第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P09

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-09-3] 小児頚髄損傷者に対してのリハビリテーション

橋﨑孝賢, 川崎真嗣, 湯川晃也, 川西誠, 児嶋大介, 木下利喜生, 上西啓裕, 西村行秀, 田島文博 (和歌山県立医科大学附属病院リハビリテーション科)

Keywords:小児頚髄損傷, 頚胸椎装具, 早期リハビリテーション

【はじめに,目的】

今回,交通事故で軸椎歯突起骨折・頚髄損傷を受傷した小児脊髄損傷者に対し,リハ科医師・義肢装具士と連携し適切な頚部・体幹装具を使用し,頚部の安定性を獲得しながらリハビリテーション(リハ)を行うことで,人工呼吸器離脱,ADL向上,自宅・復学復帰を遂げた症例を経験したので報告する。

【方法】

6歳男性。第0病日15時頃,自動車の助手席に乗車中,交通事故により受傷。当院救急外来に搬送。搬入時は四肢自動運動が不可能であり,頚髄損傷,軸椎歯突起骨折,左第8肋骨骨折,肺挫傷と診断され,人工呼吸器による呼吸管理,頚部2kgのグリソン牽引が開始された。第2病日,リハ目的で理学療法,作業療法を開始。

【結果】

開始時,主科の指示でギャッジアップは不可であった。現症は四肢可動域制限なく,自動運動認めず,腱反射消失していた。第6病日に頚椎は牽引療法からネックカラーに変更し,ギャッジ60度まで可能となったが,ギャッジアップを進めていく中で歯突起の転位を認め麻痺増悪のリスクがあった。そこでリハ科医師,義肢装具士と検討し頚胸椎装具を提案し,SOMI装具を使用することで歯突起の安定性を獲得しながらリハを行った。その後徐々に四肢の自動運動出現,呼吸機能改善を認め,人工呼吸器離脱。第30病日に軸椎の骨癒合がすすみ,SOMI装具装着下で徐々に座位・立位・歩行練習開始。歩行は,体幹の安定性,下肢の支持性弱く介助が必要であった。第42病日に下肢筋力低下の為,両下肢に短下肢装具を作製。また,リハ時間増大のため,成人用歩行器に工夫を行い,吊り下げ可能とし自己で歩行練習を行えるようにした。さらに看護師・家族に装具の使用法や自主練習の指導を行った。徐々に歩行能力向上し,第81日目に数メートルの自立歩行・見守りでの歩行獲得,第109病日に数十メートルの自立歩行可能となり,自宅退院し,段階的に復学した。

【結論】

小児脊髄損傷の頻度は低く,特徴として損傷部位は下位頚髄~上位胸髄が多く,完全麻痺があっても骨傷がない事があげられている。しかし,本症例は損傷部位が上位頚髄で骨傷を伴っており一般的な小児脊髄損傷の特徴と異なり,小児脊髄損傷においても稀なケースといえる。本来であれば,成人と同じく強固な固定を行い早期から積極的なリハを行うべきでだが,今回の症例は頭蓋骨が柔らかくハローベストが行えずネックカラー使用で最小限の固定しか行っていなかった。さらに,骨傷を伴った外傷であり骨癒合までの臥床,活動制限が危惧された。そのような状況でリハビリ科医師,義肢装具士と連携を図り頚部・体幹装具の工夫を行い,頚部安定性を獲得しながら離床を行い,神経症状の悪化なくリハビリを進めることができた。

急性期からリハ介入をおこない,装具作製や多職種連携,家族指導を行い二次的な合併症を防ぎ,病状を悪化させずリハを行えたことが良好な転帰の一助になったと考える。