[P-MT-11-5] 前方拳上制限を有する肩痛患者のレントゲンを用いた脊柱アライメント評価
キーワード:拳上, 脊柱アライメント, 姿勢
【はじめに,目的】
肩関節の可動域は肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節・体幹関節の総和であり,相互に関連して肩関節の複雑な運動を可能としている。我々は過去に,腱板損傷・拘縮肩患者と健常群の脊柱アライメントを比較し,上位胸椎後弯角度に違いを報告した(肩の運動機能研究会2010)。しかし,明らかな原因が認められない前方拳上制限に関しては未だ検討しておらず,またそのような報告も認められなかった。そこで,前方拳上制限を有する肩痛患者と前方拳上制限を有さない健常群の脊柱アライメントを比較し,その特徴を見出すことを目的とした。
【方法】
対象は2009年1月から2014年12月までに当院外来を受診し,高岸らが提唱する「自動・他動運動ともに機能的に制限され,単純X線で骨萎縮像および石灰化以外に異常を認めない」に該当し,外傷性・拘縮(肩関節拳上角度110以下かつ外旋角度15°以下の者)・Impingement所見陽性(Painful arc,Neer,Howkins)が認められず,健側と比較して5°以上の前方拳上制限を有する250名(男性111名,女性139名,平均55.3±7.8歳,以下SP群)とした。健常群は肩関節痛,前方拳上制限を有さない男女20名ずつとした。脊柱アライメント評価には直立立位側面全脊柱X線像の撮影を実施し,胸椎・腰椎弯曲角度の計測にはCobbの変法を用いた。上位胸椎後弯角度(以下,UTKA)と下位胸椎後弯角度(以下,LTKA)の計測には尾崎ら(日本理学療法学術大会2011)の方法を参考とし,両群の比較にはWelchのt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
腰椎弯曲角度は健常群35.32±9.8.°,SP群35.02±9.9°と有意差は認められなかった。胸椎弯曲角度は健常群39.2±9.1°,SP群35.9±10.2°,UTKAは健常群20.0±7.8°,SP群15.47±7.6°,LTKAは健常群16.34±3.8°,SP群18.27±7.4°といずれも有意差が認められた。
【結論】
今回の結果から,前方拳上制限を有するSP群の脊柱アライメントは健常群と比較して,胸椎後弯角減少,UTKA減少,LTKA増加が認められた。山本らは,高齢者を対象に肩関節痛の有無と姿勢異常の関連を調査し,胸椎後弯に次いで平背に多く,鈴木らは,上部胸椎屈曲可動域が大きい場合,下部胸椎伸展可動域が大きくこれらの関係性が前方拳上の可動域に関与していると報告している。胸椎屈曲を胸椎後弯増加,伸展を胸椎後弯減少と捉えるならば,SP群の胸椎アライメントは胸椎後弯角度が減少している平背傾向かつ,上位胸椎屈曲・下位胸椎伸展の関係性と対照的なアライメントであることが伺える。本研究結果は,前方拳上制限を有するSP群の特徴的な姿勢を示唆し,理学療法展開の手がかりに繋がる可能性がある。
肩関節の可動域は肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節・体幹関節の総和であり,相互に関連して肩関節の複雑な運動を可能としている。我々は過去に,腱板損傷・拘縮肩患者と健常群の脊柱アライメントを比較し,上位胸椎後弯角度に違いを報告した(肩の運動機能研究会2010)。しかし,明らかな原因が認められない前方拳上制限に関しては未だ検討しておらず,またそのような報告も認められなかった。そこで,前方拳上制限を有する肩痛患者と前方拳上制限を有さない健常群の脊柱アライメントを比較し,その特徴を見出すことを目的とした。
【方法】
対象は2009年1月から2014年12月までに当院外来を受診し,高岸らが提唱する「自動・他動運動ともに機能的に制限され,単純X線で骨萎縮像および石灰化以外に異常を認めない」に該当し,外傷性・拘縮(肩関節拳上角度110以下かつ外旋角度15°以下の者)・Impingement所見陽性(Painful arc,Neer,Howkins)が認められず,健側と比較して5°以上の前方拳上制限を有する250名(男性111名,女性139名,平均55.3±7.8歳,以下SP群)とした。健常群は肩関節痛,前方拳上制限を有さない男女20名ずつとした。脊柱アライメント評価には直立立位側面全脊柱X線像の撮影を実施し,胸椎・腰椎弯曲角度の計測にはCobbの変法を用いた。上位胸椎後弯角度(以下,UTKA)と下位胸椎後弯角度(以下,LTKA)の計測には尾崎ら(日本理学療法学術大会2011)の方法を参考とし,両群の比較にはWelchのt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
腰椎弯曲角度は健常群35.32±9.8.°,SP群35.02±9.9°と有意差は認められなかった。胸椎弯曲角度は健常群39.2±9.1°,SP群35.9±10.2°,UTKAは健常群20.0±7.8°,SP群15.47±7.6°,LTKAは健常群16.34±3.8°,SP群18.27±7.4°といずれも有意差が認められた。
【結論】
今回の結果から,前方拳上制限を有するSP群の脊柱アライメントは健常群と比較して,胸椎後弯角減少,UTKA減少,LTKA増加が認められた。山本らは,高齢者を対象に肩関節痛の有無と姿勢異常の関連を調査し,胸椎後弯に次いで平背に多く,鈴木らは,上部胸椎屈曲可動域が大きい場合,下部胸椎伸展可動域が大きくこれらの関係性が前方拳上の可動域に関与していると報告している。胸椎屈曲を胸椎後弯増加,伸展を胸椎後弯減少と捉えるならば,SP群の胸椎アライメントは胸椎後弯角度が減少している平背傾向かつ,上位胸椎屈曲・下位胸椎伸展の関係性と対照的なアライメントであることが伺える。本研究結果は,前方拳上制限を有するSP群の特徴的な姿勢を示唆し,理学療法展開の手がかりに繋がる可能性がある。