[P-MT-08-6] 変形性膝関節症患者に対する股関節モビライゼーションの即時効果
院内におけるClinical Prediction rulesを満たす患者でのケースシリーズ
Keywords:変形性膝関節症, Clinical Prediction rules, モビライゼーション
【はじめに,目的】
症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化し,その結果から,対象となる疾患を持つ可能性に応じて,患者を層別化するClinical Prediction Rules(CPR)が注目されている(Gavin:2009)。しかし,本邦ではCPRの使用頻度は低く検証はされていない。
介入頻度の多い変形性膝関節症患者に対して,Linda L(2007)らが報告したCPR(陽性尤度比12.9,成功確率97%)を満たす患者を対象とした股関節モビライゼーションの即時効果の本邦での検証を目的とする。
【方法】
Linda Lらの報告したCPRを使用した。当院に入院する患者のうち歩行可能で変形性膝関節症の既往歴があり膝関節痛を有する者で(1)股関節痛または鼡径部痛,感覚異常(2)大腿前面痛(3)膝関節屈曲122°以下(4)股関節内旋17°以下(5)股関節Distractionテスト陽性のうち2つ以上満たすものを対象とした。また,除外基準として,神経学的疾患,変形性膝関節症と同側の整形外科的疾患,認知機能低下を有する者とした。
治療介入は先行研究に従い,比較的容易な手技であるCaudal glide・Anterior-posterior glide・Posterior-anterior glide・Posterior-anterior glide with flexion, abduction, and lateral rotationとし,セラピスト間で確認練習を行った後に実施した。
治療介入前と介入直後に最大膝伸展筋力(Nm/kg),Numerical Pain Rating Scale(NPRS)と膝関節に対する全体的な症状の把握を目的として,変形性膝関節症転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)のうち,症状・疼痛・生活の質を調査した(満点80点)。NPRSは,最も疼痛が強く出現する動作の直後に調査した。
治療効果の主観的な変化度合いに対する評価として15pointsのGlobal Rating of Change Scale(GRC)を用いて行った。なお,NPRS・GRC・KOOS評価は研究や治療に関与しない第3者に依頼し盲検化を施した。
【結果】
上記基準を満たす5名,平均年齢79.2歳,BMI25.4kg/m2に対し,モビライゼーションを行った。介入前平均,膝伸展筋力0.82Nm/kg,NPRS:5.6点,KOOS:31.2点。介入後平均,膝伸展筋力0.88Nm/kg,NPRS:3.2点,KOOS:40.2点,平均GRC:3.2
【結論】
変形性膝関節症患者でCPR基準を満たす対象者に股関節モビライゼーションを行った。本研究においてもNPRSが平均2.4点(42%)改善し先行研究を支持する形となり本邦においても治療意思決定に有用である事が示唆され,NPRSのMinimal Clinically Important Difference(MCID)に近似した値(Michener:2011)となっている為,意義のある改善であると考える。GRCにおいてもLinda Lらが報告した3.27と近い値となった。KOOSは平均9点の改善であり測定誤差(Salavati:2011)を超えている為,膝関節全体の症状も改善したと考える。
本研究の限界としてプラセボ群を設定していない点や対象者数が非常に少ない事,本対象者は膝関節以外の疾患も同時に罹患している為,日常生活動作の改善がモビライゼーションの効果であると証明できない点等が挙げられ今後の課題である
症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化し,その結果から,対象となる疾患を持つ可能性に応じて,患者を層別化するClinical Prediction Rules(CPR)が注目されている(Gavin:2009)。しかし,本邦ではCPRの使用頻度は低く検証はされていない。
介入頻度の多い変形性膝関節症患者に対して,Linda L(2007)らが報告したCPR(陽性尤度比12.9,成功確率97%)を満たす患者を対象とした股関節モビライゼーションの即時効果の本邦での検証を目的とする。
【方法】
Linda Lらの報告したCPRを使用した。当院に入院する患者のうち歩行可能で変形性膝関節症の既往歴があり膝関節痛を有する者で(1)股関節痛または鼡径部痛,感覚異常(2)大腿前面痛(3)膝関節屈曲122°以下(4)股関節内旋17°以下(5)股関節Distractionテスト陽性のうち2つ以上満たすものを対象とした。また,除外基準として,神経学的疾患,変形性膝関節症と同側の整形外科的疾患,認知機能低下を有する者とした。
治療介入は先行研究に従い,比較的容易な手技であるCaudal glide・Anterior-posterior glide・Posterior-anterior glide・Posterior-anterior glide with flexion, abduction, and lateral rotationとし,セラピスト間で確認練習を行った後に実施した。
治療介入前と介入直後に最大膝伸展筋力(Nm/kg),Numerical Pain Rating Scale(NPRS)と膝関節に対する全体的な症状の把握を目的として,変形性膝関節症転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)のうち,症状・疼痛・生活の質を調査した(満点80点)。NPRSは,最も疼痛が強く出現する動作の直後に調査した。
治療効果の主観的な変化度合いに対する評価として15pointsのGlobal Rating of Change Scale(GRC)を用いて行った。なお,NPRS・GRC・KOOS評価は研究や治療に関与しない第3者に依頼し盲検化を施した。
【結果】
上記基準を満たす5名,平均年齢79.2歳,BMI25.4kg/m2に対し,モビライゼーションを行った。介入前平均,膝伸展筋力0.82Nm/kg,NPRS:5.6点,KOOS:31.2点。介入後平均,膝伸展筋力0.88Nm/kg,NPRS:3.2点,KOOS:40.2点,平均GRC:3.2
【結論】
変形性膝関節症患者でCPR基準を満たす対象者に股関節モビライゼーションを行った。本研究においてもNPRSが平均2.4点(42%)改善し先行研究を支持する形となり本邦においても治療意思決定に有用である事が示唆され,NPRSのMinimal Clinically Important Difference(MCID)に近似した値(Michener:2011)となっている為,意義のある改善であると考える。GRCにおいてもLinda Lらが報告した3.27と近い値となった。KOOSは平均9点の改善であり測定誤差(Salavati:2011)を超えている為,膝関節全体の症状も改善したと考える。
本研究の限界としてプラセボ群を設定していない点や対象者数が非常に少ない事,本対象者は膝関節以外の疾患も同時に罹患している為,日常生活動作の改善がモビライゼーションの効果であると証明できない点等が挙げられ今後の課題である