第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P08

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-08-4] 変形性膝関節症患者の腰痛と立位矢状面アライメントとの関連

阿部宙1,2, 戸田成昭1,2, 渡邊裕之3, 月村泰規4, 重田暁1,2, 斉藤良彦4, 松永篤彦2 (1.北里大学北里研究所病院リハビリテーション技術科, 2.北里大学大学院医療系研究科, 3.北里大学医療衛生学部, 4.北里大学北里研究所病院整形外科)

キーワード:変形性膝関節症, 腰痛, 腰椎アライメント

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(以下膝OA)は,膝関節の変形に起因した膝痛が主症状であるが,腰痛を訴えることも少なくない。過去の報告によると,膝OA患者のうち半数近くが腰痛を有しているが腰痛の原因は不明確である。膝OA患者は,臨床症状の特徴の一つとして膝の屈曲拘縮が挙げられ,立位バランスを保つために脊柱や骨盤で代償し,腰椎骨盤のマルアライメントを有している可能性が考えられる。近年では,腰椎骨盤のマルアライメントは腰痛を誘発する原因の一つとして考えられており,矢状面のレントゲン画像から計測される腰椎骨盤アライメントが注目されている。しかし,膝OA患者の腰痛が立位姿勢における膝関節屈曲角度および腰椎骨盤アライメントと関連するかは不明である。本研究では膝OA患者を対象に腰痛と立位姿勢での膝関節屈曲角度および腰椎骨盤アライメントの関連を検討することを目的とした。

【方法】

対象は,整形外科を受診し,膝OAと診断された113名(男性31名,女性82名,平均年齢71.0±7.8歳)とした。対象には,問診表にて1週間以上継続する腰痛の有無を聴取し,腰痛群と腰痛なし群に分けた。また,腰椎骨盤アライメントの指標として,X線を用いて立位矢状面の脊柱を撮影し腰椎前彎角(LL)と骨盤傾斜角(PT)を計測した。さらに,立位姿勢における膝関節屈曲角度はゴニオメーターを用いて計測した。検討項目は,腰椎骨盤アライメントの各計測値を2009年に金村らが発表した健常日本人の基準値を参考に,LLを正常範囲と基準値を逸脱したもの,PTを正常範囲と基準値を逸脱したものに分け,さらに立位膝屈曲角度は5度以下のものと5度より大きいものにそれぞれ分けて,腰痛の有無との関連をχ2乗検定にて検討した。

【結果】

腰痛を有する者は全体の45.7%であった。また,PTは腰痛群で正常範囲を示したものが47名(28.3%)と基準値を逸脱したものが13名(18.6%),腰痛なし群で正常範囲を示したものが32名(41.6%)と基準値を逸脱したものが21名(11.5%)であり,χ2乗検定の結果から有意差が認められた。逸脱例のPTは全例骨盤後傾位を示していたことから,膝OAの腰痛は骨盤後傾位との関連が認められた。一方,LLと立位膝屈曲角度は腰痛の有無により有意差を認めなかった。

【結論】

本研究の結果より,健常日本人の基準値を参考にPTを正常範囲と基準値を逸脱した例に分けた場合において腰痛の有無との間に有意差が示された。一方,立位膝屈曲角度を5度以下と5度より大きいものに分けた場合において,腰痛の有無との間に有意差は認めなかった。そのため,膝OA患者の腰痛対策を講じるためには,立位姿勢において膝関節のみでなく,特に骨盤の後傾に着目して評価を行うと同時に理学療法を実施する必要があると考えられた。