第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P08

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-08-5] 変形性膝関節症に対するTENSと温熱もしくは寒冷刺激の同時施行は起立歩行時の鎮痛効果を高めるか?

前田貴哉1,2, 吉田英樹2, 佐々木知行1 (1.医療法人整友会弘前記念病院, 2.弘前大学大学院保健学研究科)

Keywords:変形性膝関節症, TENS, 鎮痛

【はじめに,目的】

TENSや温熱刺激(TS),寒冷刺激(CS)は,変形性膝関節症(膝OA)患者の鎮痛目的に用いられることが多く,互いに類似もしくは異なる作用機序に基づいた鎮痛が得られる。いずれの手法も単独で適用した場合の鎮痛効果は確認されているが,TENSとTSもしくはCSを同時に施行した場合の鎮痛効果向上の可能性については検討されていない。TENSとTSもしくはCSの同時施行により相乗効果が生まれ,より高い鎮痛効果を得られる可能性は否定できない。そこで本研究は,TENSとTS又はCSの同時施行が鎮痛効果に及ぼす影響について検討することを目的とした。

【方法】

膝OAと診断された患者33名を対象とし,介入としてTENSのみ施行する群(単独群),TENSとTSを同時に施行する群(TS併用群),TENSとCSを同時に施行する群(CS併用群)に無作為に振り分けた。TENSは疼痛部位を挟むように電極を貼付した上で,パルス幅200μsec,周波数100Hzの単相性矩形波を患者が耐え得る最大刺激強度で20分実施した。TS併用群及びCS併用群では,TENS開始時よりTENSの電極上にそれぞれホットパック(表面40℃),アイスパック(表面0℃)を配置した上で20分実施した。各群の介入前後で,ADL上で重要と考えられる快適速度での歩行時及び椅子からの起立動作時(起立時)の膝痛をVisual Analogue Scale(VAS,単位:mm)にて評価した他,Timed Up & Go test(TUG,単位:秒)も実施した。その上で,各群の介入前後でのVAS及びTUGの変化量を有意水準を5%に設定し,一元配置分散分析にて検討した。

【結果】

各群のVAS及びTUGの変化量(平均値:[最小値,最大値])は,単独群では歩行時VASが-12:[-31,15],起立時VASが-9:[-24,0],TUGが-0.1:[-1.3,2.3],TS併用群では歩行時VASが-12:[-53,3],起立時VASが-16:[-77,3],TUGが-1.2:[-5.2,0.3],CS併用群では歩行時VASが-18:[-71,0],起立時VASが-14:[-75,27],TUGが-0.2:[-1.6,1.0]であった。一元配置分散分析では各群のVAS及びTUGの変化量に有意差を認めなかったものの,単独群と比較してTS及びCS併用群では歩行時及び起立時VAS,TUGの大きな改善を示す症例も存在した(最小値参照)。

【結論】

本研究結果では,TENSとTSもしくはCSの同時施行した場合の明らかな有効性は示せなかったが,動作時痛及びパフォーマンスが大きく改善した症例も存在した。今後,TENSとTSもしくはCSの同時施行が奏功する症例の特徴を明らかにするために,膝OAの重症度に基づく対象の層別化や,疼痛の程度や部位などの特徴について追加検討が必要と考えられる。