第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P11

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-11-4] 体幹屈曲運動時の体幹前傾と上肢前方挙上における胸椎の動きの関係

鈴木加奈子, 塩島直路 (たちばな台病院リハビリテーション科)

Keywords:上肢挙上, 胸椎, 体幹

【はじめに,目的】

肩関節は胸郭上を浮遊する関節のため体幹機能の影響を受けやすい。先行研究において,肩関節周囲炎患者では体幹屈曲運動時の胸椎屈曲角度が上肢前方挙上角度に関係する可能性が示された。これにより,胸椎伸展のみならず屈曲可動性も上肢挙上に関係することが考えられる。また臨床において,体幹後方移動を伴った屈曲運動を指導した際に上位胸椎の前方偏位,体幹前傾が生じ,胸椎の屈曲を十分行えず,上肢挙上における胸椎の動きの改善に結びつかないことがある。体幹屈曲運動時の体幹前傾が上肢挙上時における胸椎の動きに関係することが予測されるが,これらの関係については明らかにされていない。そこで本研究では,体幹屈曲運動時の体幹前傾と上肢前方挙上時における胸椎の動きの関係を検討した。


【方法】

対象は健常成人17名(男性13名,女性4名,年齢:27.5±5.3歳)とした。測定肢位は自然坐位(以下,坐位),坐位での体幹最大屈曲位(以下,屈曲位),坐位での両上肢最大前方挙上位(以下,挙上位)の3肢位とし,屈曲位では猫背になるように丸くなって下さいと被験者に指示した。被験者に自動で測定肢位を保持させ,スパイナルマウス(インデックス社製)を用いて体幹傾斜角度(第1胸椎と第1仙椎を結ぶ線と垂線との角度),胸椎彎曲角度を計測した。計測値を基に上位胸椎角度(第1,2胸椎間から第4,5胸椎間の角度),中位胸椎角度(第5,6胸椎間から第8,9胸椎間の角度),下位胸椎角度(第9,10胸椎間から第11,12胸椎間の角度)を算出した。屈曲位,挙上位各々の値から坐位での値を減じて変化量を算出し,数値が大きいほど体幹前傾および胸椎屈曲が大きくなることを示した。体幹屈曲時の体幹傾斜角度と体幹屈曲時および上肢挙上時の上・中・下位胸椎角度の関係をPearsonの相関係数を算出し検討した。なお,統計にはJSTATを用い,危険率5%未満を有意とした。


【結果】

体幹屈曲時の体幹傾斜角度(平均値±標準偏差:3.8±4.2°)と体幹屈曲時の下位胸椎角度(12±4.7°)の間(r=0.68,p<0.01),体幹屈曲時の体幹傾斜角度と上肢挙上時の下位胸椎角度(-6.6±5.8°)の間(r=0.51,p<0.05)に有意な相関がみられ,体幹屈曲時の体幹傾斜角度と上肢挙上時の中位胸椎角度(-8.1±7.5°)の間(r=-0.51,p<0.05)に有意な負の相関がみられた。体幹屈曲時の体幹前傾が大きくなるほど体幹屈曲時の下位胸椎屈曲が大きくなり,上肢挙上時の下位胸椎伸展は小さく,中位胸椎伸展は大きくなった。


【結論】

体幹屈曲運動時の体幹前傾と上肢挙上時の下位胸椎および中位胸椎の動きに関係があることが示された。特に,体幹屈曲運動時に体幹前傾が伴う場合は下位胸椎での屈曲が大きくなり,上肢挙上時における下位胸椎の伸展が小さくなったと考える。したがって,体幹屈曲運動時の体幹前傾を抑制することが上肢挙上時の下位胸椎の伸展可動性増加に結びつく可能性が考えられる。