可動域制限,筋力低下を生じる加齢性の変性疾患であり,高齢者人口の増加とともに罹患者数も増加すると予想されている。一方で,世界的に問題となっている慢性疾患として肥満と糖尿病が挙げられる。肥満と糖尿病は膝OAの発症を及び進行のリスク因子となるだけでなく,健常者を対象として研究では可動域制限や筋力低下にもつながることが報告されている。しかしながら,現在まで,末期変形性膝関節症患者の膝機能と肥満および糖尿病の関連性は明らかでない。そこで本研究では,末期膝OA患者の膝機能に肥満と糖尿病が与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は膝OAを原因疾患とし当院へ外来通院中である膝OA患者とした。膝機能の指標はthe new Knee Society Score(new KSS)とし,さらにKellgren-Lawrence分類によるgrade(重症度の高い側を患側,低い側を健側),Body mass index(BMI),HbA1c,飲酒の有無,喫煙の有無を調査した。BMIが25 kg/m2以上のものを肥満ありとし,カルテ情報から判断しHbA1cが6.5%以上もしくは糖尿病の既往のあるものを糖尿病ありとした。統計解析ではNew KSSの合計点を従属変数,肥満および糖尿病の有無で分類した4群を独立変数,さらに年齢,性別,健側grade,飲酒の有無,喫煙の有無を調整変数として投入した重回帰分析を行った。また同様の重回帰分析を男女別に行った。有意水準は5%とした。
【結果】
解析対象となったのはデータに欠測のない1069名であった。平均年齢72.4±7.8歳,男性206名,女性863名であり,患側gradeIVが896名,IIIが170名だった。調整後の重回帰分析の結果,肥満なし。糖尿病なしに対する各群の回帰係数β[95%信頼区間]はそれぞれ肥満なし・糖尿病ありβ=-8.11[-14.56―-1.67],肥満あり・糖尿病なしβ=-7.07[-10.09―-4.04],糖尿病あり・肥満ありβ=-13.15[-17.53―-8.77]であり,有意な関連を認めた。男女別の結果では,女性のみで有意な関連を認め,肥満なし・糖尿病ありβ=-7.67[-15.00―-0.34],肥満あり・糖尿病なしβ=-7.81[-11.15―-4.48],糖尿病あり・肥満ありβ=-13.40[-18.42―-8.39]であった。男性では一部有意な関連を認めなかったものの,肥満なし・糖尿病ありβ=-7.40[-21.16―-6.35],肥満あり・糖尿病なしβ=-3.76[-10.97―3.45],糖尿病あり・肥満ありβ=-11.69[-20.86―-2.52]であり,関連の傾向については一貫した結果であった。
【結論】
本研究結果より,肥満と糖尿病の罹患は膝機能の低下と関連していることが示された。したがって臨床において,同じ重症度であっても肥満や糖尿病を伴う場合は膝関節機能がより低下している可能性があり,より積極的な理学療法学的アプローチを行う必要性があることを示唆できたと考える。